和月伸宏「武装錬金」文庫化!全巻に12ページの描き下ろし番外編を掲載

natalie.mu

 

キャラクターは悪くないのに、るろうに剣心と比べると、いまひとつ魅力がなかった記憶がある。あの作品にあって、この作品にないものはなんだったのか。もちろん、それが分かるくらいなら、誰も苦労などしない。

 

スターシステムは一度構築されたキャラクターの魅力を再利用できる点がよい。手塚治虫の作品群ように作品ごとに少しだけ色味を変えて登場させる場合もあるし、子孫や先祖が登場する、別人格だが、顔はそっくりという風にキャラクターを再利用する。

 

考えれば再利用は生命が採用した高効率な手法のひとつで、細胞内では、不足したたんぱく質を確保するために、他のものを分解するなど、よく知られた機構である。このオートファジーをいう仕組みで、大隅良典せんせはノーベル賞を受賞なさった。

 

だが、作家たるもの、全く新しいキャラクターを生みたいという欲望を失っては面白みがない。新しいキャラクター、そう、だが邦画を見れば分かるように、違っているはずなのになんか全部同じステレオタイプのなんと多いことか、俳優さえ、例えば殺人鬼役とか、そんなものである。

 

だからといって、ポールニューマンって全部演技いっしょに見える?なんて口が裂けても言ってはならぬ事である。自分の不見識の表明になるであろう。彼は名優なのである。と自分を納得させる行為を心理的防衛メカニズムの歪曲と呼ぶらしい。

 

さて、武装錬金では、魅力的な敵役としてパピヨンがいたし、いい感じの女の子として津村斗貴子もいた。プロットも悪くない。だけど抜群に面白いとは思わなかった。

 

それは、なんというか、よそよそしさ、教科書的、模範解答の詰まらなさを感じていたのである。なんかサラサラしてなくて、動きが鈍いって感じである。

 

特に不幸だったのが、同じ錬金は錬金術でも鋼のがいた。この同時代性が生み出す不幸、項羽と劉邦であるとか、漱石と鴎外であるとか、ジャックと青木であるとか、これはいた仕方のないことなのだ。

 

それが作家の創作に何らかの影響を与えたものかどうかは知らない。だが、架空世界と現実世界、19世紀と20世紀と時代も設定も全く違うのに、このふたつは兄弟かかいとこくらいの近しい関係性にある。その関係性を除いて、単体で考えるのは難しい。カインときたらアベルってくるようなもんだ。

 

どうも、ヒロインにほとんど魅力がない気がしてる。主人公はけっこう動いていたんだ。だけどそこでどうも引っかかる気がする。彼女の所でスムーズさが失われるというか、なんというか説明用のキャラになっているのだ。

 

彼女を同年齢にしたのも敗因かしら。出てくる人がほぼ同世代の高校生ってのもリアリティを失った原因かもしれない。同じプロットでも30代くらいを中心に回せば、いい感じになるんじゃなかろうか、うん、いいかも知れない。試しにまずは外伝だ。