「手出しすれば米本土が火の海」北朝鮮、制裁決議に反発

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我が国はどんな制裁や圧力も水泡に帰すようにする。敵対勢力は、制裁と圧力で驚かせないと知るべきだ。米国が核と制裁で手出しする日には、米本土が想像もできない火の海の中に陥る。 

 

戦争が更なる激戦を迎えようとしていた1945年、鈴木貫太郎は、徹底抗戦を掲げながらもルーズベルトの死去に対して次の談話を発表した。

今日、アメリカがわが国に対し優勢な戦いを展開しているのは亡き大統領の優れた指導があったからです。私は深い哀悼の意をアメリカ国民の悲しみに送るものであります。しかし、ルーズベルト氏の死によって、アメリカの日本に対する戦争継続の努力が変わるとは考えておりません。我々もまたあなた方アメリカ国民の覇権主義に対し今まで以上に強く戦います。 

 

これはもちろん、アメリカに向けてのメッセージであり、決して日本国内に向けてではない。ここが肝要なのであって、この談話によって鈴木は積極的にアメリカに対して、自分たちが対話可能な政権であることを発信したわけである。

 

この話は北朝鮮を見るときも決して忘れてはならない逸話だろう。そこで考えるべきは北朝鮮が狙っているのは何であろうか。またそのための道筋をどう考えればいいのだろうか。

 

もし核ミサイルをアメリカに向けて撃てばアメリカは決して彼らを許さないだろう。彼らの兵力は、北朝鮮の人民を文字通りジェノサイドする能力を持つ。

 

もし、金王朝の野望が自分たちの存続にあるならば、この手段は取らないはずである。だから、もし取るとしたら自分たちの将来が絶望的である場合に限る。死なばもろとも、道連れの思想によってのみであろう。

 

一方で、金一族だけであるならば、政治亡命は可能と思われる。それは彼らをして十分に裕福に一生を過ごすだけの人生は可能なはずだ。もし彼が責任感の強い人ならこの選択肢は取らないかも知れない。少なくとも、それを考えるほどにはまだ追い込まれていないと考えるべきだろう。

 

北朝鮮という存在は、中国にとってアメリカを国境沿いに来させないために必要である。緩衝地帯として役割がある以上、朝鮮半島の統一など決して容認できまい。

 

中国にとって重要な事は、自分たちにコントロール可能で、かつ、独立心の弱い政権のはずだ。そう考える限り、北朝鮮民主化など決して容認できない。ソビエトに衛星国家があったように、北朝鮮は中国の衛星国家と見るべきと思われる。

 

だとしたら、北朝鮮の核開発は中国が主導していたのではないか、という疑念は残る。このあたりから話は怪しい。少なくとも、中国にすれば北朝鮮の核開発は必要不可欠ではなかったはずである。それがなぜ保有に向かったのか。それを許したのか。

 

許したのではない、彼らが勝手にそれを進めたのだ。とすると、北朝鮮は中国のコントロールから外れているのだろうか。それを中国が許容できるとは思えないが、それを許しているとしたら、そこにロシアの役割も出てきそうだ。

 

ロシアにとって北朝鮮は欠くべからざる貿易相手ではあるまい。では、どうしてロシアが北朝鮮に近づくのか。そこで、北朝鮮がもっとも敵対したいのはアメリカではない、という仮定を立ててみる。

 

彼らの本当の狙いは中国からの脱却ではないか。それを勝ち取るための政策が核だとしたら、彼らは中国と対話するためにどうしてもアメリカが必要なのだ、と考えることができる。アメリカがいなくなれば、中国に対して無力であることを知っている。

 

キム・ジョンウンが大粛清を行ったのも、兄であるジョンナムを殺害したのも、中国との深いパイプを断ち切るためではなかったか、と勘繰ったりもするわけである。

 

だが、その程度の動きを中国が気づかないはずがない。また経済的結びつきをみても、徹底して敵対しているようには見えない。すべての仮定にどこか矛盾がある。そこに国際政治のすれ違いがある、と見るべきか。

 

北朝鮮がミサイルを落とすとしたら、韓国は同じ民族であるから躊躇するだろうし、中国、アメリカは問題外である。すると日本が最も相応しい場所に思える。

 

その時、日本がどう動くかは微妙な話だが、何も積んでいないとしてもミサイルがもし北海道の無人島に落ちた場合はどうするかくらいは想定しておいても良いだろう。

 

日本近海に落ちたミサイルは、破壊命令があったとはいえ、日本が主体となって回収作業を行ったはずである。そこから得られた技術的知見から何が分かるだろうか。何か極秘メッセージが同封されていたりして。

 

どちらにしろ、北朝鮮の動向は今の東アジアにとって重要である。新聞では彼らの目指す先が分からない。それでも、日本にとって核廃絶が最優先課題であって、拉致問題については後回しになるだろう。口先でなんと言おうと実際に政府がやっていることを見れば、北朝鮮に対して一枚もカードを持っていないのは間違いない。

 

北朝鮮からは確かなメッセージが発信されていると思うが、ぜんぜん分からないのである。このコミュニケーション不在は何が原因であるのか。

 

彼らの行動に合理的説明をすることは次第に困難になりつつある。正男の殺害が決定的だったと思う。そしてあの事件が彼の意図しないものであったとは思えない。北朝鮮が軍部のコントロールに四苦八苦しているようには見えない。彼らが傀儡政権であるようにも見えない。

 

「米国が核と制裁で手出しする日には、米本土が想像もできない火の海の中に陥る」はまだ非現実的だ。だが、このままではそれも可能になる。それまでに軍部が対策しておくことは、何時間であの国家を壊滅させられるか、ミサイルを打つまえに叩くにはどうすればよいか、に尽きる。それを可能とするためにはバンカーバスターを一体 何発撃ち込めばよいか。

 

それが矛なら盾はミサイル防衛である。日本はそこに重要な役割を担うだろう。アメリカが攻略すると決めたら、憲法がなんといおうが、どれだけデモやテロが起きようが、日本は個別自衛権を発動せざるえない。たまたまアメリカが同じ海上にいて、指令系統は異なるのになぜか偶然、連携しているように見えたとしても、それは仕方がない。

 

そうならないオプションを各国は模索しているが、今回の制裁が最後になるのではないか。これに効果がなければ、つまり中国がバブルを閉めないならば、世界がどう動くかは読み切れない。だが、各国の首脳の思惑は、金王朝がどうなるかよりも、その後がどうなるかにある。それは中国とアメリカが主旋律を演じる演奏会である。

 

 

中国は国境を挟んでアメリカが来ることだけは決して許さない。その点についてはロシアも同様だ。その気持ちは日本も理解できるはずだから、アメリカの朝鮮半島戦略が状況を左右する。

 

アメリカが妥協するとすれば韓国の戦力を後退させ、日本列島に強固な軍事壁を構築するものになるだろうか。それともアジアからは手を引き、アフリカ大陸を中心とした覇権争いにシフトするだろうか。