日本だけ世界の流れになぜ逆行?CO2大量排出、石炭火力が増え続けている理由

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こんな誤解を与えるようなタイトルを平気でつける人に人類の未来など語って欲しくない、というのが正直な気持ちだ。

 

「日本だけ世界の流れになぜ逆行?CO2大量排出、石炭火力が増え続けている理由」

 

このタイトルを読めば

  1. 日本が世界の潮流に逆行している。
  2. 石炭火力が増えている。

は間違いのない事のようだ。それはまともな知能を持つ者なら誰でも、原子力発電所事故を知るならば、理解できる話だ。

 

問題は「CO2大量排出」にある。これが次のどの場合かが分からない。

  1. CO2を大量に排出しているのは日本であるのか?
  2. CO2を大量に排出しているのは日本の石炭発電なのか?
  3. それとも大量排出するのは単に石炭火力の特徴のひとつなのか?

 

我々の常識で言えば、日本のCO2排出量は少ないはずである。もちろん、経済規模に対応しての排出量なので、決して少ないとは言わない。ただこれ以上の削減はかなり困難な状況で削減している。

 

もちろん、パリ協定はある時点からの削減量を割合で決めているから、締結した時には原子力によってそれを達成しようとしたのは明白である。そして福島第一原子力発電所の事故が計画の見直しを迫ったのも確かな事である。その「想定外」の予期せぬ要因に対して回避策が少ないのが実情であろう。

 

では実際のところ、日本のCO2排出量は世界的にどの程度か。その中で石炭の占める割合はどの程度か。そして原子力に頼らずそれを削減できる現実的な方法には何があるのか。

 

この三点が明らかにならなければ、我々はこの問題に対してなんら口を挟めない。せいぜい、問題意識を持つだけであるし、その問題意識も、極めて当事者意識の少ないものである。

 

[PDF]2016年度版 - 経済産業省・資源エネルギー庁 によれば以下の通りである。

 

日本のCO2排出量

2014年:13億7000万t

震災による増加:8000万t(6%増)

これは原子力を止めて、他の火力にシフトした結果と考えられる。

 

世界における排出量

2014年:

中国、アメリカ、インド、ロシアに次ぐ5位。全体の3.6%。

www.jccca.org

 

現在の世界でCO2を語る時、最終的には CO2 か放射性廃棄物のどちらを選ぶ選択しかない。それ以外の選択は空前絶後の絶賛研究中であるとはいえ、いますぐの選択肢にはならない。

 

太陽光パネルの普及は進められているが、安定的な供給には問題がある。すると電力会社としては考えられる最大量に対応できるだけの準備をしておかなければならない。例えば3、4日吹雪いても電力を供給できるだけの準備は必要なのである。

 

自然エネルギーというのは電力会社からすれば計算をややこしくするだけの存在で、全体の供給量を下げるのに役に立ちそうにない。風が止んだら休業してくれる企業などどこにもないのだから。太陽光エネルギーが足りない場合は電力供給を止めてもよい、という契約にハンコ押してくれる人は少ないだろう。

 

田舎であれば、それでも電気供給が止まっても困らない場合がある。数時間なら自分の所でディーゼル発電をしたり蓄電によって対応できるようにしている家もあるかも知れない。人里離れた所はいつインフラから切り離されるかも知れない。だからそれに対応している可能性は高い。

 

だが都市になればなるほど、そのような想定はされない。まずインフラが破壊される事の想定が難しい。そのような状況を想定するくらいならまず破壊されないインフラの構築に注力する。またもし壊れたらどうせ代替案はない。それだけの大規模システムの代替物を用意するなどできないからだ。だから都市部のインフラは迂回路をたくさん用意して、また障害が局所的にするよう工夫されている。だから都市部では電力供給が断たれたら、後は乾電池しかない。

 

こうして考えてゆけばこの記事がCO2ではなく電力を問題にしているのは明らかである。よって原子力発電の再開を応援する意図で書かれた記事である事は間違いない。そのために石炭火力を悪者にする、という単純な構造だ。そうならそう書けばいいだけの話である。

 

私はCO2の方に危機感を感じる(もしかしたら感じてないかも)。だから原子力発電を再開すべきだ、と。そう主張するのは十分に説得力のある考えだ。僕はその答えを持たないが、少なくとも自然エネルギーが現実味を帯びるためには蓄電設備の充実が必要で、そのような世界は、自動車の電気化と並行して進むはずである。

 

それをヨーロッパは既に見ているのは、ガソリンエンジンを市場から排除しようとする動きからも明らかであろう。問題はその可能性だ。そして、自然発電においては発電能力と蓄電能力の両輪が必要になる。

 

日本においては太陽光パネルを設置するために森林を切り開くとかいう、反論する言葉も見つからない愚かさが繰り広げられている。そうだ、金を得るためなら人類の未来など知った事ではない人間は幾らでもいる。

 

この記者もそのような一人だ。彼の主張はもっと冷静に、そして現実的に考えるしかない問題だ。イメージとしては原子力や火力が現実を支えている間に、自然エネルギーの開発を待つ。そして、原子力や火力が、「俺たちはそう長くは持たない、もっと急いでくれ」と叫んでいる状況じゃないか、そう思っている。