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書き溜めの集積場

ヒトラー政権は普通選挙で誕生した。大衆社会はなぜナチスを支持したのか?

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ナチスの問題を、それがドイツ中を席捲したという点に着目していてはダメだと思う。


1932年7月ドイツ国会選挙における国家社会主義ドイツ労働者党 (NSDAP) の得票率は37.8%。議席数230は全体608のうちの約1/3。


この選挙の投票率は84%。よってドイツ中が国家社会主義ドイツ労働者党に熱狂したと呼ぶのにはとても賛成できない。フランスでのグレンダイザーの視聴率くらいでないと熱狂とは呼べない。もちろん、支持には総数のほかに熱量というものがある。それを支持するためには命も惜しくない、爆弾かかえて病院に突っ込むというひとりの支持は、そうでない普通人の支持を凌駕する場合もある。

 

だが当時のドイツの自由選挙において投票した人々の意識は高く、そのうちの40%しか支持しなかった政党がなぜあれだけの事が出来たのか、その答えは難しい。


1933年のドイツにおいて、議会制民主主義は機能不全に陥っており、内閣はヒンデンブルク大統領の命令によってようやく組閣できる状況であった。よって選挙の勝利だけがヒットラーを首相にしたのではない。ヒンデンブルク大統領が指名したのだ。


ワイマール憲法というのは人類が最初に構築した民主主義憲法と言ってもよく、ファーストバージョンだけにバグも多かった。そのバグFixが間に合わず、合法的に(抜け穴をついた)国家社会主義ドイツ労働者党の前に陥落した。その欠陥を味わうのにヨーロッパはあれだの血を必要としたのだ。


憲法の欠陥は、例えば、不完全性定理連続体仮説ゲーデルがアメリカ市民権を取得するときに、アメリカ憲法は合法的に独裁制に移行できると指摘したように、どのような憲法にも内在している。


日本の明治憲法でもあの戦争は完全に合法的に行われた。当時の立憲君主制において、憲法に違反し、天皇が独断で決めたのは、二・二六事件の鎮圧と降伏の受諾(一応、会議での体裁は取られている)の二回である。


いずれにしろ、40%の支持を熱狂と呼ぶのは正しい味方とも思えない。それでは98%にまで拡大した理由にならないからだ。


続く1932年11月ドイツ国会選挙(4か月後)では33.1%、1933年3月ドイツ国会選挙(4か月後)で43.9%。この後、共産党は非合法化され、議席を失い、7月には政党禁止令が発布される。1933年11月ドイツ国会選挙(8か月後)の得票率は92.2%。


40%の支持者 全員が権威主義であったとしても、残り60%はそうではなかった事になる。権威主義による圧倒的支持(それでも半分以下)があったとしてもドイツ労働者党が台頭する直接の原因がその支持にあったとは言えない。もちろん、その支持率を背景に彼らが動いた事は疑いようがない。


また、権威主義というパーソナリティというものは、人間が集団で行動する動物である限り、どのような人にも権威主義的側面は必ずある。誰にだってSM的要素があるとか、同性愛的指向は誰もが少しは持っているのと同じ話だ。人間は決して一律的な精神性ではない。それが可能に見えるのは抑圧という働きがあるからである。


人間は理解しあうために議論するのではなく、敵を打ち破るために議論する。オープンであるとか、広く議論をしたいというスタンスの人ほど、相手を打ちのめす気が満々なのである。それは自分のロジックに自信があり、そう振る舞うのが極めて動物的な合理性だからである。


皇帝ネロの前で本当に反論できる自信がお前にはあるのか、と問わればない。当時のローマの人々だってないから、最後は剣を突き刺したに違いない。


国家社会主義ドイツ労働者党の台頭をどうすれば食い止められたかと考えても何も思いつかない。タイムマシンでどの時代にまで遡ればヒットラーをごく普通の除隊した普通の画家としての生涯を全うさせられたか。

 

そんなの全くない。もう動き始めた汽車である。既に遅いねやである。手遅れになっている事は僕たちは知ることができない。病気でも家庭でも政治でも。だから明日のこの一票は重いのである。


あの惨事について語るとき、その原因をヒットラーの狂気に求めるのでは簡単だ。だが、それは正しい道だろうか。それは追究の放棄ではないか。あの偉大なワイマール憲法がなぜ打ちのめされたのか。何が欠陥であったのか、どうしてその穴を防げなかったのか。そして、もしその穴を塞いでいれば、どのような別の大惨事が起きていたか。

 

我々の社会は制度によってしか制御できない。今の時代なら、すべての法律をAIに読み込ませ、どのような世界が訪れるかを計算させてみればいい。AIが提出する世界は現実でも必ず起きる。そして、あらゆる制度をきっちりと作り込めば衰退するばかりの停滞した社会しか生み出せないであろうことも予想に難くない。


また、どれだけAIに計算をさせた所で、クーデターで政権も憲法も軽く吹っ飛んでしまう。それは決して夢物語ではない。


我々はヒットラーを否定する。これは現代においては正しい。彼はまだ歴史上の人物ではないからだ。我々のすぐ後ろにヒットラーが立っている。どうやれば彼を総統にまで登りつめさせないで済むか。彼の善良であったり、強靭さの善い面だけを活用できる社会が生み出せるか。一億総活躍社会?まぁ、そういうゲームが今日も続いているのである。