神戸製鋼社長「深くおわびする」経産省に改ざん問題報告

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神戸製鋼は関連会社も含めて同様の不正を何度もやっている。それも数年単位で発覚しているので、問題点は、突発的とか組織的という考察では足りないように思われる。

 

他山の石としてはフォルクスワーゲンの改竄事件があったにも係わらず、自浄作用が働かなかったのである。現在のコンプライアンスは良くても数年の業績悪化、だいたいが倒産も視野に入れなければならぬ程の威力を持っている。

 

それなのに何故、と部外者なら思うだろう。それでもこのような行動を取るのには、もちろん企業文化などもあると思うが、当然ながら行政との関係性もあるだろう。そもそもこれらの試験は、行政が課したものだと思われるが、本当に実効性がある必要なものだったのか、という検証。

 

例えば、やっても意味ないよ、という類のものだったら次第にお座なりになるのも同意できる。だが、最終検査証というのは国のお墨付きがある方が有利なはずなので、あまり説得力のある考えではない。

 

ではコンプライアンスを舐めていたのか、という話だが、現場の担当者からすれば一発解雇になってもおかしくない案件であるし、勝手な判断をするのもおかしな話である。

 

あるとしたら上からの圧力がひどく、その工程を抜く、または誤魔化さない限り、納期に間に合わない場合である。それを現場が部署単位で独断でやったとすれば、それは企業としては最高責任者が全ての責を負わなければならない。

 

理由はふたつ。自社の製品についてそのような状況にある事に気付いていなかったのなら、その無能さによって、また、もし気付いていて放置していたのなら、その無責任さによって。

 

だが、この話はどうも全体が掴み切れない。どの部署が行っていたのか。どの部門までが把握していたのか。多くの場合、最終検査をする人は、法令を熟読して自分の業務を遂行するわけではない。

 

各部門は組織全体が決めた仕組みの中で誠実な仕事をするのであって、もし法令などがあると知っていれば確認もするだろう。だが一般的には知らないはずである。印章を押す場合だって、それを代理で押しているという意識であって、誤魔化す意図などない事の方が多いはずである。

 

するとこれは法令に違反する可能性のある作業という周知徹底をするのは企業のどの部門かという話であって法務部が相手にするのは特許や買収だけではない、という話である。だが生産部門の末端までが法に制限されるというのはあまりよい状態ではない、ともいえる。

 

つまり生産ラインを組む時に生産現場だけでは完全なものを作れなくなってきているという話でもある。

 

もちろん、流石に数値を改竄するケースは明らかに異常行為だが、それが起きる仕組みはそう簡単ではあるまい。誰かの命令によってなのか、圧力によってなのか、それとも組織特有の阿吽の呼吸によってなのか。

 

それを拒絶する、または担当官庁に報告する場合は、少なくとも今の企業には残れない。またそのような<<密告癖>>のある人を他の企業が雇用してくれるだろうか。そう簡単には行動できないのである。

 

特に日本企業は共同体的側面が強いので、少々の悪事くらいなら、黙ってやる。ばれたら俺が責任を負うという気質もある。だが、シリアルキラーと同様に一回だけならまずばれないのに何度も繰り返したのか。

 

問題の核心は誤魔化した事ではない。何度も繰り返したことにあるのだ。その誤魔化すにしてはお粗末すぎませんかという体質に問題がある、という結論だ。

 

浮気でもそうだが誤魔化すコストは、正直である事のコストを遥かに超える。だから一般的に浮気者はそれを隠さず、俗にいう、許可をもらうな、許しを乞え(Don't ask for permission, Ask for forgiveness)を実践するのである。

 

だが、謝罪の欠点は許されない場合があるという事だ。そして、大きな企業であるほど、それは大きい。なぜ何時まで繰り返してもばれないと思ったのか。その心理的閾値の低さというのは、まぁ、人間の自然さだから気持ちは分かる。一度やったら何度でもやるというのは、ドラッグやゴキブリでもよく聞く話だ。

 

だから、怖い。だから反省しても必ずまたやる。となれば、これをどうやって企業体質の中から撲滅するかには、共同体的企業心理学のような学問も必要なはずである。そういう点では様々なコンサルタントが、サメのように、この企業の周囲をくるくると遊泳していることだろう。