台車枠に亀裂が生じたため、車輪がずれて異音がしたという理解でいいのだろう。 incident は出来事と訳すようだが、前触れとか前兆と訳してもよさそうだ。
インシデントを重視するのは、ここで防止することが重大事故を防ぐからで、ヒヤリハットもインシデントに含まれる。事故には至っていない、または軽度の事故であるが、それだけで安心してはならない。そういうケースがインシデントである。もちろん、これは人間のすることだから、どう判断するかでどうとでもなる。
2007年に製造されたこの台車が耐用年数を超えていなかったのは、確かであろう。もし超えていたら話は分かりやすい。
ということは耐用年数内であるにも関わらず、亀裂を起こしたということで、え、神戸製鋼と疑いたくもなるが、検査だけではこういう不良とか、金属疲労を完全に見つけることは困難であろう。
という事は、製造物というものは頑丈であるべきだが、壊れる時には、急に壊れるのではなく、徐々に壊れてゆく方が望ましい、という事になる。今回の台車も一気に裂けてしまえば、もっと重大な事故になったであろう。いきなり壊れずに異音、異臭を起こしたから、インシデントで済んだ。
それでもこの裂け方は、溶接部分が剥がれたのか、それとも鋼材が切れたのかは知らない。壊れ方や切れ方によって対策は大きく変わるであろう。
また、そこが千切れやすいならば、そこに過負荷があった事を示す。もしかしたら、設計段階での考慮漏れの可能性もある。この部分にはもう少し強度が必要な可能性も捨てきれない。
このインシデントが運の悪い単発の品質不良なのか、それとも、設計上の問題なのか、あるか、それともこの車両だけに起きた不具合、例えば、この場所にかつて大きな力がかかったなどの履歴から来るもの(例えば急ブレーキなど?)なのか。
そういう解析が始まっているはずであって、そういうエンジニアリングとしての取り組みとは別に、このような状況に対して、現場でどう対処するかも刷新されるだろう。
保守員の次の駅で停車させて点検した方がよいという提言は、確かにそうなのだが、実際の運用を考えれば、もう少し様子見しようという判断は決して間違いではない。結果的にはその判断は間違いであり、事故にならなかったのは単に幸運に過ぎなかったが、だからといって、新幹線全体への影響を考えれば、そう簡単に停車できるはずもなかった。
そういう意味では、走りながら確認できる仕組みの必要性とか、ダイヤグラムに影響を与えずに簡単に停車できる待避線の充実なども必要と思われる。つまり、どのようなインシデントも対策するならあらゆる方面の総力戦でやるべきという話である。
しかし新幹線はすごいシステムである。何もかもうまくいくように作られているのか。これが単なる幸運だったのか、それとも、普段からフェールセーフになるように設計製造運用が磨き続けてきた賜物か。