JR九州「全路線で減便」の衝撃――深刻な赤字の鉄道事業、対応迫られる沿線自治体

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鉄道会社の収益を支えるのは鉄道網とそれによって得られる様々な事業と言える。大正時代の頃から、鉄道会社が観光事業に積極的で、そういう形で開発された地域があると言う事はブラタモリで知った。

 

一方で鉄道が通れば地価は上がるのだから、路線のためにも確保した土地は宝の山である。駅周辺が賑わえばテナント料など様々な収益も予想される。

 

これが鉄道のビジネスモデルならば、鉄道が繋がる事が重要であって、本数はさほどではない事になる。30分に一本を40分に一本に減らす事で、どれ程のコスト削減が見込まれるか。

 

列車を一本動かすのにも経費は必要だ。だが走らせるだけなら、それほどの額が必要とは思えない。だから全体の本数を減らすとは、運用費の削減というより、保有する車両数を減らすことではないか。そうすると固定資産税が減らせられる。もちろん、社員も減らせられる。

 

電車が減ればやりくりが大変になるから、全体のダイヤも影響を受ける。過疎地だけを減らす程度では不十分なのだろう。記事によれば、固定資産税の減免措置失効で55億、地震被害の復旧予算も計上しなければならぬそうである。鉄道の維持費用が高くなったので電車を減らすのはなんか違う気もするが、もし税金を減らすのが目的なら話は合う。

 

鉄道の収益は、基本的に人口比で算出されるから、九州の人口の増減から予測された方向に向かうのは当然であろう。減便されるなら減少方向にある、と考えて良さそうである。

 

新幹線は基本的に大都市圏を結ぶ。例えば、一人1万円、一両16列×5=80席、15車両とすれば、1200人を運ぶ。売り上げは1200万円になる。乗車率を70%程度としても800万/本である。6時から20時まで14時間、一時間あたり6本を発車させたとして、14*6=84本、∴一日6億7千万。往復いれてざっくり12億の売り上げを叩き出す。

 

これはおそらく東海道山陽新幹線だけの皮算用で九州、北陸、東北新幹線はこれより劣るだろう。

 

新幹線が大都市圏を結び、周辺地域を在来線で結ぶビジネスモデルは、新幹線のない地域を直撃する。おそらく、新幹線を一本走らせるコストと在来線を一本走らせるコストはそんなに大きくは変わらないだろう。

 

だが、例えば山陰線だと一本の売り上げが数万円とかも十分にありうる。そういう地域では車が移動の主流だから、なおさら過疎地域の鉄道運営は厳しい。

 

結局、乗るだけでは足りない、というのが鉄道の話であって、移動した地域にある鉄道網がもつ価値を高めることを永続的に出来ない限り、維持は困難なのだろう。

 

銀河鉄道999みたいにふたりしか乗ってないような汽車など何らかの裏がない限り継続不可能なのである。

 

では、どうすればいいか。答えがあるならこんなニュースになっているはずがない。インフラという面を考えるならば、鉄道網に対して各自治体が資本投入するしかない気がする。だが、金を出すなら口も出すが、日本人の低い民度だから、そんなのを受け入れる鉄道会社が存在するはずもない。当然、ゆるやかな廃線に向かうしかないわけだ。

 

自治体から見れば、鉄道が消えるということは大量の人間がくる可能性が0になる、という事であるから、高速道路網が近くに来ない限りは絶望である。過疎を強みに売り出す自治体もあるだろうが、全員が恩恵にあずかれる話ではない。

 

九州でこれなら、北海道や四国はどうか。北海道はまだ新幹線の目がある。だが四国には何もない。空以外、何にもないのである。実際、四国を移動するなら鉄道よりも車の方が便利だと感じた。

 

車の強みはドアからドアまでにある。鉄道にはこれがない。仮眠するにしても、周囲には知らない人がいて、盗難の危険性がある。女性なら痴漢なども警戒しなければならない。最近では女性専用車両に乗り込む運動家もいるという。

 

つまり、鉄道の移動インフラとしてのアドバンテージは速度しかなく、それが新幹線を成立させている。都市圏は車での移動が飽和状態にあり困難だから、時間に正確で確実な鉄道の良さが発揮される。

 

貧乏人の移動手段と言えば、例えばJALANAの旅客機があるように、金持ちは自家用機を所有するものである。同様に一番らくちんなのが車。しかし、車のリスクを考えたら、電車という選択肢も高くなる。

 

詰まるところ、鉄道は大量をゆっくりと運ぶインフラなのだ。車は少人数をせかせかと運ぶインフラと思われる。もっとゆっくりと大量に運ぶのに船があった。

 

飛行機:早い、少数(遠距離専用、近距離可)
車:早い、少数(近距離専用、遠距離可)
鉄道:遅い、大量(遠近両用)
船:遅い、大量(遠近両用)

 

鉄道が失ったのは中都市圏における近距離の輸送分野であると思われる。それを取り返すためには、鉄道はどう変わらなければならないのか。速さの追求はリニア技術で求められている。とすると近郊では大量輸送ではない鉄道を目指すことになりはすまいか。だが、よっぽどの過疎でもない限り、時間の正確性を捨てて利便性を取るような、どこでも停止できる鉄道など無理だろう?