最近知った漫画『鷹の師匠、狩りのお時間です!』。
これで関心したのは、鳥たちのものを見る力、学習する能力。相手の飛び方を見るだけで、どれくらい狩りが上手いかが分かってしまうという。
すると、若鷹が飛んでいてもその飛び方を見て平気でなめ切った行動に出る。あの程度の飛び方なら我々を狩れるはずはないから心配ないとか、ちょっと上手くなってきたから警戒しなくっちゃ、みたいに。
鳥は目が良いから可なり遠くからでも見えてしまうのだろう。すると鳥もバカではないから工夫する。飛び方を騙してみたり、相手の見えない所から、上空とか、太陽の中から飛び込んでくる。自衛隊も顔負けである。
と、つらつらと考えれば、猪だってバカではない。第一、この百年くらいに生まれた猪は狼を知らない。後天的に学習する機会はなかったはずだ。そもそも猪が最も警戒すべきは銃であって、それと比べれば犬など蹴散らせる相手である。とすると、後天的に警戒すべきは鉄の匂いか。
もし、遺伝子レベルに犬状の生物を警戒するように記録されているとすれば、猫状の捕獲者が登場した時にあっという間に絶滅すると思われる。そのような非効率はよくないと思うのである。もちろん、アホウドリは人間を一切怖がらなかったから絶滅寸前に追い込まれた。ジャイアントモアも人間だし、カイギュウも同様である。
警戒心の弱い動物が最も警戒すべきは人間であって狼ではない。逆に野生動物は人間以外にはうまく適用して進化してきたはずなのである。余りに人間の勢力拡大が急激すぎて対応できなかった生物種がたくさんいる状況である。
人間が蛇状のものを恐れるのはDNAレベルに刻まれた記録である、という説を聞いたことがある。これも基本的には信じない。もちろん、蛇状のものを恐れるので、ゴカイもそう、ギョウチュウなどの寄生虫もそう、ミミズもそう、ホヤや海鼠もそう。小さな足があってよいなら、芋虫もそう、ムカデもそう、ヤスデもそう。
だが、この全てがダメという訳でもないはずだ。では何が決定的なのか。『俺的には、世紀の大発見!!「蛇崇拝と畏怖」も「闇や火への恐怖」も、これで説明つくかしら??「恐怖は遺伝する」。』によれば恐怖は遺伝するという。
まだメカニズムが不明である。恐怖がDNAを変化させるなら、これは進化であるはずだが、これを進化と呼んでいないのでたぶん違う。どちらかといえばメチル化などの発現が遺伝するのかなという気もしないではない。
卵子は原始卵胞として誕生時にある程度できあがっているが、精子はそれと比べるとずっと新しく作成される。だからDNAの変化は精子側の影響の方が大きいような気もする。だが、途中でDNAが変わっていいなら精子側だけに限定する必要はない。母体側の経験が発生に影響する例だって沢山ある。
恐怖は群れとして伝播するようだが、蛇を恐れる場合は伝播し、桜の花を恐れるような場合は伝播しないようである。まだ説明できない現象が残っている。
生物によって警戒の強さは様々であり、独特の行動様式を持っている。更に個体差もある。一般的に長生するのは臆病な個体であろう。危険回避能力には色々な方法が考えられるが、近づかないのが最も有効な正攻法だと思う。
イノシシを警戒させるのが、狼状の姿なのか、光や音なのか。僕は鉄の匂いではないか、と思うのだが、「あいつ、ちょろいぞ」と判断されたらそこで終わりである。恐らく猿なら数週間も持たないと思う。それが猪ならずっと効果があるのなら、そこには原因があって、何かがドンピシャで当てはまっていなければならない。そういう探求は面白いのではないか。