「ルパン三世 PART5」エンディング公開 峰不二子の魅力を"本気"で描いた映像がココに

 

 

natalie.mu

 

この映像を見た印象は、これまんまCMじゃないかだ。日本の映像クリエータたちが目指している世界観ととても近いように見える。

 

こんな不二子は見たことがない、という点では全く新しい世界観である。明らかに昭和のルパンではない。もっと今風で現代的な普通さだ。

 

この世界観でルパンを描く試みは面白い。カリオストロでも、Part 1 でもなく 2 とも違うルパン。ルパンは常にクリエータたちに、今の時代にルパンで何を描くのか、というテーマを強制する。

 

宮﨑駿でさえ、part 2 で今更何を描くのかと嘆じた。それから 3, 4, 5 と作り続けられてきた作品である。そこには何かがある。またはなければならない。その多くがカリオストロが生み出したものから始まっているとしても。クリエータたちはそれだけではないと言わなければならない。

 

そもそも今更『泥棒さん』でもない。21世紀には優れた多くのクライムサスペンスが誕生している。2018年にはアンナチュラルも好評であった。科学捜査への知識も増えて、監視カメラやGPSは当然の世界である。

 

今更、何を盗むのが面白いのか、という話でもあるし、それを取り逃すような間抜けな警察機構の何が面白いのか、という話でもある。現実に起きている犯罪は、警察の執拗な捜査が実を結ぶこともあれば、何もかもがはっきりしているのに手が出せないようなもので溢れている。もちろん、冤罪も。

 

そんな世界の中でいまさらルパンに何ができるのか、たった5人で何ができるのか、というのが大前提にあって、これが単品の映画なら、落ちぶれた泥棒への依頼、というハリウッドによくあるプロットも可能であろうし、ズッコケなコメディも可能だ。

 

もし恋愛ものにしたければ、まっとうな職に就けという話が先にあるわけだし、そうなれば、ルパンを泥棒としては描かない。とある企業のCEOとして描く。もちろん、紆余曲折のあと、最後の最後でほんの一瞬だけ泥棒としての行動をするような感じの。

 

どちらにしろ、ルパンという食材は、フランス料理でいえばオムレツ、和食でいえば白米、中華でいえば炒飯みたいなものか。基本形がびちっとあって、そこに自分の感性を託す。この作品に携わっている人たちは苦悩も含めて面白がっていると思う。