参考にします」と言ったら、上司がムッ!いったいなぜなのか?

www.mag2.com

 

中田英寿はグランド上ではチームメイトを呼び捨てにしていた。それが礼儀に欠けるという議論が起きた。しかし、グランド上では1秒の遅れが結果に直結する。「さん」の二文字分の時間さえ惜しい時はあるだろう。

 

言葉を磨く事でコミュニケーション能力の向上に役立てようとする議論は、セミナーを開催する人にとって、発想の斬新さ、論理構造、文章展開の明快さ、読後感など参考にできるものがたくさんある。

 

*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー

以下、本文を纏める。

 

<問題提起>
「参考にします」は失礼にあたる。

 

<重要なこと>
「成功体質の人は、言葉の使い方に敏感である」の一例として考える。

 

<分析>
「参考にする」は自己判断するという意味である。だから、アドバイスをもらっている相手に言うと「それは参考意見ですね」と言うのと同じ。それが反発的なイメージと取られるかも知れない。

 

<結論>
「参考にする」が常に悪いわけではない。目上の人に「参考にします」と回答するのが良くない。その背景に「受け入れるかどうかはわかりません」という態度があるから。

 

<模範解答>

上司に対して、前向き、感謝のイメージを持たれるように。 「助かりました」「勉強になります」「さっそく今から始めます」「また相談させてください」などが適切。

 

<補説1>
「参考にする」のイメージ

  1. 自分の感覚を優先する
  2. アドバイスや指導に従わない
  3. 自己判断による取捨選択

このような態度は反抗的と取られ相手にストレスを与え傷つけるかも知れない。

 

<補説2>
セカンドオピニオンが日本で定着しないのは、それを言うと医者が不機嫌になるから。「インフォームド・コンセント」を尊重するなら「セカンドオピニオン」は、当然の権利。こういう場合は「参考にする」で正しい。「参考にする」は「利用」すると同じ。

 

だから「指導を受ける」場合に「参考にする」と答えるのは問題。師弟関係にあってアドバイスに従わないなら、もとから指導を受ける必要はない。

 

「利用」と「教え」で、態度が変わるのは当然。師弟関係と顧客では態度は異なる。上司や恩師からのアドバイスは、「サービスの利用」ではなく「教え」

 

<補説3>
「参考にします」は「その程度のアドバイスなら要りません」の言い換えにもなる。自分の考えと異なっているものに耳を閉ざす態度とも取られる。どれほど、敬語表現であっても、相手を持ち上げていない(謙譲になっていない)。見下していると受け取られる危険性がある。

 

<補説4>

「参考にする」を言ってはいけない理由。

  1. 一つの意見として扱うこと。
  2. アドバイスは必ず従うべき。
  3. 上司や先輩なら従うべき。

 

<結論>

「参考にする」には自分の感覚がベースにあって、アドバイスを決めるのは自分。すると、相手を自分より下に見ている印象が生じる。

 

 

「相手を下に見ている」と上司に受け取られたら、コミュニケーションのリスクは致命的。だから、この表現を使わないことがキモ。

 

最終的にアドバイスどおりにしない状況もある。だからといって、感謝を示す場で「アドバイスありがとうございます。従うかどうかはまだ決めていませんが。」とわざわざ言う必要はない。それは不快感を生むだろう。

 

どんな意図があろうと「あなたのアドバイスの妥当性は、私が決める」「あなたが正しいかかは、私が判断する」と宣言したと誤解される可能性が残る。そのような理由で「参考にさせていただきます」は慎重に使うべき。

 

*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー

<Summary>
「参考にする」といった場合、決定者は自分である。自分が判定するという意味を持つ。すると、相手への反抗や、利用するだけ、見下すというニュアンスが含まれる。だから上司には使わない方がよい。

 

*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー

<雑感> 

もちろん、相手の指示、命令に対して「参考にします」と言えば、致命的な服務違反だろうし、帝国軍なら銃殺刑である。

 

だが「参考にします」という場合、問題のイニシアチブは上司によって担当者に与えられているはずであり、上司もそれを承知しているはずである。

 

決断は部下にある。と認識できていない上司なら能無しだから扱い方はこういうレベルでは追いつかない。

 

よって「参考にします」と言われて無礼と考える人はいないはずだ。もし命令に対して「参考にします」と返されたらそこから説教タイムが始まる、そうでなければ、その人の表情を見て、更なるアドバイスが必要か、もう少し泳がせるか判断するだろう。決断することで部下が育つと上司は考えているはずである。

 

問題提起を漠然としながら、論じる間にひとつの結論を導入する手法は有益である。特にセミナーなら目からウロコという印象が何よりも優先される。話の進行に従って、幾つかの前提条件は失われ、結論だけが独り歩きするのがいい。

 

この記事の結論を支えているものが記者の「上司に絶対服従」という考えである。これがなければ記事のテーマは簡単に破綻するはずである。

 

詐欺師は10の真実の中に1つの嘘を混入する。それと類似して、この読み応えのある記事にも、幾つもの考えさせる内容があり、特定の場面ではとても正しい、隅々に散りばめられたコミュニケーションのとても大切な話、そういう装飾が全体を支えている。