「パトレイバー」新作、本格始動を発表! 8月10日"パトレイバーの日"に

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パトレイバーの傑作はこれはコミック版であって、何が傑作かといえば、官僚や社会人の描き方にある。作品の世界観を支えるのはもちろんレイバーという架空の産業であるが、この作品の近未来を支えているのは人間の描き方の確かさにある。ゆうきまさみという作家ほど官僚を魅力的に描く人はそうはいない。

 

押井守の傑作は二課の一番長い日だと信じるが、The Movieは、僕の人生を変えかけた作品である。この作品を見て、アニメーションの世界に飛び込んでみたいと奮い立たせた。具体的な行動まで進んでいながら、もう一歩の所で踏ん切りがつかなかったのであるが、何故かは未だに分からない。それでも創造性を掻き立てるという点で The Movie は僕の中でとても大切な作品である。残念ながら 2 はさかったおばさんが見るに耐えなくて面白いと思わなかった。

 

今となっては The Movie で印象に残っているのが、取り残された古い木造のアパートであったりトブ側の雰囲気だったりするのが不思議である。押井守が本気で狙ったものだけが残ったのだろうか。

 

主題にはテロリズム、クーデターを持ち込んでいるが、どうしても時代の徒花みたいな所があって、ISを現実に知っている現代では、どうも古く感じる。ASIMO が登場した時に感じた未来が、ボストン・ダイナミクスを見た時にああもう古いんだ、と感じたのと同じ感情ではなかろうか。

 

押井守本人がロボット兵器などナンセンスだと書いているし、この考えには同調する。18mもある巨大なガンダムが登場した所で、あのスペックを見るかぎり、現行の陸上兵器でなんなく破壊できるし、逆に現行の兵器をガンダムは破壊できないだろう。という延長線上にパトレイバーのメカニズムもある。

 

出動するたびに電線を切りまくるようなものを警察が運用するはずがない。パトレイバーの両脚の荷重は計算したことはないが、アスファルトが耐えられるとは思えない。

 

リボルバーカノンだってロマンがあるから見ていられるのであって、口径が仮に20mm だとしても実際に街中で発砲できるはずがない。もし当たらなければどんな惨事が起きるかと想像すれば、軍隊が街中で交戦する方がまだリアルがある。こういう話はミニパトでも話題にしていた気はするが、本当はもっと深く話したかったんじゃないかな、という感想を持った。

 

いずれにしろ、パトレイバーの近未来は現実に追い抜かれた。追い抜かれてもパトレイバーが傑作であることに変わりはない。だから、リビルドは難しいだろう。

 

リメイクでは詰まらない。漫画のエピソードのアニメ化でさえ、新しい造形を加えないとリアリティが持たないだろう。当時と今では世界の幾つかが変わってしまった。テロリストがいて、企業ぐるみの反社会的活動が黙認されたあの架空の世界でさえ、原発は爆発などしていない。

 

いまさら押井守でもないだろう、という話もあるだろうが、やはり僕は押井守パトレイバーがみたい。彼の実写版でさえ真野恵里菜が見ていられる以外、呆れるくらいに退屈だったのに、今も期待している。零式と98の戦闘が期待だけ膨らませて鳥の交尾ていどの短さしかなくても The Movie は傑作だったのだ。いいんだ、映画版の零式の不満は全部、コミックが回収してくれたから。

 

パトレイバーは、車で言えば、シルビアとかSX180みたいな雰囲気だと思う。あの時代のあの空気の曲線で構成されたデザインに見える。だから、時代背景、出来事、事件(警察だから)がどうなろうと、デザインは新規に起こしてほしい。

 

そのために30年後の世界を持ち出したのではないか、という期待する。ちゃんと現在の新車を連想させるデザイン。ポルシェでさえ、21世紀に入ってデザインを変えてきた。その主因は、材質にあるのだろう。平行世界にあるレイバーだってモデルチェンジはするし、社会的な問題の影響は強く受けるはずだ。電気で動くから排気ガス規制はないだろうが、カートリッジ式のバッテリー交換や、発電用のディーゼルエンジンと接続したまま動いてもいいじゃないか。エヴァンゲリオンの有線はそこがリアルだった。冷戦の終わりから軍隊でさえあれほどの変革を遂げた。軍用レイバーが影響を受けないはずもない。

 

パトレイバーのエピソードはどれも素敵だ。いずも計画の話が好きだが、30年後を描くらしい。どの時点からの30年後かは知らないが、近未来をかなぐり捨てて現代劇としてやるなら拍手喝采だ。

 

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