サウジ、「記者は死亡」認める=総領事館で「口論と殴り合い」

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日本で真実は闇というと、蟹工船小林多喜二殺害がある。これを実行した特高も指示した責任者も罰せられることなく、戦後までのうのうと生きた。

 

当時の日本で本気で共産主義に染まるほうも染まるほうなら、それを危険分子とみなして殺すほうも殺すほうである。殺害に係わった連中が大空襲でも焼け死なかった歴史には暗澹たる気持ちになる。

 

同様の事件に大杉栄が家族ごと殺害された事件もある。甘粕正彦が首謀者とされるが、また俺が尻ぬぐいするのかよ、と嘆じたという話もどこかで読んだ。首謀者が皇族であったから仕方ないと腹を決めたという話で、この逸話はその後の満映での活躍ともよく符合する。

 

既に関係者の何人かが不審な事故死をしたというニュースを聞いた。そもそも、どうやって音声が外に漏れ出たのかという話である。どこかの国が盗聴していたのか、誰がリークしたのか。

 

いずれにしろ、真相は闇の中へ消える。だから陰謀論がどうしても必要であって、それに従うなら、様々な憶測はすべて王子へと一直線に向いている。飛行石の光かよってくらいに、それはまっすぐだ。

 

と言うことは、これも陰謀論に従うなら、彼を貶めようとした勢力の存在が暗示される。側近が参加していたではないか、という意見など、人間ひとり丸め込み、裏切らせる方法など幾らでもあるわけで、陰謀論さえ使えば何とでもなる話なのである。

 

サウジアラビアという国については石油の産出国であり、資源が枯渇する前に、次のステージを準備しようという機運が発揮されつつある国、という理解しかなかった。

 

しかし、ちょっと読み聞きした範囲で言うなら、最も重要なのは王室の存在らしいのである。彼らの国家はどうやら民主主義ではないらしい。もちろん、民主主義が良いという前提で話がしたいわけでもない。北朝鮮の正式名称が朝鮮民主主義人民共和国であることを知っているし、自民党憲法談義を聞けば日本人の程度だってたいがいなもんである。

 

しかし、驚くべきはこのニュースに対するトランプの反応である。サウジアラビアとしては幾つもの想定外が起きている。そもそもトルコ政府にばれるはずもなかったのである。

 

だが、トルコ政府が動き出した。彼らはそれを知っていたかのように(まるで陰謀論)、その動きはじめは迅速であった。すぐに彼らは世界に向けて発信したのである。疑惑がある、と。

 

信頼できる情報は何もないが、疑惑は最初から王室の方に向けられていたようだ。いつものようにイギリス、フランスとヨーロッパが反応した。世界中の世論を背景にトルコ政府は強くサウジアラビアに真相の究明を要求する。それでも、ここまでであれば、たとえ誤算とはいえ、サウジアラビアは動きはしなかったであろう。

 

トランプの一言が世界を動かした。アメリカが本気である、という事実がサウジアラビアを動揺させたのは想像に難くない。何かを世界に向けて発信しない限り、アメリカは振り上げた腕を下せない。

 

もちろん、発信しても疑惑は残るのである。推定無罪の原則に従っても真っ黒な事件なのだ。アメリカとトルコはどこかの牧師を巡って対立していたが、それさえも吹き飛んだ。

 

まるでサウジアラビアがトルコとアメリカを和解させるために打ち込んだ一石のようだ(そんなもので惨殺されるのもどうかと思うが)。

 

最初の頃、ニュースには「手違いで殺された」と伝えられていた。これを堂々と書いた記者も記者であるが、手違いで簡単に人は死ぬのか、と世界中が思ったであろう。病院でならカルテを間違いで健康な人が手術されて死んだりもしている。ちょっと待てよ、手違いという事は、別の誰かはやる気まんまんだったということか。

 

生きて帰りたければ黙っていろと大使への恫喝、こういう作業(死体の解体)の時は音楽を聴きながらするのがいいんだ、なんて、平野耕太の漫画かよって感じだ。

 

こと、ここに至れりという感がするニュースである。中東情勢など何も詳しくはないが、19世紀から長い間に山積された問題が、ゆっくりと動き出した感がある。崩落か、再生か。

 

  1. イスラエルパレスチナの問題
  2. スンニ派シーア派の対立
  3. アラブの春をきっかけとする政情不安
  4. 石油資源をめぐる大国間の思惑
  5. 難民によって揺さぶられるヨーロッパコミュニティ
  6. イスラム原理主義、ISの復活

 

これらあらゆるものが一点を指しているように感じられる。このままで済むはずがない。さあ、ここで一気にケリを付けてしまおう、そんな言葉さえ聞こえてくる。