サウジ、「皇太子が命令」報道を強く否定 記者殺害事件

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この事件の顛末は、ある時に一気に間髪いれずに動くだろうから、部外者の知るところではない。だが、トランプがサウジと蜜月でありたいという思惑とは裏腹にCIAでさえサウジアラビアを追い詰めようとしている。なぜだろうか。

 

トルコが録音テープを公開したら、これは世界中の非難で叩かれまくるのは目に見えている。その場合にはどのような修復不可能な事態に陥るかは誰にも分らない。

 

中東はイラン問題も抱えており、イスラエルもある。IS勢力は弱まったとはいえ残り火は消えていない。もしサウジアラビアが倒れると、パワーバランスは明らかに崩れる。それはそうやすやすと甘受できるような恐怖ではないのである。

 

サウジアラビアがどうすれば世界を納得させられるか。この点が現在の焦点であるが、他の国々からすれば、このチャンスるに十分な圧力をかけておきたいという思惑もある。イエメン問題を解決する絶好の機会ととらえている人もいるだろう。

 

サウジアラビアの内政としてはどうしても王子は守らなければならない存在のようである。彼の改革姿勢には賛同者も多いと思われる。

 

そんなことはイスラエルをはじめ、各国とも了承済みである。アメリカだってサウジアラビアというお得意様を失いたくなどない。だが、この問題を大げさにしたくない考えとは裏腹に問題はいっこうに立ち消えない。各国の思惑は二重、三重と複雑になっている。

 

多くの国にとっては、たかがひとりのジャーナリストである。行方不明になったところで、誰も気にしない。それはサウジアラビアを非難している各国だって同様なのだ。日本だって拉致された人については自己責任でずっと忘れていたではないか(当事者や関係官庁は別)。

 

では、なぜこの事件だけがこうも世界的に突発したのか。それは殺し方によるものだろうか。ポロニウムを使った急性放射線障害を起こすよりも残虐であったろうか。そもそも暗殺に残虐以外の何があるだろうか。

 

中東の力学には全く疎いが、様々な事柄が潜んでいるようだ。先進諸国から見れば、なんと非合理的と思われることもある。もちろん、彼/彼女らから見れば、我々の社会のほうがなんと非合理的と感じることもあるだろう。

 

価値の押し売りはいけない。だからと言って、こんなの許容できるか、というのが現在の状況であろう。あのトランプでさえ慎重な態度を見せている。こんなの、信じられない。数百億のビジネスを前にしてたった一人のジャーナリストの命を前に足踏みをするなんて。つまり西洋の逆鱗を踏んだ事件というわけか。

 

それほどの事件であった。ジャーナリストの命はそれほど重い、という事だろうか。このニュースを信じるならば、王子の弟さえ関わっているように読める。

 

当然だが、CIAは弟の首で勘弁してやるよ、というメッセージを送ったのであろう。彼が首謀者ならば、世界も納得するだろうというメッセージであるか。

 

もちろん、そんな話はない。世界中のだれ一人として信じはしない。だが、サウジアラビアにどの程度の羊を捧げれば非難を鎮めるかという基準を提供したようにも思われる。王室のだれひとり無実はあり得ない、側近程度では取引できない、そういうメッセージだとしたら。

 

たしか家康は、信康を殺した。そんな歴史もあったけ。ならば、ここで王が罪を認めても驚きはしない。

 

もしもサウジアラビアが倒れたら。。。

 

民主政権が樹立してめでたしとなるであろうか。否。アラブの春は、まず混乱を齎した。必ず石油を巡る部族間の内戦が始まる。アメリカだって利権を手放したりはしない。ロシアだって放置しない。ヨーロッパは裏庭の闘争を看過できまい。日本だって石油の一滴は血の一滴である。海外参戦だってあり得ない話ではない。中国だって一帯一路の通り道。当然ISだって雪崩れ込んでくる。

 

サウジアラビアを倒すわけにはいかない。これが力学上の至上命題である。だったら全員でいっせいに手を引けばいいではないか。どうも振り上げた拳の落しどころが見つからなくて困っているようである。

 

たったひとり命がこれほど重い事があろうか。カショギ氏はもしかしたらその一命をもってサウジアラビアの王政を倒すかも知れないのだ。彼は生きて、ジャーナリストとしてその顛末を見たかったであろうに。その残念さを思う。