仏大統領、デモ受け最低賃金引き上げなど発表 改革路線は堅持

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F2 フランス語は何を話しているか知らないけど、Anne-Sophie Lapix がかわいいことは知ってる。BS1ワールドニュースでしか見たことないけど。

 

異常気象か黄色いベスト運動が最近のニュースの中心だったと思うが、ほとんどフランス革命時のパリかってくらいの暴動である。一つ間違えれば、さらに燃え上がるし、そうなれば「いいえ大統領、これは暴動ではありません、革命です」なんと話になるかも知れない。まぁ、民主主義の革命とは選挙で負けることなんだけど。

 

パリで起きていることは略奪という犯罪でしかないのだが、その事実さえも飲み込んで、これは市民の権利という様相をかもしている。なぜガソリン税増税がこれほどまでの運動に発展したのか。フランスのガソリンの値段は日本よりも20%程度は高い。高いには違いないが、でもその程度である。

 

マクロンがなぜガソリン税増税するかといえば、CO2削減というのが名目である。ガソリンの使用量を減らすためには増税する。至極当然な政策であって、それによって起きる変化、電気自動車の普及などを政府は目論んでいる。日本ならエコカー減税って形で実現した。

 

フランスは増税という手法を取ったため、経済格差、高い失業率などの経済問題をかかえており、また地続きという地学的な条件のため、移民、民族対立などの不安も重なっており、どうやらこの施策が、コップの水をあふれさせる最後の一滴となったようだ。

 

実際にマクロンの政策は企業減税、金持ち優遇と日本の安倍内閣と似たようなものである。まさか、未だにトリクルダウンを信奉しているわけではなかろうが、強い企業を優遇することで経済の牽引役にする考えである。

 

電車の機構を見れば分かるように、蒸気機関ジーゼル機関車など動力車を使って先頭車両で牽引させる設計(動力集中方式)と、新幹線や日本の電車のように、各車両にモータを積み込んで動力とする方式(動力分散方式)がある。ちなみにTGVは前者である。

 

大企業にそれを託すのは、動力集中方式として合理的な側面をもつが、その代わり、向こうだって条件を出してくる。そういう企業はとても特権を得やすい立場にある。そういう枠組みがあれば、それを使わない手はない。こうして階級の発生、富の蓄積、など過去の歴史で起きたことが再び起きるであろう事は簡単に予測できる。

 

このような方法論をとる以上、最も恐れるのはそれらの企業が倒れることであり、また、それらの企業が活動拠点を他の場所に変えてしまう事である。明らかに脅迫する側が企業なのである。税制の優遇、より安い人材、より良い条件へと移るのは、グローバリゼーションの恩恵である。

 

世界が狭くなっただけでなく、国境が低くなれば、当然それは起きる流れであって、そう考えればマクロンの優遇策にもちゃんと意味はある。一方で、ピケティのような学者はその方法論に未来はない、と考えており、格差の拡大は結局のところ、国力を低下(衰退)させる。

 

格差が巨大になれば、社会が支払うコストは治安だけでなく、全体の優秀な人材数が減るから、例えば、奴隷を使いたいだけなら、貧乏な人を安い報酬で働かせれば十分だが、そのモデルは早かれ遅かれ技術革新によって駆逐される。南部の奴隷はどうせいつかはコンバインに取って変わられる運命にあった。

 

幾つもの仕事がAIやロボット技術によって人間を必要としなくなる。すると企業としてはそれが実現するまで暫定的に人間を雇用する態度であるから、安い方がいい。そのうち、人権も不平も言わない労働力が手にはいるのだから、そういう感覚はもう捨ててしまっても問題ない。そういう未来志向が現在の戦略の骨幹にある。

 

だが、経済を支えるものは市場であるから、すべてをAIとロボットで生産して、どうやって市場を維持するのかという事を企業は考えない。彼らの市場に対するメンタリティは数万年前の人類と同じである。市場は自然発生すると考えているのだ。そうではなく、市場もまた牧畜や農耕と同じく育てて収穫しなければならない、という考えにはまだ至っていない。市場を形成する労働者を低賃金で働かせれば市場が停滞するのは当然である。

 

ならば格差を小さくし、優秀な人材を育て続けるほうが、全体の利益を向上させるのではないか、と考えてみるのだが、日本の長期的政策といえば、やっぱり小泉純一郎が所信演説した米百俵の話だと思うが、その小泉からして実際にやったのは短期的視点に立つ国家の売り切りであった。

 

マクロンの演説がどれほどフランスの人の心を打つのかは知らない。だが、お菓子を食べればいいじゃないのと同様のことになりはしないか心配である。問題の深刻さに気づいていないルイ16世になる可能性は十分にある。

 

格差からの暴発は、予測不可能である。どの瞬間に最高潮に達するか誰も知らない。暴動を鎮圧するための警察官のたった一言に端に発するかもしれない。

 

この暴動の果てに何があるのか、真っ暗な気もする。ガソリンの増税を取りやめても何ら解決になってない気がする。ここで失った信頼は彼の政権にとって決して小さくない。それを乗り越えるために、どれ程のことをするのか。またその後に何が続くのか。不穏な空気が漂う。

 

財政赤字のGDP比率にEUが基準を定めていることは知らなかった。この厳しい措置のために、EU内で各国が問題を抱えているとしても不思議はない。地球を両肩にのせて身動きできないアトラスがEUなのかもしれない。すると、この問題はフランスではなく、EUの規制に関する問題なのかもしれない。もし日本がEU加盟国なら、どのくらいの基準に違反しているのだろうか。

 

EUは各国が協調する制度であるから、厳しい取り決めも必要と考えたのだろう。だが経済成長の足かせとなっているのならば、と脱退を決めたイギリスは、メイ首相の案は否決され、合意なき離脱に走りそうだし、フランスは、財政改革と経済改革の両立を目指して足踏みを続けている。

 

なぜ問題が解決しないのか。この世界経済を停滞に落とし込んでいる原因は何だろうか。資源の枯渇、人材の枯渇、ルールの制約、果たして活気を生みだす根本原因とは何なのだろう?

 

歴史上、経済的発展を体験した地域は幾つもある。それが成立した理由は、教科書には書いてない。ただ発展したとだけ書いてある。