ロシア、北朝鮮の非核化へ積極的に関与 両首脳が初会談

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円環の理といえばまどかマギカだが、見たことがないので知らない。深い運命に導かれて遠い旅を始める物語だと聞いたことはある。円環といえば普通はトーラスであって、つまりドーナツである。または循環。

 

輪っか状と言えば、円月殺法が思い出される。アステロイドベルト(回転防禦)も記憶に新しい。空母を中心に円状に駆逐艦を配置するのもつい最近だ。

 

20世紀の最大の発見にDNAがある。これが螺旋であることも、円に対する人々の神秘性を高めた。もちろん、人類最大の円の発明は輪廻に違いない。何度も繰り返すという思想が、人間の円に対するイメージを拡大している。それが傑作火の鳥も生み出した。

 

何度も同じ所に戻すという戦略を北朝鮮は取っていると思われる。いつか来た道をもう一度歩く、何度もリセットして繰り返す。デジャブである。

 

地政学的には北朝鮮は東西の接点にあって、ヨーロッパに東ヨーロッパという緩衝地帯が必要であったように、アジアには北朝鮮が必要であった。多くの衛星国家が独立した21世紀とはいえ、ロシアにとって、国境は常に懸案の事項である。ロシアは一度もヨーロッパに攻め込んだ事はないのにナポレオンとナチスと二回も攻め込まれている。

 

確かに意図さえ持ったことはないと言えば嘘だろう。バルカン半島はロシアにとって都合のよい抜け道のような場所であった。ヨーロッパが常に警戒を怠らず抑え込んでいたから起きなかったという結論もある。それでも、ロシアは国境については鋭敏にならざるえない国のひとつである。

 

中国にとって朝鮮半島は、アメリカの軍隊が存在する注目すべき地域である。日本なら海があるが、朝鮮半島は陸続きにある。警戒すべき地域であることは確かだ。

 

要するに北朝鮮がなければ困る国家は、ロシアと中国である。この二国にとって、アメリカ、および、それと同盟する国家と国境を隣接したくない、どうしても緩衝地帯が必要だ。

 

中国の巨大な海軍も支配海域の拡大も、アメリカを寄せ付けたくないというその一点にある。アメリカという大国を警戒するのは、ある意味では当然なのである。日本が無邪気すぎるという面はある。同盟国であるヨーロッパでさえ、恐らくアメリカと敵対関係になった場合は研究しているはずである。EUという巨大市場をもってしても、経済的にも技術的にもアメリカと対抗するのは至難である。

 

日本だって、防衛省の奥深くでは検討しているだろうが、もともと、米軍のオプション的装備しか持たない軍隊である。どちらが本体であるかを嫌というほど自覚しているはずだ。軍隊としてのバランスは著しく偏っているはずだ。ま、バランスが取れた所でアメリカに対抗などできない話だが。

 

そういう環境にあって北朝鮮は外交だけで生き抜いてきた稀有な国家だと思われる。経済は弱く、軍事は古い、政治体制がどうしても自由な発展を妨げている。死ぬ気になって国民を餓死させてまでも開発してきた幾ばくかの兵器だけが頼り。

 

北朝鮮と韓国が戦争を始めればソウルは火の海になるかもしれない。だが、恐らくそれだけの話だ。一都市を火の海にして相手を潰せるなら何を躊躇する必要がある。日本など全都市を焼かれたうえできっちり敗北までした。少なくとも韓国軍は最終的にはそれでも勝利するくらいのプランは持っていると思う。彼らが心配するのは、その背後にいる中国やロシアであろう。当然、相手はアメリカの参戦を警戒している。

 

背景に大国がいる、それが北朝鮮の頼みの綱だ。和解するためには対立しなければならない。対立している間に時間が経過する。その間にロケットを開発し整備した。ひとつの目標を達成すればそれを議題に和平への交渉が開始される。そして次の対立軸が生まれる。次の時間を使って、今度は核を開発し、量産した。また和平のための交渉が始まる。いま、この時間で彼らは戦略用の小型原子力潜水艦を開発しているはずだ。これに核を乗せればアメリカから距離の優位性が消える。そこでの交渉はかなり強気に押せるはずだ。

 

トランプ政権の恫喝は、世界中の誰もその本気度が読めなかった。だから誰もが行く末に期待もすれば、懸念もした。そして、それがトップ会談という政治ショーであると読み切ったのは北朝鮮の側でなかったか。2020年に大統領は変わるだろう。もう少しすれば、彼らは我々と対話するどころではなくなる。大統領選が始まる。もう戦争を始める時間はない、そう読み切ったのかも知れない。

 

北朝鮮の最終目標には二つの考え方がある。中国からの束縛から独立したいと考える、または中国の衛星国として国家体制の保証を得る。

 

中国が北朝鮮を支配しているとすれば、ロケットも核開発も潜水艦も中国の後ろ盾があったという結論になる。しかも、生かさぬよう、殺さぬようという冷酷な計算で支配しているとすれば、北朝鮮は長く貧困から抜け出せない。

 

このまま王朝が長く続くと考えるのは厳しい。だが、厳しいと不可能の間には、数学的に絶対に超えられない壁がある。21世紀は新しい支配階級が生まれつつある時代である。世界に王国が北朝鮮だけではあるまいし、だが、参考にする国々はだいたいが資源に豊富だ。北朝鮮だけが資源のないまま王国を維持せねばならぬ。

 

朝鮮半島が統一されるなら、金王家はどこかに亡命するか、資産を保証された上で存続するしかない。だれもが統一国家は民主主義国家になると考えている。だが、韓国を見れば明らかなように、民主主義国家だからといって、日本と友好関係を持てるとは限らない。民主主義は内政が簡単に外交に影響する。それも単純な権力闘争とか選挙戦のようなものの為にである。

 

3億近い人が住むアメリカが民主主義で成功しているのは恐らく二大政党制だからだと思う。多党制が可能なのは1億以下の人口国家だけだろう。もしアメリが多党制だったら、常に離合を繰り返すばかりであれだけの政治力は発揮できなかっただろう。大統領制の国家は二大政党制以外の選択はデメリットの方が多いように思える。

 

もし中国が民主化したらどうなるか。10億以上の人口を有する多民族国家、幾つもの自治区を束ねる強力な国家権力がすんなり民主主義に移行できるとは思えない。その過程では内乱が起きる可能性も高い。内政的な権力闘争も繰り返されるはずだ。もし中国が民主主義になってトランプみたいな人が政権を奪取したらどうなるか。習近平はそれよりもずっと理解しやすい人ではないか。共産党は中国を支配する体制と見るのは間違っている。不要な権力闘争を抑え込む効率的な機関と考えるべきだ。

 

イランの外交政策が、まるで戦前の日本と重なる。死活を賭けて強気と冷静さが混在している。もし爆発すればすべて終わりだ。イスラムの教えは彼らを押しとどめるだろうか。多くのアメリカと対立する国が、その圧倒的な武力と気まぐれな政治の前で苦慮している。だからといってアメリカに服従する選択は取らない。アメリカは協力する相手だが、敵対する相手でもある。アメリカは言うほどフェアな国ではない。だが、同じ星に住めないほど悪魔的でもない(一部のテロ組織は除く)。

 

反対側に立つという選択は、別に悪い決断ではあるまい。周囲を見渡せば、アメリカと同調する国ばかりではない。北朝鮮はそれをよく知っている。アメリカだってよく知っている。アメリカはさて、本心では何を望んでいるのだろうか。潰してきた国の数は1つや二つではない。革命を起こした国もたくさんある。これは戦後アメリカの外交政策が裁かれる事件になるかも知れない。

 

北朝鮮は、一つ間違えばこの地上から消える。もし核を使えばアメリカは必ず10倍の核で報復する。朝鮮半島の人間をすべて焼くために。では彼らは何を引き換えにしようとしているのか。会談をしたプーチンの発現はとても正直だと思う。そしてそれはあっけないほど真実だろう。

 

プーチンという人は結構正直な人だ。それは北方領土における発言を聞けばよく分かる。誰もがそうだろうな、そうだろうという事を言う。ただ彼の言い方は、誰も反論させない迫力があるから困る、という点で日本の外務省も苦労(手放すという幼稚園児でもできる決断がもし彼らにとって苦慮というならばだが)している。

 

北朝鮮は王国の永続性を欲している。アメリカの後ろ盾さえあれば、我々は発展してゆける。これが北朝鮮の最終目標ではないか。中国やロシアじゃない。この本心が見え隠れしている気がする。プーチンだってそれくらい知っている気がする。正直であるとは、なにもかもべらべら喋ることではない。

 

共産圏が世界を覆うのを黙ってみるわけにはいかなかった冷戦時代、敵がいるから生まれた平和、敵がいるから可能だった団結、その理由が失われた時、世界がどう変わるか。21世紀は新しい覇権主義の時代となるか。それをアメリカは勝ち抜くか。アメリカの中央政府はそれを真剣に議論しているだろう。 

 

我々はもう暫くはこの地上で争うしかなさそうである。この広大な宇宙さえ、そこに浮かぶ小さな土塊でさえ、目に映らないのが政治というものである。神は土塊から人間を作ったという。それはこの星じゃないか。

 

さて、アメリカはどうか。