中国優遇見直しを=米大統領、WTOの「途上国」扱い批判

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こういう時のトランプは凄いと思うし、頼もしくもある。とにかく自分への不利益を許さない。もちろん、この人は自分にとっての利益であれば、ことごとく許す。基本的にフェアという考えはないはずだ。

 

そのあからさまなベネフィットの追求が必要となるほど、アメリカもぎりぎりの場所に立っているのか。もちろん、真の敵は中華人民共和国である。

 

世界の覇権、という意味では、太古から各地域に幾つもの国が興きては滅んだ。ヨーロッパでも南米でも、アフリカでも、アジアでも。もしかしたら南極大陸にも。

 

それらの国家のうちでも、中国とローマは特に高度な政治体制を発達させた。そうならなかった地域もある。特に著名なものはギリシャ思想と中国思想のふたつであろう。これらの地域は、その後もブラッシュアップされ、長く地域の中心となった。

 

統治思想という点では、ヨーロッパ、アメリカ、日本、中国、韓国、東南アジアと多くは西洋の近代国家思想を選択している。当然だが、各地域で、伝統的な政治思想から逃れられるはずもなく、日本や中国の政治的思考は、多分に儒教的な影響を受けているはずである。

 

だからといって、例えばイギリスが覇権を取った時、彼らは自分たちの政治を海外に輸出する気などなかった。海外への普及を本心から願ったのは愚かな牧師たちくらいである。

 

その例外的な期間が戦後であって、それはソビエトという共産主義と、アメリカという自由主義、政治体制を全面に出した覇権争いだったし、それを支えたものは社会思想、そのものであった。だから戦後の戦争の多くは、自由と民主主義のために行われた、これが建前である。

 

自由と民主主義で成功したのは日本や韓国くらいである。ベトナムでは敗北し、アフガニスタンイラクでは地域を根本から破壊しただけである。イランさえアメリカが余計な事をしなければもっとずっと穏当な国家だったろうと思われる。

 

だが、世界に思想を輸出するという考えに我々は慣れているため、中国の台頭が気味悪く思えるのは仕方がない。彼らには世界に打って出る理由がない。統治システムから自由の考えに至るまで、国家としての理念、理想、目的がない。

 

もちろん、自由を国家の理念に掲げるのはアメリカくらいなもんであるが(フランスも?)、そのような世界に慣れてしまった我々が、中国の台頭に警戒するのは仕方ないであろう。だが、伝統的な自然発生した国家においては、その存在意義に理念などなく、気が付く前には存在していたのである。だから、そんな理念がある方がおかしい。

 

では、世界の覇権を争う理由は何か。国家の野心、野望、そして警戒感であろう。それはとても自然な経済的膨張からの帰結に過ぎない。その根底には地政学がある。彼らが対抗する相手はアメリカである、という考えは間違いない、と共に、人口でいえば、将来はインドが競争相手になるだろう。

 

地球が有限である限り、人口増加に起因する資源の争奪戦が起きるのは当然であろう。残された資源は、おそらくもうアフリカにしかない。だから今はアフリカに行く。それを掘りつくせば、宇宙に出るしかないはずである(海底もある)。

 

彼らの列島線が1,2を超えて3,4,5と拡張されるのは確かに自然と思われるが、当然だが、中国も既に残り時間が少ない国家である。彼らの経済が爆発的成長させた安い賃金というアドバンテージはもうじき失われる。日本を超える高齢化も迎える。

 

チベット問題やウイグル自治区は、中国を警戒する良い理由になっている。中国は他民族国家であるが、それは中心部に対する緩衝地帯であって、かつての衛星国家と同じような意味合いがある。それは大昔から、そういうものであったろう。万里の長城の変わりに、いろんな省がある、といった感じか。強靭な伝統的な官僚制度も残っているから、権力闘争が硬直化しやすい欠点も持つ。

 

しかし一方でバイタリティが高い民族性、思想や議論が好きで、チャレンジを厭わない人たちも多くいて、長い歴史が鍛え上げてきた人民の強靭性というものは、良い方向かうにしろ(IT技術革新の担い手)、悪い方に向かうにしろ(密猟など自然破壊)、とても力を発揮している。

 

そして、アメリカと中国の対立が、韓国を動かしたのか、なぜか、ここにきて韓国と日本が争うようになった。これまで日本は韓国政府とは面と向かって交渉してこなかった。実は一度もまともに対等に扱ったことはない、とさえ言ってよい。ケンカにしろ、難詰されるにせよ、事を荒げないように処置してきた。

 

それを政府は、今回は面と向かってケンカを始めた。恐らく、その先にある着地点などこれっぽちも考えてはいないはずである。屈服させればいいくらい何の目論見も持たず中国大陸に渡った陸軍とそう変わらない紛争を始めたのである。相手が韓国とは随分と小ぶりになったものだ、という気もしないではない。

 

だが、逆に考えれば、韓国の外交が日本を動かしたという意味で、韓国が大国化しつつあり、日本が小国化しつつある証拠かも知れない。そういう象徴として見られる事件かもしれない。ま、世界はこの争いを夫婦げんかくらいにしか見てない気がする。