北朝鮮代表「米は手ぶらできた」 非核化協議の決裂強調

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北朝鮮がここまで強気なのは、交渉に自信を持っているからだろうか。少なくとも、世界からそう見られる事は意識している。

 

ヒットラーが最も恐れたのは、ポーランド侵攻時だと聞いた事がある。もし、この時のドキドキを英議会が知っていたなら、きっとイギリスは参戦しドイツを叩いたであろう。逆にヒットラーはイギリスとフランスは参戦しないと確信していた。確信していたが、保証はない。だから、このわずか数日の趨勢が決定的であった。その結果として、4年近くの戦争が不可避となった。

 

歴史には幾つかのポイントがある。もしそこで違う行動に出ていれば、歴史は違った結果になっていたであろう。その結果が良いとは限らない。違う選択をしていれば人類が滅ぶシナリオだってある。そういう意味で、結果論として、現在は最悪を逃れてきた。

 

それでも、北朝鮮の強気、その多くは時間稼ぎであって、戦略潜水艦の実戦配備するまでの話である。それさえ実現すれば、アメリカは通常戦争によって問題を解決する手段を失う。そして核を搭載する潜水艦の実戦配備まで数年を切った。やっと手の届く所までこれた。

 

これが実現すれば、当然ながら、このパッケージングは北朝鮮から他国へ、例えばイランやIS国へ、流出しないとは言い切れない。例え、中国という後ろ盾があろうが彼らは監視の目を盗んでやるだろう。もしくは、暗黙の了解の上で。

 

もしアメリカの地位を脅かす事ができるなら、人類の半分が死滅しても構わない。それでも30臆(1960年)は残るではないか。そういう戦略が選ばれないとは限らない。この話は決して想像力ではない。政府の中枢にいるリアリストたちは間違いなく、こういうシナリオについても検討している。

 

少なくとも冷戦時の戦略は、そんな状況は許さない。そのような状況を迎えるくらいなら、必ず世界中の人口を1億人以下にまで減少させる。そういう決断であった。それを可能とする軍備を鍛え上げた。

 

そのような状況で、別の道を開いたのはゴルバチョフである。勝ち目のない状況にいるよりは別の道を選ぶ方がよい。その結果が、今のような状況を生むなんて、誰も予想しなかった。独裁者がいなくなった地域ではテロリズムが横行した。ならば、独裁者とはそういう者たちを抑え込むための存在だったのか。

 

潜在する問題が、表に出てきた事は、果たして抑え込んでいた事の正しさを証明するか、それともそれ以外の方法を誰も知らなかったという敗北と向き合うだけの事か。

 

孰れにしろ、冷戦の終焉とともに変わる事ができた地域は幸運であった。幾つかの国は置いてきぼりをくらう。それまでの戦略は取れないのに、体制は変えられないという状況である。北朝鮮はその一つであろう。

 

他国からすれば他人事であるが、彼/彼女らにとって、それは、切実な問題である。状況の変化を彼らが朽ちる理由になどできない。どうやって交渉を続けるかという点で、彼らは資本主義に移行する選択をしなかった、恐らく出来なかったというべきか。

 

王朝という彼らの独特な体制を維持する事を国際社会は認めたはずである。だとすれば、市場を解放しても問題なさそうに見える。だが、そうなれば内から一族の存続を許さない勢力が台頭するはずである、そう判断したと考えられる。サウジアラビアのようには国家を維持できないという事であって、恐らく北朝鮮に石油がない事が最も大きな理由となるだろう。

 

と同時に、彼らの心底には、彼らは王ではない、という集合的無意識があると思われる。だから、彼らは最終的に王としては君臨できない。すると、今の国家体制を維持するしかない。その中心にあるのが主体思想である、これが無理なら、もう国を投げ捨てるしかない。

 

戦前の日本は天皇という思想で国家を運営した。現在のイランは、最高指導者の権威に絶対的な権力を与えている。アメリカは自由と民主主義という思想の壮大な実験場である。だが、それを支えるには貧乏では無理だ。日本は貧乏だから倒れた、イランは石油があるから今も狙われている。

 

貧国である北朝鮮は倒れるしかないのか。それを恐らくは中国が許さない。あの地域が自由主義に加わるなど絶対に認められない。国境のすぐ隣にアメリカ(軍)が存在するなど悪夢のはずだ。

 

だから、ここまで強硬にアメリカと敵対し続ける背景には、中国がいるのだろう。そもそも、独立した国家が自らを他国に譲り渡すなど、出雲以外では聞いた事がない。そんな過去があるから、徳川だって政権を放り投げる事ができたのか、そんな夢想をしてみる。そんな選択のできる政治家が他にも存在するか。

 

現在の選択肢では、無理が通る所まで持ってゆくしかない。そのためには核による脅迫しかない。相手はアメリカである。

 

どうもアメリカは外交下手ではないのか。CIAの陰謀も、イランを始めとして混乱の元凶となっている。もし彼らが介入しなかった世界はどうだったか。誰にも分からない。

 

時間が解決する問題ではない、だが、確実に時間が延命の肝になっている。1分の時間を与える事が敵を利する。それでもアメリカが世界でこれだけの恥をかかされながらも、相手に譲り、憤る素振りさえない理由がどうも分からない。この問題のコアは、常にアメリカの態度にある。

 

北朝鮮が目指しているものは、本当はそう難しくないのだとしたら、この問題の謎の全てはアメリカ側にある。彼らはなぜ強硬になれないのか。

 

イラクにはあれだけ大胆に軍を派遣し、イランとの戦争は辞さない姿勢を崩さないアメリカが、なぜ北朝鮮にだけは、これだけ軍事的な脅威にも関わらず、弱気なのか。その後ろ盾に中国がある以外の理由が見つからない。もしこのために戦争というオプションが実質的に行使できないと仮定したら。だから、交渉がこれだけ苦心しているのか。

 

ならば、中国との貿易戦争にはこれだけ強気な態度が取れるのは何故か。中国との関係に注視する段階にあるのか。とても多くのエージェントが分析と予測をしている期間であるからか。

 

間違いなく、速度は中国が早い。だが、あれだけの人口が今の体制で無事のままとは思えない。香港さえ抑え込めない状況がある。20年前ならとっくに弾圧済みだったはずなのに。世界の大国は実は身動きできない状況にあるのか。

 

いったん、動き始めたら、その暴挙は誰にも止められそうにない。そう思っているだけなのだろうか、もしかしたら既に立ち上がる力さえ失っているのだろうか。弾圧も地域破壊も躊躇せず国内では進めているではないか?なぜ、あの地域ではそれが進み、この地域では進まないのか。

 

その分岐点が分からない。そんなのがただの気まぐれのはずがない。まさか本当に張子の虎であると?そんな考えは杞憂だろうか。