ドクターX シリーズ6、初回視聴率20.3%

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ドクターXを面白いと思ったのは前シーズンからだけど、キャラクターもいいし、ストーリーも良い。その世界観は、西田敏行が悪者となって、色々とちょっかいを出すんだけど、米倉涼子の技術力の前に屈服する、というパターンだった。

 

ただし、政局的な争いや感情的しこりをあっけらかんとするために、物語を毎度リセットする必要がある。一話完結型ドラマの宿命である。それを担うのが岸部一徳で、最後の西田と岸部のやり取りが、ちゃんちゃんという音とともに、次回へ物語を切り替えた。これが、ドクターXの基本パターンであった。

 

ここで西田の悪人も善人も演じ分けるキャラクター造形の幅がものをいった。前半は憎たらしい人であるのに、最後はいい人になって終わる、そこに何の矛盾も感じさせないわけである。作品の、特に人間関係に関しては、ここにリアリティを線引きした。後腐れない主人公にちゃんとした現実感を持たせていたのは、多分に西田が下支えしていたからである。

 

所が、探偵ナイトスクープからの辞任とも関係あると思うが、第一話で彼は物語から去る。それでも彼の残した残像が暫くは作品を支え続けるはずである。その代わりを務める主要人物は市村正親だが、彼には一つの物語の中で、愚者と賢者を使い分けられる程のキャラクター造形はないように思われる。

 

第一話というトライアルなのでまだ確立はしていないが、市村の人物像が、物語全体を決定づけるはずで、そこに失敗すれば、本シーズンは失敗するのではないか、その理由としては、これまでとは異なるワンパターンが生み出さなかったから。

 

そもそも手術さえしていればいいような主人公に対して、金を絡ませるために岸部がいて、病院内で孤立するから内田有紀が配置されていて、これまで悪役は西田敏行一人が担ってきた、彼の演技の塩梅で圧力を調整していた構図がある。

 

これを変えるために、初回は、驚くほどの著名人を作中に登場させたのは、西田ただひとりの存在感の変わりとするには、これだけの人間を投入せざる得ない制作側の判断があったのだろう。

 

第一話を見る限り詰まらなかった。情緒的に悪と善を演じるのは俳優の力量でも可能だが、賢さと愚かさには、どうしても脚本が必要だ。そこは、俳優の力だけでは難しい。

 

そして手術室から叫ぶ市村を見れば、あ、こいつ救いようのない馬鹿だ、以外の感想を持つのは不可能で、これは彼がそう演技したからではなく、脚本における造形に失敗したから、という理由しかない。

 

手術を辞めなさい、と言う以上、そこには、観客が真っ二つに割れるだけのストーリー的な説得力が必要で、それをテレビドラマで可能とするには日本の脚本陣では厳しい。アメリカくらいの力がなくては。

 

オーナーと医者の葛藤は、アメリカの医療ドラマにはよく登場するシチュエーションだが、参考になるのは HOUSE か。卓越した技術ゆえに、ルール違反も法律違反もお目こぼしがされるという設定はドクターXとは若干異なるが、オーナーが止めなさいと命令する理由と、それに造反してでも敢行するドラマのクライマックスを作る上で、役立つのは間違いあるまい。

 

いずれにしろ、5話目くらいで、俳優陣も物語における役どころと掴むであろうから、そこからが非常に楽しみだし、二話目以降も、制作陣の葛藤や試行錯誤などが見られるわけで、これは楽しみにしていいドラマのはずだ。

 

雰囲気的には、このドラマを下支えする役割が、あと一人足りない気がする。それが誰であるか。