デジタル通貨、急ぐ中国=経済勢力図に影響も

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現在の経済変革について述べるならば、果たして通貨は今後も存在するのか、それとも新しい時代の到来によって廃れるものか、という点がある。もちろん、現在の紙幣や貨幣が使われなくなる時代も必ず到来する。だが、問題はいつかである。

 

通貨は信用によって成り立つ。だから、基本的に国家が通貨を発行する必要はない。商店街でしか使用できない通貨だってあるし、ポイントだって多くの人にとっては通貨のようなものだ。

 

これが意味するのは通貨にはそれが通用する地域が限定されているという事だ。その地域は、信用を与えた存在の効力が及ぶ範囲と等しい。よって通貨は普通は国家のそれに等しい。そこで国家間で通商を行う場合、互いに相手の地域の通貨を用意しなければならない。払う通貨を払う側に合わせる必要がある。日本のものを買いたければ円で払う必要がある。中国のものを買いたければ元で払う必要がある。

 

ここで100の国と通商しようとすると原理的には100の通貨を用意しなければならない。ここで基軸通貨の必要性が高まる。どれでもドルで払えるなら便利だ。

 

だが、便利なら、国内も米ドルにすればいいではないかと考えるのは合理的だが、その場合は、ドル紙幣をアメリカから入手しなければならない。これは国家として、通貨の発行権に係わる政策が取れない。それどころか、通貨の発行元から圧力を受けた場合に何も反撃するオプションがない、放棄したのと等しい。

 

それでは独立国と呼べないという訳で、殆どの独立国は通貨発行権を自国で保持しているはずである。しかし日本で流通している紙幣は日本銀行券であって、日本政府券ではない。政府紙幣ではなく中央銀行を間に挟むのは、たいていの政府紙幣は政治家が乱発してインフレを招くからである。今の日本がインフレを目指すのに政府紙幣を発行しないのは、重篤なリスクがあるからだろう。それはハイパーインフレであって、インフレならいいが、たくさんだと経済を破壊すると考えられている。この辺りは血圧と同じと考えて差し支えない。

 

中国が、デジタル通貨の導入を急ぐのは、次の基軸通貨がデジタル通貨になる可能性を払拭できないからだと思うが、デジタル通貨は始まったばかりだから、どのような落とし穴がるか分からない。世界中に散らばるハッカーたちが優秀なのに加えて、それどころではないAIがデジタル通貨の取引に参加した時、それがどのような事をもたらすか読み切れる人はいない。

 

少しでも早く参加した方が勝者になる可能性もあるし、バブル崩壊と同様の大惨事を世界に引き起こすかも知れないし、バズワードで終わるかも知れない。だが、中国が一帯一路という巨大な経済圏?を構築し、そこにデジタル通貨を流通させようとしているのは確からしいと思われる。

 

そして21世紀の覇権争いは、強靭で強大な市場を手中に収めた方が勝利する。もし市場を重視するなら Brexit はユーロという強大な市場から離脱するという選択であって悪手に見える。彼らの政治的主導権を自分たちでコントロールしたいという欲望によって、ユーロではなくアメリカという市場にフォーカスしたいのだと考えたのだとしたら、果たして、本当にドルはユーロという市場よりも優先すべきものか、それとも沈みゆく船からいち早く降りた慧眼となるだろうか。

 

結局、経済とは市場の奪い合いであって、強靭で大きな市場の存在は豊饒な大地に例えられる。そんな市場をどのように見つけるか、または育成するかが重要だ。中国のデジタル通貨重視は、新しい市場の創設という考えからすれば正しく見える。デジタル通貨の市場という観点からすれば、中国はアメリカを凌駕する。

 

しかし何事も一番乗りしたものは、初めてという栄光を得られる変わりに常に大きなリスクも抱える。何事も一番乗りが世界を制覇するのではない。1番グループに入っておく必要はあるが、先頭を走る必要は必ずしもではない。

 

巨大な市場が生まれれば必ず無法者が外敵として到来する。インターネットの世界で起きた事件はデジタル通貨でも必ず起きる。ブロックチェーンの原理は信用に値すると言われるが、しかし奪われたデジタル通貨が戻ってきたという話は聞かない。自分たちは竜のうろこの鎧とクリスタルの剣で防備していると思っているが、蓑とススキの葉を手に突き進んでいるだけかも知れない。

 

でも誰かが一番目に踏まなければ地雷は破裂しないものである。そして地雷を恐れて踏み込まなければずうっと荒野のままである。

 

さて、中国のこの動きはリスクに見合うだけの成功を彼らにもたらすか、それとも、世界のために盛大な失敗を経験させ、より強靭な人類の未来に貢献するか。おっと、これはどちらにしても失うものは小さい。成功すればたくさんの富を失敗すれば大きな名誉を得る。これはどちらに転んでもウィンウィンな賭けだ。

 

静観しているだけではこの国にもあの国にも勝てない。一番グループにいるのか、それとも二番手グループでよしとするのか、それとも競争を棄権するのか。中国とfacebookがデジタル通貨で争う未来は素晴らしい。