ウルトラマンのビジュアル公開 / 庵野秀明コメント

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 ゴジラ東日本大震災を描き切った庵野秀明が、次に、恐らく一番大好きなウルトラマンの脚本を書いた。監督でないので、どこまで作品にタッチするかは知らないけれど、どのようなウルトラマンを描くかは興味ある。

 

彼の多彩さと、貪欲にアニメーション、特撮などを取り込んできた歴史を考えると、良くも悪くもひとつの結実がエバンゲリオンであって、習作としてのトップをねらえ宮崎駿を超えるためのナディアから、ブラッシュアップの劇場版、寄り道としてのシンゴジラ、そして、その先の今作となる。

 

当然、今後は科学特捜隊の装備なども紹介されるはずで、ウルトラマンはこれらの装備が作品毎にとても魅力的なので実はがっかりするのではないかという懸念さえある。ここだけは完全に新規に起こして欲しいと思うわけである。

 

それらのデザインを決めるのは作品の世界観であって、どのあたりに設定するかはとても重要だ。ウルトラマンというコンテンツのポテンシャルはとても高いので、シリアスなSFから子供向けの特撮にまで、どのような需要にも答えられるはずである。その辺はルパン3世と同様な部分がある。

 

だから今回の作品がウルトラマンの世界観をあくまで円谷プロ版をベースに地球を守るという風に描くのか、それとも全く異なる使い方をするのか、例えば、ウルトラマンが侵略者であっっても構わない、そのリアリティの構築が楽しみだ。

 

すると、リアリティに重要なのは人間の生活の捉え方という事になる。これはアメリカ版ゴジラなどでも同様であるが、現在の我々の深刻な状況、化石燃料使用に伴う異常気象、エネルギー枯渇、民主主義体制の政治的混乱、イスラム教勢力の台頭など、50年前とは全く異なる新しい環境が反映されなければならないはずで、どのように我々の生活を描くかが重要だ。近未来でもっと悲惨な状況を描く事はエヴァンゲリオンでもうやった、だからそうではない何かになるだろう。

 

ゴジラは政治的、官僚的な側面から攻めた。科学特捜隊も恐らく国家機関、または国際連合系の組織であるはずだから、政治的な課題は必要のはずだ。でも同じ事はしないと思うから、別の視点が必要になる。それをどこにおくのか、それを担うのは誰か、または何か。AIの活躍だって不可能じゃない。

 

怪獣にしても、異星人侵略系と地球由来の怪獣、二通りが考えられる。地球由来はゴジラでやったので、異星人が中心となるのだろうか。それが宇宙怪獣、および地球怪獣を率いて地球を攻めるとか、はたまた地球怪獣を密猟するみたいな話だってないわけじゃない。

 

70年代の造形はケムール人の成田亨のみならず、カゲスターの野口竜キルギス星人の池谷仙克など今も多くの人にインスピレーションを与え、リブートされるべき創造性に溢れている。そこには今の自分たちには想像もできない原点があるかもしれない。

 

だからウルトラマンだけをオマージュするはずがなく、どの怪獣を登場させようか、のみならず、そこに自分のデザインしたものも登場させたいくらいの野望は持っていると空想する。

 

本作用のウルトラマンのデザインも、このデザインが作品全体を支配するはずであって、忠実に再現するといいながら、彼のオリジナルが入り込まないはずがない。最初に見たインプレッションはとても重要と思うのである。

 

いずれにしろ、怪獣にリアリティさえあれば全ては動き出す。ウルトラマンの難しさはゴジラと違って主人公が自分の正体を意識している点にある。彼がウルトラマンであるという自覚をもちつつ、合理的な行動をどう取るのか、つまり、なんのために地球にいるのか、なぜ怪獣を戦うのかをどう説明するか、はたまた悩むのか、そういう点は避けられず、しかし、そういう心理的なドラマは、たぶん、上手じゃない。

 

日常に怪獣がいる世界を現在のリアリティで描くなら、これは面白いと思う。まずは:||(リピート)を片付けてから待機しよう。

 

過去の経験から言って、もちろん、こんな予想など消し飛ぶようなover writeされる作品なのである。