5G問題、欧州に踏み絵 米中攻防の板挟みに

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Huawei の 5Gデバイスは、世界で最も先行して開発されたものであるから、開発に遅れているアメリカとしてはどうしても時間が必要だ。その時に、安全保障への懸念を理由に採用を遅らせる行為はアメリカの国益には適っている。

 

しかし、アメリカの開発の遅れが、別の標準規格を作りたいという、VHSに対するベータのような戦略から来るものらしいので、多くの国が困っている。5Gに対してアメリカの産業界はどうやらイニシアチブを取れないようだ。

 

すると、それ以外の国が中心になるはずだが、それがノキアフィンランド)、エリクソンスウェーデン)、サムソン(韓国)、ファーウェイ(中国)になるらしい。この中で Huawei が圧倒的に先頭を走っている。

 

通信速度は携帯電話に付随する技術として向上してきた。

  1. 1980年 - 1G(2.4 kb.s)アナログ方式 音声のみ
  2. 1990年 - 2G(64 kb.s)デジタル方式 小さな写真
  3. 2003年 - 3G(2 mb.s)インターネット接続
  4. 2009年 - 4G(100 mb.s)動画、4.5G(1 gb.s)
  5. 2019年 - 5G(10 gb.s)通常のデスクトップを超える環境

 

伝送速度の向上はサービスの量、質の変化を伴う。その最終回答は現在は動画である。向上する程よりきれいになる。4K、8Kも送れるから実現可能なのである。実現可能とはこの場合は採算が取れるという意味である。

 

4Gがこれまで海底にいてボンベで息をするように動画を楽しんでいたとすれば、5Gは陸に上がって楽しめるようなものだ。進化的に言えば、両棲類から爬虫類に変わったような感じか。

 

速度の向上は単に送れる量の増加ではない。画像の色彩も圧倒的になる。今のアニメの色調の美しさと昭和のアニメの色合いの違いといえば分かりやすいか。

 

つまり、速度の向上は決してコンテンツの向上を約束するものではないが、少なくとも、これまで出来なかった表現ができるようになると言う事である。それを採算可能な範囲で行えるという事だ。

 

それが映像を超える何か新しい表現を生み出すかも知れない。これまで動かないのが当然だったものを動かしてもいいという事になる可能性がある。当然だが5Gに併せて受信側のデバイス、つまりスマートフォンもスペックが向上しなければならない。常に通信速度がスマートフォンにとってのボトルネックであった。そういう時代ではなくなるという事か。

 

5Gがもたらすのはそれだけではない。通信できるデバイスの数が階乗的に増加しても耐えられるという事でもある。IoTで使い捨てするようにIPアドレスを割り当てても十分に足りるという話だ。だからあらゆるものがインターネットと接続できるようにしようという話が起きるのだが、それがどう世界を変えるかはよく知らない。環境が変わる事で何かが生まれるだろう、というのが大方の人の立場である。

 

世界中でスマートフォンのない生活がもう考えられなくなった以上、通信は世界的なインフラである。それを幾つかの国家は制限しようとして、例えばトルコは wikipedia を禁止したが裁判所はそれを憲法違反と判決した。だが幾つかの国では今も厳重な監視と禁止の中にある。

 

通信は必ずワールドワイドに拡大するから、政府に不都合な真実を遮断しようとするのは当然起きる話で、それを防ぎたければ民主主義化するしかない。だが民主主義が必ずしも相応しい統治システムではない地域においては、それ以外の理由でそれを妥当なものとしなければならない。

 

当然だがインターネットの世界にあるものは「不都合な真実」だけではなく、それ所か、その多くは「都合の良い嘘」「都合よく信じられる嘘」である。そういうものに晒された世代は否応なく真実とは何かというリテラシーを身に付ける。

 

この壮大な社会実験は人間に試されている新しい知覚と思われるが、いずれにしろ、世界インフラである以上、そこを制覇する事は世界の支配と同じ意味になる。血液を止めるスイッチを手にした人と本当の友人になれるか、という話もある。

 

Huawei のデバイスバックドアがあるかどうかは知らない。そういう懸念を先ず持ったのは Windows だったのは間違いなく、これが最初の話ではない。もし Windowsアメリカ政府に都合のよいバックドアがあれば、いざというとき国防はどうなるか、hは世界中が当然抱いた懸念であった。

 

しかし、Windowsアメリカの駆逐艦を停止させたり、世界中でウィルスに襲われたりと、どうやらバックドア以前にまず心配すべきことがある、という評価が定まるにつれて、その懸念はうやむやになった。これが CIA の世界戦略なら大したものである(陰謀論)。

 

もし Windows におけるバックドアの発動が明らかになれば、それはMicrosoft のみならずアメリカのソフトウェア製品群そのものが世界から忌避される理由になる。全てのアメリカ製品は捨てざるえない。それは多大な被害であるが、最も被害を受けるのがアメリカである。

 

そんなリスクを負ってまでそのような機能を入れるのか、どういう場合にそんなものを使うのかと言えば、それ以後の事など考えられない場合しかなく、ならばそれは人類滅亡級の戦争しかない。そういう状況でも相手を出し抜く手段が欲しいというのは狂気でしかなく、どれほどの愛国心があろうと人類滅亡をトレードオフとするそれに経済界の人たちが同調するとは思えない。

 

同様に huawei の製品が世界中を席巻したとして、バックドアが明白になった時点で中国製品は一つ残らず廃棄するしかない。その上で、それが決定的な時に使用できるならまだしも、そうではない平和裡な時期に存在がばれたりしたら、もうビジネスを語る場合ではない。

 

それでも中国という市場の強さで人々が他を選択できない、というような状況はあるだろうか。もしあるならバックドアがあろうが、なかろうが、中国は困りはしないのではないか。

 

こういう戦略シミュレーションの専門家ではないが、バックドアを入れるにしろ、入れないにしろ、今時、どこかの社長の思想だの思い込みだけで決定するのは日本企業くらいであろう。世界中の企業は、自分たちの戦略について、きちんとした戦略シミュレーションを通して、評価しているはずだ。

 

乃ちシミュレーションをするとは、前提条件を色々と変えながらその変化点を幾つも観察するという事である。未来はひとつではない、とは前提条件は常に流動しているという意味である。

 

だからといって通信インフラを中国系企業に独占されるのは恐らく、多くの不信感をぬぐえないのは事実である。そんな馬鹿な機能を入れるなど妥当な戦略ではないと多くの国々が判断するなら、逆に入れておく事は十分に戦略的になる。

 

いずれにしろサービスインは目前である。そして huawei しか選択肢がないなら、採用せざるえない。少なくとも幾つかのメーカのハイブリッドで構築する事になるだろう。彼らが注視したいのは5G の速さではない。その速度によって社会がどのように変化してゆくか、コンテンツの行方であろう。

 

通信の秘匿というのはとても重要な権利であるが、リクルートを見れば分かるように、多くの秘密は金になる。それはクレオパトラの時代から変わらない。この世界で暗号を解読している人間は、解読してますなどと表明しない。知りつつも知らない振りをする。まるで偶然、上手くいったというように振りをするものである。

 

もし未来から来た人間がいたら、世界一の億万長者を目指すはずがない。たまたま成功した、くらいな利益を堅実に重ねるはずである。

 

何事も切り札は一度しか使えない。人生においてたった一度。そういうバックドアHuawei はどんな思いを託すというのか。