この電子マネー何のため?コンビニ店員、客を30分説得

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説得を繰り返した事が表彰されるのは喜ばしい事だ。しかし、驚くべきは30分も必要だったことである。人が騙されるのは仕方がない。これは誰だって陥る。交渉の専門家でさえ、計画に沿って時間を掛ければころりなどいちころである。

 

それでも長く時間をかけると、何度も沸き上がる疑いを確実に潰してゆかなければならない。例えば一度きりの完全犯罪なら可能であろうが、繰り返す度にリスクは蓄積される。だからシリアルキラーが長年、犯罪を続け得た事に人は驚くのであるが、もし良識ある人が数人で終えていたら、恐らく歴史が真理を洗い流したであろう事は確実である。実際に、そういう未解決事件は、数多くあるはずである。

 

だから最初の疑り深さが重要となるのだが、もし疑り深ければ最初から騙されにくいだろうと思うのは簡単である。すると、払う方はころっと騙され、説得には30分も必要だった理由が分からない。

 

そりゃ心理分析してゆけば、若輩者がとか女性がとか色々あるのだろうが、ひとつには一度決めた事だからと言うのもあるだろう。人間、一度決めた事はやりぬく、それを美徳としてきたのだ。だから、この30分もまた美徳であったはずなのである。

 

これだけ詐欺事件が言われている時代に、おれおれ詐欺を知らないとは考えられない。この人だってよく聞くおれおれ詐欺なら騙される事なくやり過ごしただろうと思う。

 

だが、コンピューターウイルスならどうか。いきなりコンピュータをロックして隔離してしまうランサムウェア、コンピュータの破損を装い修復の手助けをしようとするサポート詐欺、中には、Windows SyskeyやLock my pc を利用してログインできなくするサポート詐欺もある。良く知らない人が知らないまま騙される事を笑える人は単に帽子の下が幸せなだけである。

 

何かを守るために暗号という技術がある。これを利用すれば、所有者自身からその何かを隔離できる。暗号を逆用して取り上げてしまう。まるでロボコップによる一種の誘拐みたいなものである。

 

そういう被害の中には「振り込む」以外の手段がないものもある。世界の巨大企業GAFAといった企業もこれらの詐欺には後手後手である。特に2020年の自粛の時、家でPCを使う機会が増加する時、詐欺師からすれば、待ってました、鴨さんいらっしゃいな状態の好機である。

 

もちろん、混乱に乗じて全世界の国家情報局の連中も跳梁跋扈している。本質を言えば、世界的な危機の状況で社会に敵対するような詐欺師は、強力に追跡し塵のように処分すべきだが、もちろん社会インフラにその余力はない。

 

だから個々人の注意が必要となるのだが、それで防ぎきれるものでもない。このニュースも詐欺の振り込みを防ぐ事には成功した。だが、コンピュータウィルスによって恐らく使えなくなったコンピュータがどうなったかの記事はない。取材さえしていないように思われる。そりゃインストールしなおせば詐欺師の財源は遮断できるが、それでは被害がなかったとは言えない。それも自己責任で終わらせられるなら、何もかも幸せである。

 

この30分というのがどういう時間だったのかは知らない。どういう説得だったのかも知らない。だが、30分も必要だったのなら、次も必ず騙される。気付かない事は誰にでもある。しかし勘が良ければ指摘されて1秒で理解できる類のものだ。だから30分も気づかなかったとは考えにくいから、理解するのに30分が必要だったと解釈するのが妥当であろう。

 

しかし、気付いていても払うしかなかった、HDDには大切な何かがある可能性も捨てきれない。それだけ大切なものならバックアップを取っておくべきなのだが、このバックアップという考え方させ、人によっては説明するのに一苦労なのである。大切なデータを一度も消した事がない人だけが石を投げなさいである。

 

思えば、この国はコロナウイルス感染被害の報告をエクセルに入力した後に、手書きでFAXで送らなければならないようなインフラで維持してきたそうである。これじゃまずいと、いま急速に作業の見直しが図られているそうである。

 

官僚たちが仕事が大変で押しつぶされそうと言っているが、仕事をひとつひとつ検証してみれば、例えば手書きでないといけないとか、下書きを承認してもらった後に、清書しなければならないとか沢山ありそうである。しかも、正副の2セットが必要なのです、とか堂々と主張しそうなのである。

 

そういうのを時間が足りないとは言わない。そしてそこから見直しを図ってもたかが知れている。更には、こんな状況でなければ改善できない内容など所詮は付け焼刃である。つまり、改善した所で、例えば韓国の10年前とやっと同等などという事が十分に起きえるのである。

 

逆に考えれば38式歩兵銃で戦い抜いた伝統のように、FAX全盛期に完成したシステムを今も使いまわしている、と言うべきであろう。もちろん、向こうの言い分も聞かなければならない。全医院を対象にしたら今の所FAXでやるしかない。電子メールが使えない医者などごまんといる。

 

ならばハイブリッドで構築すればいいではないか、中国の先富論よろしく先進できる所から参加してゆけばいいではないか。だが、それだとFAXを受けてシステムに登録する部分の負担が発生する。平時にそんな無駄な予算は、やりたくても上が許可しない。やるなら日本中の保健所が対象である。どれだけあると思っているのか。云々。

 

そう、やらない言い訳など幾らでも出るが、丁寧に聞けば、そのどれもに説得力があるのである。そこは腐っても役人なのである(褒め言葉)。だれもが自分の陣地を守って戦う。その結果、各個撃破の対象となるとしても、陣地にいる兵隊たちがどうこう出来る話ではない。どれだけ俯瞰の目をもっていようと、末端で出来る事はたかが知れている。

 

各自が持ち場を一生懸命にやったひとつの成果である。その成果と全体的な問題が残っている事は分離しておかなければなるまい。そしてこうしたひとつひとつの総合計の先に問題の解決が待っていない事も重要である。これは被害を最小限にとどめる有効で堅実な方法である。だが、それはもっといい方法が見つかるまでの時間稼ぎでもある。ワクチンが出来るまでの対処療法に似ている。

 

今回は説得されたからまだいい。もう少しすれば知恵を付けて、簡単に売る店を探して何店舗も回る知恵者が登場するに決まっているのである。詐欺師がそうアドバイスするに決まっているのである。対策あれば抜け道ありはどこかの国の成句ではなかったか。