ゴーン会長が日産・ルノーの合併を検討 FT報道

www.nikkei.com

 

東京地検特捜部は極めて政治的で、ある勢力への一方的な肩入れとして動くことが多い印象がある。特にマスコミで話題となるような事件では、どれもが受益者の姿が見え隠れする。そういう陰謀論が起きるほど、東京地検特捜部の事件は、話題性が高いだけで、社会的な意義には乏しい。

 

それでも、これだけの大事件で紙面やニュースが賑わえば、どさくさ紛れが起きるのは当然であって、政策担当者にはニヤリとした連中もいるだろうし、自分の不運を呪うものもいるだろう。いずれにせよ、日本政府が世論を誘導するために日産をフランスに売り飛ばしたという構図は考えたくない。

 

本事件は、ゴーン氏の不正というよりも、日産の内乱というべきであろう。その本質にルノーとの関係にあるのは間違いなく、それはフランスとの関係でもある。日産というブランドを如何に守るか、独自性の死守がその根底にあるのだと聞く。

 

だとすれば、ゴーン氏が日産をルノーを完全支配しようとする流れは真実らしく、それに諾とできない人々が立ち上がった。そういうシナリオはまるで EU から離脱しようとする Brexit を連想させる。

 

一方で、暗殺以前に韓国併合閣議決定はなされていたとはいえ、伊藤博文の暗殺が、消極論、反対論の重鎮を消したため、計画に過ぎなかったものを実行に移す契機になった、そういう歴史も連想する。

 

ゴーン氏が日産を取り込もうとしたのか、それとも重要な防波堤として存在していたのか。それは知らないが日産が自らの手で防御壁を壊してしまった可能性もある。数か月後に日産が仏企業になっても驚きはしない。

 

反乱、というより謀反という意味では、ゴーン氏はカエサルを思い出したかもしれない。この東京発のニュースが世界中のニュースに取り上げられた。フランスの労働者は恥ずべき行為とゴーン氏を非難していた。

 

日産を取り込みたいフランス政府が内心でどう考えているかは知らない。だが、当初の目論見通りをそのまま進める事も考えられる。日産のすべてを手中に収めるのがルノーにとって最大の利益である、この考えはとても自然だ。

 

ルノーは日産の株式を43%を、日産はルノーの15%を保有する。2017年は日産580万台、ルノー370万台。売上高は日産12兆円、ルノー8兆円。営業利益、日産6800億円、ルノー5100億円。株式の保有率は別にすればグループを牽引するのが日産であることは間違いない。

 

両社の関係性は決別か協力か、その二つしか残っていないようにも見える。まさか三菱が両社のアライアンスから抜けたくて起こした策略などありうるだろうか。ならばその背景に三菱グループが見え隠れするはずである。

 

日産の倒産危機に手の差し伸べたのはルノーであった。ゴーン氏による改革により、つまり外圧によって日産は初めて回復を成し遂げたのである。彼は日産中興の祖であった。

 

その蜜月が終わるのに10年程度の時間は必要だったのだろうか。不満がそれほど長く蓄積したのだろうか。我々の知らないところで、明智光秀のような思いをした人がいたのだろうか。

 

この事件に将来への明確なビジョンがあるようにも見えない。もちろん、何年も前から計画していたであろうし、根回しも万端であったろうから、彼らは真意をおくびにも出さないだろう。

 

日産とより強固な関係を持ちたかったルノーの思惑と、独立性を譲れなかった日産の間で、フランス政府まで加わって、ゴーン氏が何をしようとしていたのか。その真意を見抜こうとしたいたのだとしたら、彼が実際は何を考えたいたのか、腹蔵なく話しあえる関係は築けなかったという意味になる。

 

ゴーン氏が日産を単なる金づると見ていたようには感じられない。彼はとても日産を気に入っていた、好いていたように思う。ゆえにこれは悲しみの不協和音と聞こえる。

 

彼の戦略がどのようなものであったかを知るはずもないが、ゴーン氏の将来はどうなるのだろうか。失意のなか影響力を失って引退してゆくのか、それとも復讐の鬼と化して再来日するのか。鬼神となって戻ってきた時、日産がどうなるのかには興味ある。

 

もし日産がルノー配下に置かれたとき、国内の日産関連企業をどれだけの激震が襲うか、そこに注視している人も多いだろう。どれだけの変化に見舞われるか、それが利益をもたらす変化か、不利益をもたらすか。先進国の改革は今や不利益しかありえない。

 

この変化は、逆に言えば、これまでゴーン氏が守ってきたものを失う変化である。今後の日産の行動はそういう性質のものが暫く続くはずである。ゴーン氏が禁止していたものが復活し、彼が守ってきたものが失われてゆく。そういう歴史になるはずである。

 

現在の世界情勢は先進各国がもがいている状況にある。それは別の見方をすれば、どの国も自らずっこけている最中という事である。

 

イギリスは BREXIT で没落するだろう。フランスは自らの改革に行き詰まるだろう。ドイツは右派勢力の台頭から逃れらない。ロシアはプーチン頼りであって、その後は極めて危うい。中東の混乱はあらゆる場所に波及しそうである。アメリカはトランプによって内在する問題を直視せざる得ない状況に追い込まれた。もう知らないふりをするわけにはいかない。中国は大国から王国へと転換した。権威を求める政権は、膨張した後でどのような縮退を余儀なくされるか。その先行きは決して安穏ではない。

 

そのような状況で、虎視眈々と飛び出す瞬間を待っている国がある。そこで上手くすれば次の100年は世界の中心で富を築く。その国に日本がなることはない。残念ながらこの国もみずからずっこける側である。