外務省、在ハイチ日本国大使館を一時閉館 ドミニカ共和国に臨時事務所

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治安の悪化は武装ギャングの台頭だそうである。国軍を超える麻薬カルテルというものを南米ではよく耳にするのだが、そんな事があるのかと最初に思う。しかし、それらの勢力を中世の地方の豪族と理解すれば、日本でもそう遠い話ではない。将門の乱など記憶に新しい。

 

これの意味する所は、国家の収入としての税収よりも、ギャングが得る資金の方が大きい事を意味する。かつ、それらから税を徴収できない事でもある。警察も税務も強力な国の執行の裏付けが求められる。

 

ギャングは国家運営の興味を持たないから、略奪等で都市部から略奪する。つまり資産のある場所への侵入を繰り返すフン族と同類である。歴史次第ではそこから王が誕生するはずである。しかし、多くの市民の安寧が得られない場合は凡そ短命で終焉するはずである。

 

なぜ独立国がそのような状況になったかを紐解くには、現状を嘆くだけでは足りないらしい。その詳細は以下に詳しい。

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ハイチはイスパニョーラ島にありドミニカの西に位置する。ドミニカはまだ安定しており、ハイチとの比較、何がふたつの国の運命を分けたかは必要な研究と思われる。

 

ヨーロッパによる植民地政策の傷跡を抱えていない地域は世界に皆無に等しく、混乱を辿れば全てヨーロッパ人に辿り着く。しかも、その歴史的現実と向き合っても、彼らは手を差し伸べたりはしない。

 

ガザ・ジェノサイドに対するドイツの態度からもそれは明らかである。そういう働きを続けていれば、間違いなく世界はヨーロッパへの不信感で蔓延する。その時期はその地域がある程度の経済力を持った時になる。もう黙っていないぞという瞬間である。

 

この記事によれば、タヒチはフランスの植民地で1804年に独立を果たす。しかし直ぐに国は分裂し1820に再統一される。所がフランスはその独立を認める変わりとして賠償金を要求する。一時的でもナチスに支配されて本当にざまみろと思う。

 

決して安定した発展ではなかったものの、試行錯誤を繰り返しながら、1915~1934までアメリカの軍政支配を受けながらも南米で民主主義を目指していた。

 

1957クーデター、1958独裁者誕生。パパドグ家の独裁が1986まで続く。2010ハイチ地震、2017国連軍が撤退、そして治安が悪化する。2024ギャングが刑務所を襲撃し400人脱獄。非常事態宣言発令。

 

どうやら国政は六つのファミリーで独占され特権階級を構成している。それは市民が半奴隷状態にあるという意味で、基本的人権があろうと、経済的奴隷では国力が失われる。多分、活力が有機的に繋がらない。

 

独占している支配層も大統領が意味不明に暗殺をされるくらいなのでギャングを支配下に於いている訳ではない。つまり彼/彼女らを交渉相手にしないと国家運営できない状況である。ハイチ地震の支援金も殆どがこの一族の貯金箱に入ったという。

 

治安の悪化は階級闘争の始まりと見るべきであるが、古代なら弓矢や鉄の刀程度であったものが、現在では銃火器であり、この優れた工業品を誰がギャングに売ったのか、という話がある。それがなぜ市民は入手できないのかという話でもある。

 

武装には防衛が求められる。それは武装を必要とする。その上で初めて産業の発達を目指す事ができる、または産業の発達を維持し略奪から防衛する事で世界は変わってゆく。

 

およそ特権階級は追放されなければならないのだろう。特権階級で社会を上手く機能させてきた王の方が珍しいのだろう。中國であれローマであれ多くの賢帝と同じくらいの愚帝が誕生している。

 

王政が説得力を失って以来、人心を支配するのに共産主義ほど便利なものはない。その結果がポルポトスターリンである。彼らの最大の関心はクーデターの絶滅であるから、あまり明るい未来は来ない。独裁制を倒すのは難しい。独裁制の次が独裁制でない事はもっと難しい。

 

ギャングが跋扈するには相当の理由がある。そこに非合法でも経済の蓄積が起きているという事は、そこには産業が成立しているという意味だ。凡そアメリカが必要としているものは麻薬である。

 

巨大な供給地であるコロンビアからハイチやドミニカを経由して入り込んでゆく。ビバ・アメリカ。アメリカへと向かう巨大なロジスティクが南米に構築されている。物流こそ人類の力の源泉である。

 

逆に言えば巨大な消費地であるアメリカの隣国であっても、麻薬以外に売る物がない、という話でもある。貧弱な生産物しかないのには何か理由がある筈である。麻薬産業は第一次産業に属する。その最大効率は帝国主義であり植民地化である。

 

それが南米で起きている。産業は常にコストパフォーマンスを要求する。よって時代を超え地域を超え収斂進化の様相を示す。

 

各地域の発展は古代、中世、近代という順を追って進んできた。どの場所でも王政が起きて、法を持っていたのは偶然ではあるまい。そしてヨーロッパがその地域で多くの争いをしながらも自由と法治に辿り着く。と同時に帆船の発展を見出す。

 

どの地域が最初に世界に向けて進み出たか、その違いが世界に様々な禍根を残す事になる。様々な外因で略奪された地域が今も発展を阻害されているのには理由がある。その中のひとつに王政を破壊された事もあるだろう。またその地域に存在していた経済に基づく道徳性、共同体を破壊された事もあるだろう。

 

伝統を失うとなぜ活力を失うか、人々の共同性を失い、単なる競争に陥るからか、それは常に信用から関係性を築かなければならない壁の高さに起因するのか。

 

植民地支配がそれぞれの地域にもたらした支配層の破壊、産業の破壊、神話の破壊、人心の破壊は、撤退する程度では自然修復しなかった。大地の五億年に書かれている土の歴史にもよく似る。

 

土壌を破壊された地域を森林が再生する、農耕可能な肥沃な土に戻すにはどれだけの時間が必要か、それがどのような手順で進んでゆくか。どのような化学変化に基づくものか。土とは巨大な化学工場なのである。国家もまた土壌なのである。

 

西洋がもたらした世界の混乱は現在も進行中である。其れに対して我々の学問はまだまだ弱く未開である。いずれにしろ、学問以外にこれを修復してゆく術がない、と言うのが結論として掲げる。