韓国議長「天皇の直接謝罪で慰安婦問題は解決できる」

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民主主義国家における政治家の発言は、たぶんに内政的であるし、その動機を推測すれば選挙を睨んでのものである。

 

よって、韓国に限らず、どの国家でもポピュリズム(大衆的、衆愚的)な側面は拭い切れないのであるが、当然、それは国民の民度と深い相関関係を示す。

 

しかし、外交は相手がいての話なので、その発言が国内では最大の賛辞をもって迎え入れられるものが、相手国からは最大の憤怒をもって迎えられる事も起きうる。本件はその最大級のものだろう。

 

例えば日本は北方領土について完全に口をつぐんだ、「固有の領土」も「取り戻す」という用語の完全に沈黙に沈んだ。「平和条約」にとって代わられても粛々と従う。国民の多くは政府に起死回生の手があると信じているから黙ったのである。

 

これをロシアが見てどのように受け取るかは別問題である。僕がプーチンならちょろいとしか思わないが、日本の外交官たちがどう思っているかは知らない。

 

一方で韓国の政治家がこのような発言をすれば、かつては国体のためにミサイルの代わりとなる志願者が頻発した国である。かつてはポツダム宣言の交渉において Subject to という訳語をめぐって政権が倒れそうになった国である。

 

これまでの経緯から言えば、例え天皇が土下座して謝罪しようがこの問題は解決しない。そんな事は互いに分かりきっている。だから、この発言は国内向けのリップサービスでなければ意味がない。

 

どのような国にもタブーもあれば、逆鱗もある。時には暗殺をもって答える場合さえある。それを隣国である韓国の政治家が発言した。

 

ここまでお互いの理解が足りてないのか、という絶望がひとつ、ここまで舐められるほど我が国の国力は低下したのか、という感慨がひとつ。我が国は長く全員が貧しい中にいたので忘れていたが、多くの国では、没落した人には手のひらを返した態度に出られるものである。あとは、実は日本のことなど何も考えていない、これもひとつ。

 

レーダー照射以降、どうも韓国の態度がはっきりしてきたように見えるが、それがどういう動機によるものか、良く分からない。だが、あの問題とこの問題は密接どころが、表現が異なる全く同じものだと思う。ムン政権がどうして日本強硬論を採用したのか、そこがどうも理解できない。北朝鮮問題から日本を除外しようとしているのか、とも考えたが、どうも突発的なものと戦略的なものが混在していて理解しにくい。

 

韓国海軍によるレーダー照射は明らかに現場の末端で起きた事件である。それをした人たちの直接的な発言が聞けない以上、推測でしか話せないのだが、なぜ現場は、そのような決断をしたのか。そこが様々な憶測を呼んでいる。もしかしたら、担当者のうっかりだったのかも知れない。何かを隠さなければならないため、何かを守るための苦肉の策として取った行動だったのかも知れない。

 

どちらにしても、その現場の判断、行動に対して、韓国政府がとった行動は、問題を収める方向にはなく、より対立を煽る方向へと動いた。普通、こういう態度をとるのは、相手は引くよ、という読みが必要なはずであるが、その前の韓国大法院に対する日本の態度を見ても、引くとは考えられない。

 

韓国政府の態度は、日本の世論を炎上させようとする思惑があるのでない限り理解できない。それが韓国にとってどういう利点があるのか。日本の世論は温厚でありたいという人さえ巻き込もうとしているように見える。だから、一見、愚かに見える。

 

安倍ならなんと言われても全く腹立たしいという事はないが、そういう人でも天皇については別であろう。これを許容できる人は少ないはずだ。なぜこれだけ長く互いに批判し争ってきた関係なのに、その機微が分からないのか。

 

とすると、彼らはこれを外交的に解決する気はないという事になる。つまり、これは極めて強い内向的な話であって、彼らはこんな話が海外に出るとは思わなかったのではないか、と考えるのが妥当な気がする。これは政権と議会の対立問題に過ぎないのではないか。だが、それを海外のメディアに話しているので、この説に説得力はない。

 

歴代の大統領のほとんどが起訴される司法制度において、それを受け入れる国民性は理解が難しいし、それでも大統領になりたいと考える人が続々と登場する事が信じらないのも、当然だが、僕が韓国について何も知らないからだ。

 

どういう価値観を持ち、どういう政治的動機で国を動かそうとしているのか。そして国民と政治家との間に何かの乖離が存在するのではないか。でなければ、なぜ検察は権力を握った人々を次々と逮捕するのか。独裁制に対する牽制でもあるのだろうか。

 

いずれにしろ、今後も外交は民民第一とするしかない。政治ではこの混乱は解決できない。問題の幾つかは、当然だが、当事者たちが表舞台から退場するから起きたことではないか。今なら意味を持つ事案も、20年後には全く価値が失うだろう。その残り時間の少なさから今のうちにこのカードは使ってしまえと考えているのだとしても不思議はない。だが、そうだとしてもこの発言は幼稚に見える。その証拠に、韓国の官僚たちがきちんと否定しようとしている。

 

もちろん、わが国に他国の政治家の質を心配する余裕はない。先に倒れるのはこちらであっても何ら不思議はないからである。