イラン大統領、安倍首相に原油取引の再開要求 首脳会談

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安倍晋三がイラン問題に積極的に取り組んでいるのは意外であった。自ら調停役を買って出て、イランにまで行き、首脳会談まで行う。その行動力には違和感さえある。一体、どういう考えからか、というのが不思議なのである。

 

そういう意味では、安倍晋三という人はそう簡単に割り切っていい人ではない。イランの何にどんな深い思い入れがあるのか、よく分からない。

 

だが、アメリカとイランが対立する中、ヨーロッパも憂慮する中、日本も憂慮している中、行動をしている事は重要だ。イランとの関係は、勿論、石油を輸入する間に培った信頼関係に基づくのだろう。イランは親日国とも聞くし、イランとの取引をしたい企業は日本にも沢山あるはずだ。

 

中東の政治情勢は、簡単に言えばスンニ派シーア派の対立であるが、イスラム教の名のもとで今日起きている様々な騒乱は、早い話がキリスト教が1000年前に通過してきたものとよく似ている。

 

その基本的な考えは、神への信仰と異教徒への行動である。つまり、ヨーロッパ諸国が千年前に行われた十字軍が、神への信仰の証と位置付けたように、信仰を証明せよ、そのためには行動せよ、つまり異教徒をこの土地から追い出せ。

 

そういう歴史を通して、ヨーロッパはイスラム文化から多くの数学、科学、美術などを輸入した。それがその後の14世紀のルネサンスの肥料となり、新しい世界観が15世紀の大航海時代を生み、豊かな富による腐敗に対して16世紀の宗教改革が起き、17世紀の近代科学、民主主義という思想を生み、18世紀のフランス革命産業革命へと至る。この歴史を俯瞰すれば宗教が科学を生み出す道であった。

 

そういう時代変遷を通りながらもキリスト教圏には今も進化論を否定する人もいれば、キリスト=白人という考えの人もいる。当然、イスラム教圏にも同様の問題があるはずで今さら何を驚く話しだろう。ましてや仏教が平和的であるなど冗談であるし、20世紀の悲劇から逃れたユダヤ教徒が他民族を虐殺するまでに50年も必要なかったのである。

 

それでも、平和を希求する人々は宗教も民族も文化も関係なく存在するし、その平和というものが、他民族、他宗教を排除する事でもたらされると信じる人も居れば、そのような違いを超えて、みなで平和になろうではないか、と希求する人もいる。

 

日本はイランから多大な石油を輸入している。その経済的な強力さはとても長い。ひとつに日本が他国への干渉を嫌う方針を取っていたからであり、ふたつに強い経済大国だったからである。

 

また、注目すべきはイランの国家体制が戦前の日本とよく類似しており、国家元首、政治体制、軍勢力の関係性が非常に興味深い。日本の戦前の最大の課題はクーデターを抑え込む事にあって、それは世界中の多くの国が現実に直面している苦慮である。アウンサンスーチーでさえ国内で起きうるクーデターへの懸念の前では、ロヒンギャの人たちの命など構っている場合ではないのである。

 

日本人はイスラム教を知らない。当然だが、キリスト教も知らない。ユダヤ教も同じく。そもそも仏教でさえ優れた解釈により独自の発展をさせた国である。

 

コーランには「(9.5)多神教徒は見つけ次第殺し、または捕虜としなさい」とある。この場合、多神教徒にキリストやユダヤ教が含まれるかは知らない。しかし、一方でコーランには、「(9-6)多神教徒があなたに保護を求めてくれば、それを助けてあげなさい。」ともある。この言葉に従うならば、殺す前に必ず相手の意向を聞かなければならないはずとなる。

 

宗教は長い時間をかけて磨かれて発展してきた。世俗派もいれば原理派もいる。熱心な人もいれば、真面目でない信者もいる。神を死んだという信仰もあれば、神を信じない人もいる。無神論者はビーガンと相性がいいという話まである。その熱量はバラバラである。モーセが殺す事なかれと聞いた後も多くの人が殺されてきた。どうせ神のいう事など聞く気はない。または勝手に解釈すればいいくらいなのである。

 

当然だが、イラン問題が先鋭化するのはトランプが次の大統領を狙っているからであって、しかし、北朝鮮の脅威にさえ結局は妥協しそうな勢いである。そのアメリカが本当にイランと戦端を開くかは、誰にも分からない。トランプでさえ知らないはずである。すべては選挙戦の状況次第だ。CIAがトランプ再選のためにアメリカ国内でイラン人を使って核爆発を起こすというシナリオは決してドラマだけの話ではない。

 

いずれにしろ彼にとっても現在の最重要課題は大統領選であり、すべての政策はそのために行われる。そして、どんな行動もその決定は不透明である。彼は石橋を重機で破壊してでも安全策を取るはずである。一方で、必要なら綱渡りでもするはずである。

 

幸い強い支持率がある。だから、二期目もトランプとなった時、彼が何を目標として政治を動かすかは分からない。イランと戦争するかも知れないし、北朝鮮ともするかも知れない。中国との貿易戦争は終止するかも知れない。彼が無能なら、ひたすら自分の資産を増やすための政策を実行するだろうし、米史上、最高の大統領になる可能性だってある。

 

イランに対して日本は出来る事が少ない。本当は石油を安く輸入できるならそれが一番いい。だが、中国でさえ、それは行っていない。

 

一方でドイツはアメリカに制裁されようとロシアとの天然ガスパイプラインを凍結する気はない。そしてドイツに何か強い制裁が課されたら、もしかしたらEUはイランから石油を輸入するかもしれない。たぶんないけど中東情勢がアメリカ vs EU+ロシアという構図も0ではない。

 

日本はどちらとも仲良くしたい。と同時に、どちらからも総スカンを食うような真似はしたくない。まさかコウモリかという気もしないではないが、コウモリにはコウモリの言い分がある。本心から「ツマラナイカラヤメロトイヒ」いたいのである。

 

イランは親日国家と言われている。その理由は知らないが、これらの騒動が終わった時も、親日国家であって欲しい。

 

騒乱に向かって各国が準備を進めている。イランの核開発、北朝鮮の戦略ミサイル潜水艦建設、中国のアフリカ経済圏の創出、ロシアのエネルギー戦略、サウジアラビアの金融改革、トルコの新しい外交姿勢、インドとパキスタンの領土争い、何かの歯止めが失われ、各国が動き始めているように見える。その片手間で我々は温暖化問題も見極めなければならない。

 

これらはすべてアメリカという重しが無くなりつつある証左なのだろうか。