とても素敵な話。
僕は熱心に聞いた側ではない。それどころか長く敬遠していた気がする。それが違うと気づいたのはターンAターンを最近聞いてからであった。
音楽を1.25倍で聞くということに慣れてから、何か見落としているものがある事は知っていた。だが遅いリズムには耐えられないという気持ちもある。速度が変われば最低のものでも最高になる事はある。
1.25倍で聞くというのは速度比にして 100:125 だから 4:5 である。時間にして 100/125 = 0.8 なので従来の 4/5 の時間で足りる。
この違いが人の基本クロック数に依ると仮定すれば、100 よりも 125 の方が気持ちいいクロックという事になる。もし、基本クロック数が 5 であれば、100 も 125 もぴったりの倍数になるのでどちらも気持ちよく聞こえるはずである。
基本クロック数の倍数が 100 よりも125 に近い値を探す。適当に 20 ~ 30 の倍数を列挙してみる。
候補値 | 100/x | 125/x | multiple | max |
---|---|---|---|---|
20 | 5 | 6.25 | 100,120 | |0|-|5| |
21 | 4.761 | 5.952 | 105,126 | |5|-|1| |
22 | 4.545 | 5.681 | 110,132 | |10|-|7| |
23 | 4.347 | 5.434 | 92,115 | |8|-|10| |
24 | 4.1666 | 5.208 | 96,120 | |4|-|5| |
25 | 4 | 5 | 100,125 | |0|-|0| |
26 | 3.846 | 4.907 | 104,130 | |4|-|5| |
27 | 3.703 | 4.629 | 108,135 | |8|-|10| |
28 | 3.578 | 4.464 | 84,112 | |16|-|12| |
29 | 3.448 | 4.310 | 87,116 | |13|-|9| |
30 | 3.333 | 4.166 | 90,120 | |10|-|5| |
候補値の倍数でそれぞれ100, 125 に最も近い数 A, B を探す。次に |100-A| , |125-B| を計算し、相手が最大でこちらが最小の値を探す。上記だと、100を好む人は20, 125 を好む人は 21 を基本クロック数とすると辻褄は合いそうである。
これは、割った数のうち小数点部分の差が小さく、かつ、それぞれの値が整数から離れている大きさ(0.5が最大、偏差)が小さいもの、として求める事もできそうだ。
さて。
それはターンAターンも例外ではなく、ノーマルだと遅く感じる。早いほうが耳に気持ちいい。リズムが自分に合っていると思う。これは月下美人でも同様だ。
ところが。
走れ正直者は、違う。1.25倍では詰まらないのに、Normal にすると急にいい。ちょっとした発声までがとても良く聞こえる。どこに原因があるのか。
リズムが根本とはいえ、リズムだけという話ではない。早ければいいという話ではない。そのメロディがこの速度でなければというものだ。古いものを早くしている、という訳でもない。初聴でもやはり早く再生する方がいいと感じる。早回ししたら音程も変わるんだっけ。音の高低も関係しそうだ。
フィットする速度というものは人ぞれぞれだと思う。だから2倍速でなければ面白くないという人もいるだろう。耳なのか、脳なのかはそれは知らない。
とまれ、ひとりの歌手がまた出かけていった。どこに歌いに行ったのか、知る術もない。千年前、二百年前の歌手は、その場限りであった。歌は、空気を振動し、人々の心に刻み込まれ、エネルギーを失い、静寂に溶け込んでいった。
そういう一度きりの音楽というものを、僕たちは日常の中でたくさん知っているわけだが、それとは別に、多くの音源が残って沢山の逸話も残っている歌手がいる。そういうものを通じて、音楽を聞く時代のお陰で、折りに触れ、これからも聞いてゆく。
いつでも会えるから。残された側の言葉である。