マクロン仏大統領「英国民に同じ権利ない」 演説で警告

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マクロンという人は発言の鋭さで評価する。率直というか、目の前の問題に正々堂々としているというか、その感じがよい。もちろん、フランス人は跳ねっ返りが多いから、黄色いベスト運動、年金改革など問題山積である。

 

フランスの面白さは、ヨーロッパの面白さのひとつで、フランス人の特徴として、これは偏見であるが、金の卵を産む鵞鳥を肉が食べたいという理由だけで殺しちゃう所じゃないだろうか。

 

だいたいフランスが一番過激に原理的に動く。その結果はたいてい失敗する。その失敗を嘲笑うのがイギリスで、寡黙に虎視眈々とその失敗から学ぶのがドイツであろう。ヨーロッパの知識が乏しいので、スペイン、ポルトガル、オランダ、北欧などについては割愛する。

 

金の卵を産むがちょうに例えれば、ドイツはその仕組みを調べようとして殺すし、イギリスは、伝統に反するという理由で殺しそうである。

 

イギリス、ドイツ、フランスという国家は、ヨーロッパという地域の特徴のひとつだろうし、ギリシャ、ローマという古代、キリストという中世、科学という近代という人類史でも代表的な事件の起きた場所である。

 

EUはドイツを孤立させないという役割を持つ。近代科学の始まりはイギリスかもしれないが、それを起爆させたのはドイツである。その力でドイツは戦争へと突き進んだ。フランスは常にその前線として機能した。三回目を封じ込めるためにEUがある。

 

この三つ巴でヨーロッパの力学はバランスを取っている。例え崩れてもアメリカが参加して回復する。

 

EUという地域に対して、世界には、アメリカという概念、中国の一帯一路というインド包囲網とアフリカを経済圏とする構築がある。一帯一路は中国が打ち出した新しい情報植民地といって差し支えない。第三次産業を中心とした植民地化である。

 

これが現在の世界の勢力図だとすれば、ヨーロッパの足枷は理念にある。理念に強く縛られているために、彼らは自由を著しく損なっている。その本質にあるものがアウシュビッツである。彼らはそれを二度と起こさない事に努めているが、ネオナチの台頭を食い止める事ができない。ヨーロッパは未だに自分たちの中にあるネオナチの萌芽、反ユダヤ主義が何故起きるのかを知らずにいる。

 

全盛期に世界中の人たちを蹂躙し、犯し、奪い、殺してきた者たちの末裔がどうした?彼らにはその歴史的事件さえ直視しようとしていないはずである。この世界の問題の殆どはイギリスが原因である。そういう歴史を思う時、イギリスがBrexitによって没落するのは歴史の正当な審判ではないか、という気もしないではない。ざまあみろと言いたい地域は今も沢山あるはずだ。

 

それでもイギリスという魅力的な国、フランスという可愛い国、ドイツという末っ子的な国、イギリスが離脱によって成功すればEUは雪崩るように崩落するかも知れない。それをヨーロッパは危惧しているはずだ。

 

経済的に見ればEUはドイツのための自由市場という役割を担う。だから、EUにおける格差が、ドイツへの富の集約、他の地域の貧困が極まってゆけば、ドイツが強引に富を独占しようとするなら、EUは崩壊する。それをさせないためにEUには理念が必要だ。フランスほどそれを強く感じている国はあるまい。

 

逆に言えばEUは如何にして地域内に富の再分配を構築するかが肝になる。それを正当とする理念、思想、そしてそれが経済的損失にならない仕組みが必要なはずである。国を超えて富を流通させ、地域内の移動が自由になって数百年も経てば、必ずこの地域には新しいヨーロッパ人が誕生する。国家を超えてルーツを異にする人々が同じアイデンティティをもつコミュニティが誕生する。アメリカはそれに先んじて民主主義と憲法によってそれを実現しようとした国だ。多くの民族や伝統、言語を如何に超えてゆくか。これが21世紀の我々が目指すべき課題ではないか。

 

ずうっと遠い先に地球人がある。我われは残念ながら未だこの概念を言い表す適切な言葉を持たない。異星人でも登場すれば加速するのだろうが、今の我々はSF世界の中で空想するしかない。

 

この星は宇宙の中で孤独な存在なのだろうか、それとも太陽系周辺は、銀河系は、おとめ銀河団は、生命あふれる世界なのだろうか。この宇宙の片隅で、我々は愚かさのために滅びるわけにはいかない。