焦点:米朝首脳、「特別な関係」では克服できない決裂の裏側

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戦争の実現味を持ち出し金正恩を交渉の場に引きずりだしたのはトランプの功績である。戦争と対話、この両極端をちらつかせ、戦争から対話へと舵を切ったのもトランプの功績である。

 

最初の会談によって事は大きく動くと思われていた。しかし現実は、遅々として進展しなかった。

 

最大の懸念を持ちあわせ最小限の合意を得る、これが困難な交渉の基本であろう。だが双方とも歩み寄りを拒否した。なぜ北朝鮮はここまで強気でいられるのか、なぜアメリカはここまで弱気で居られるのか。そこが解せない。

 

常に戦争というカードを手にしているならば、交渉はアメリカに有利なはずである。もちろん、中国、ロシアへの牽制、韓国への根回しは必要だろう。日本は賛同するに決まっているから気にしない。

 

だが、トランプはそういう交渉を選ばなかった。我々の知らないカードがあるのか?それは誰の手によって北朝鮮に渡ったのか。

 

当然であるが、そのようなことが明らかならアメリカは黙っていないだろう。暗殺はロシアの十八番であるが、アメリカだって謀略は得意である。彼らは敵対する勢力を決して許さないはずである。誰かの事故死が新聞の載ってもそうであると気付くことはない。

 

トランプの外交戦略がアメリカをどのように弱体化するかは知らない。アフガニスタンから撤退する交渉をしている間も、タリバンは軍事拠点への攻撃を続けている。アメリカも舐められたものである。

 

彼らは決してアメリカは反撃してこない、と読み切っている感じである。もしそうだとしたら、これはトランプを読み切ったというより、アメリカ政府の動きを読み切ったという意味であろう。なぜそこまで弱体化したと彼らは考えるのか。

 

アメリカほどの巨大国家がトランプひとりで動くはずがない。何万人ものサポートする人材が必要で、それが配置されて初めて健全に動き出す。それでも議会の承認は必要で、司法も沈黙はしていない。マスメディアもフェイクニュースも含めて常に活発である。

 

そういう意味では、検察の犬に成り下がった司法、忖度によって政権を支えるマスコミ、国会は参議院などいらないという主張がまかり通るほど機能不全である。

 

もちろん総合力という観点で見れば日本の方がずっと一体感がある。すべての人が政権を支えようと動き、それに異を唱える勢力は非国民として排除する動きが活発だ。だがこのような日本式の一体感が極めて脆弱であることは、先の戦争でも明らかだ。

 

全員が同じ考えである以上、弱点を見つけるのはそう難しくない。この方法はある方面でしか強みを発揮できないのである。

 

アメリカでは予算は凍結され、主要な機関でも人材が足りず、政府は弱体化している。それがトランプの選択とはいえ、それがこの交渉の失敗の遠因となったのだろうか。

 

そこがよく分からない。もしかしたら、世界中を相手に彼はペテンを演じて見せたのかもしれない。この交渉の裏で彼らは何かを目論んだのかも知れない。

 

北朝鮮の核問題には幾つかのPNRがあった。核開発に成功させたとき、運搬機能としてのミサイルを開発したとき、そして戦略潜水艦を就航させたとき。

 

北朝鮮は核ミサイルは持っているが、まだ潜水艦は開発していないはずだ。ここが当面の目標と考える。そして、そのための必要な時間を何よりも欲しているのが北朝鮮なのである。

 

兎も角、双方が時間を欲した。そういう会談だったと思われる。アメリカは非核化の見返りに経済発展を約束する。しかし、北朝鮮の最重要事案は現政権の存続であって経済発展ではない。ここにアメリカの読み違えがあったのではないか。

 

もし北朝鮮が経済発展を続けるなら、民主化への道は避けられない。また、その先には朝鮮半島の統一がある。北朝鮮がこれを受け入れるには、王朝の永続が約束されなければならない。どこの国でどうやってそんな国を樹立するのか。彼らが求めるプロミスドランドはどこにあるのか。今のところ、それは朝鮮半島である。

 

約束された地といえばユダヤ教を思い出すが、北朝鮮は放浪の旅に出るきなどない。苦難の中で新しい宗教を構築する気もないだろう。彼はソロモン王となることを望んでいない。

 

トランプが就任するとき、彼は政治の素人である、そのため外交問題がネックとなる可と言われた。しかし、彼の弱点は、彼がアメリカという政体しか知らない事にあったのではないか、とも思えてくるのである。

 

北朝鮮が欲しているのは経済発展などではない、という事が明白になった会談であったとすれば、これほど価値のある会談も他にはないだろう。トランプはそれを知ったから満足して切り上げた。それとも、別の決断をするためにアメリカへ帰ったのか。

 

勝手に書き綴っただけであるが、その答え合わせはトランプがやってくれる。彼の饒舌な @realDonaldTrump がある。もし沈黙するなら、それもひとつの答えとなろう。