香港国安法、中国国外で“中国政府の悪い噂”発信しても違法・逮捕…報道の自由が困難に

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中国に反意を主張した者は、国籍、発言場所を問わず犯罪者として立件するという法が本当に効力を持つのかは、もちろん、中国国内における合法性による。これほど内政干渉を嫌う国家が、全世界に向けて強制力のある立法を行った事は、法体系の合理性に疑問が残る。中国が世界征服を目指していると捉えられてもこれで反論できなくなった。野望も野心も隠し続ける事はできない。

 

習近平以降の中国はそれ以前と異なった訳で、この法律に恐怖するのは、大陸ではそれ以前から成立していたが、共産党内の人々だろう。如何なる批判も許さない、そして、告げ口によって起訴され処分されると考えると、この体制は、かつての王政と同じだろう。

 

そのような強権による支配を実現した場合、その国家は、トップに立つものの気分で動く。これは確かに北朝鮮によく似ている。そして毎年餓死者を出しながらも、アメリカが外交上は一度も屈服させられなかった事実を思えば、一人の個人に権力が全て集中した政治体制は決して脆弱ではない。少なくとも三世代に渡って国家が成り立つくらいの強靭さは備えている。

 

まさか共産主義で権力の禅譲が起こるとは思わないが、ソビエト連邦でさえそれは起きていない、それに類似した事は起きるかも知れない。

 

そしてこの強権指向はロシアでも起きた。プーチンの永世大統領制を可能とする憲法国民投票により賛成多数で可決したのである。

 

こういう強権力指導者の登場は、周辺国家にとっては脅威である。それに対抗できる軍備増強が必要なのも自明である。それは戦前の歴史を見れば分かる通りである(日本に対する中国の立場など)。

 

長く権力をひとりの手中にある事は、人間が老化する動物である事に国家の命運を預ける事と同じ意味である。ブレジネフの最後は痴呆でありながら権力欲だけは旺盛だったと聞く。それでも国家が運営できたのは、官僚制度の強靭性によるものだろう。

 

金正日のように晩年まで国家運営に邁進した人もいる、その後も後継者に恵まれた。しかし一般的に、次々と名君が登場すればその国家は旺盛になるし、暗君が続けば荒廃する。歴史はそう教える。

 

しかし、これは原因と結果が逆かもしれない。暗君によって国が荒廃したのではない、その国全体が停滞しているから暗君が登場する、暗君は氷山が海面より上に出した一端に過ぎない、行き詰まった根本理由は別に所にある、例えば技術革新への対応の遅れ、変化に順応できない固定化する体制、既得権益を維持するエネルギーの上昇、変化するには余りに満足度の高い社会性、そういう国家ほど、転覆するまでの時間は長く、転覆する時は派手にする、つまり粉々に砕けるものである。

 

現状に満足するから変化を忌避する。そのような社会に業を煮やして自民党憲法改憲ダーウィンのトンデモ論を持ち出した。馬鹿である。

 

細く硬い枝はちょとした事で折れる。太く硬い幹はそう簡単には折れない。折れる時は中から腐っているものである。陽だまりの樹にそう書いてあった。

 

権力者が長期になれば、システム全体がひとつの方向に癖付けらる事になる。全員がその方ばかりを見るので、自然と脆弱になるものである。内部抗争が激しすぎて、外からの脅威には対抗できなくなる。

 

ロシアはプーチンがいる限り安泰である。という事はプーチン後のロシアについて今から準備できるという事だ。どんな混乱が起きるかも分からない、ここはスターリン以降の変遷が参考になる。

 

中国の共産党支配の今後は、強権性を追求するようになる。一度動き始めた方向性はそう簡単には変わらないように思える。香港の次が台湾になるのも想像にやさしく、武力行使も覚悟しておかないといけない。もし、中国が核を使ったら世界はどう動くか。その恐怖が次の恐怖を増殖するのは当たり前に見える。

 

ひとりの人物が支配する国家で起きる特徴は粛清である。この法則に従うなら、中国でやロシアで大粛清が起きるのは既定路線な気がする。それを国外にまで拡大する勢いである。サウジアラビアのカショギ殺害も同線上だろう。

 

それはある意味、クーデターを抑止するための当然であって、日本は陸海軍を粛清しなかったせいで戦争への道を進む事を回避できなかった。昭和天皇に歴史的瑕疵があるとすれば大粛清をしなかった点ではないか。

 

次の10年はそういうものを見る事になる、、、本当かな。

 

そこでひとつの疑問が湧き上がる。なぜフランスやイギリス、アメリカの民主主義ではクーデータが起きないか。起きるのを早いうちに摘んでいるだけなのか、それとも体制的に起きにくいのか。

 

マティス氏のトランプ批判を聞けば、アメリカ軍人がクーデータを起こさないだけのように見える。そう教育されている。それを信念にしている。それ以外の抑止力を持たないなら、アメリカでもそれが起きる可能性はある。

 

もしトランプが民衆を撃てと命令した場合、軍はその命令を聞かなげればならない。聞かなければクーデータである。聞けば民衆を撃つのである。もちろん、軍はその命令を聞く前に、その命令が憲法違反であるというと司法闘争をするだろう。それでも裁判官がトランプの傀儡だったら?

 

そういう状況を生まないために、アメリカの民主主義は、多くの人で構成され、多くの人が互いの責務を全うするように工夫されている。それを底から支えているのがアメリ憲法に代表される国家理念である。この理念が彼らを良き人間でありたいと思わせる、よって、激しく揺れ動きながらもアメリカは自らの歩みを止めようとしない。つまり、アメリカの根っこには経済よりも重要なものがあるという事である。

 

そういう「経済」よりも「大切」な何か持つ国家は、割とクーデータが起きにくいようだ。逆に言えば経済的理由が何よりも重要視される状況になればバンバン起きそうである。この幻想に支えられるのが国家の本質であろう。世界には、特に強い理由もなく多くの人が信じる幻想(吉本隆明?)がある。

 

権力闘争は人の置換が可能であるという状況であって、なすびだろうがきゅうりだろうが、ある場所に配置されたら権力が回り出す機構が既にある場合に起きる。この配置換えは制限が強ければ強いほど、例えば選挙や血筋しか認めないというような、場合ほど困難になる。そういう場合でも、代理という形をとって奪う抜け道がある。

 

アメリカの大統領制はこの代理を排除している点で、クーデータが起き難い。そしてアメリカでは選挙という方法しか認めていないので、この通過儀礼を通らない限り認められない程、手続きが完成されている。トランプもこうやって大統領になった。

 

香港は正当に中国の領土である。そして2047年以降は完全に自治権を失う事が明らかであった。それが早めに統合されたのはイギリスとの条約違反であろうが、当たり前だが、2047年までに中国の共産党体制が崩壊するなど考えられないし、考えたくもない。

 

中国で共産党体制が崩壊するシナリオはどのようなものがあるか。ひとつには軍部のクーデターがあろう。憲法が停止され、軍部の論理があらゆる面で実行される。戦争への危険性も極めて高くなる。所がこの場合の戦争には具体的な目的がない。

 

日本陸軍が中国大陸へ侵略した根本の理由が単に勲章が欲しかったから、と言うのと同じくらいの理由で多くの血が流れる。満州国家の維持など公式の理由であったが、それらは政府との協議を失い、統帥権を盾に行動していい理由にはならない。

 

もし民主主義に移行したらどうなるか。おそらく多民族では民主主義を維持できない。漢民族という考え方が中心になるはずだ。そうなると民族差別が顕著化する。それを避けるには各地域が独立するしかないのだが、それをどう考えるかはその時点の為政者の眼識に依存する。

 

周辺国は、緩衝地帯として支配したい。アメリカの軍事基地が建設されるなど許されない。これが大陸国家の基本戦略だから、如何に影響範囲を維持するかは共産党体制であろうが民主主義体制であろうが、最重要課題である。

 

日本だって、民主主義で正当に選ばれた為政者はピンピンキリキリである。共産党という激しくも公正な競争の中で選ばれてきた人と異なり、民主主義で選ばれた人がぴんきりになるのは想像に難くない。そして、民主主義は独裁者を生む唯一の原因である。民主主義の経験のない中国が構築する政治体制が独裁者を生みやすい可能性は高い。

 

現在の中国の強権化には幾つかの想定が可能だ。支配体制の弱体化に対するカウンターとしての強権、習近平の強権がより強靭に盤石になる過程のもの、いずれにしろ国防という考えで影響範囲を拡大するのは、アメリカとの相対的差が原因で、対決姿勢を鮮明にするのが、アメリカの混乱に起因するものだろう。

 

経済的にアメリカ抜きでも成立する見通しが立った、とするなら、その戦略眼には恐怖する。そこに起死回生を求めたものなら、なりふり構わぬ行動力に警戒する。

 

世界は変わりつつある。アメリカ・トランプ、中国・習近平、ロシア・プーチン、いずれも以降の世界(10年~30年後)への注視は今から始めておくべきものだろう。