旭化成 1億5000万円の所得隠し 毎日新聞

新聞は元来がある方向に陽動しようとする。文言や語尾を少し変えるだけで完全な誘導が完成する。しかも誘導されている事に気づかないように行う。

 

なぜ彼らが陽動技法をかくも駆使するのか、それは分からない、しかしそれは多分に正義とか社会のためではない、記事を派手に装飾し文字数を稼ぎ売上を伸ばしたいがためだ。

 

総合化学大手「旭化成」(本店・大阪市北区)が大阪国税局の税務調査を受け、11年3月期までの5年間で総額約10億5000万円の申告漏れを指摘されていたことが5日、分かった。

最初に「申告漏れ」という軽い語感を持ってくる。導入の常套手段、軽めにして読者の読み始めるのを軌道に乗せるため。読み始めたあら次第に内容を暗示させてゆく。

 

「分かった」という書き方が、如何にも伏線を張ると技法。

 

うち約1億5000万円が所得隠しと認定された模様だ。

「申告漏れ」から「得隠し」にする。「洩れ」と「隠し」では全く違う。悪い感が満載になる。この時点で読者の中で旭化成=極悪が確定する。

 

更に「認定」。揺るぎようのない真実という感じがある。つまり反論は無駄という語感が強い。隠したのは紛れもない事実ですという感触を与えている。これ国税局を「お上」として無誤謬を前提とした書き方になっている。

 

しかも「認定された模様」である。模様、そうらしい、伝聞、確定ではない、と書いてある。だが、この語尾を読者は読まない、読んでも頭に入らない。模様という伝聞は、認定という確定の前では、如何にも弱いのである。つまり逆に「認定」の意味が強化されるのである。

 

追徴税額(更正処分)は重加算税を含む計約4億2000万円で、同社は既に全額を納付したという。

模様がいつの間にか真実となり「追徴」が行われ「納付」と如何にも罪を認めて観念したという感触である。御用された=罪人である。


ここで「という」という語末は伝聞であるから厳密には確定ではない筈である。だがグレーゾーンでは真っ黒がこの社会の常識であり、それを逆手にとった書き方である。

 

重加算税はペナルティである。つまり意図した脱税である。これは税務署の言い分であり、企業は裁判で戦っても良い。

 

関係者によると、同社は大阪府高槻市にある所有地の浄化工事の際、追加工事が残っているのに10年度に完了したことにして11年3月期に計上するなどした。

「など」が悪質で、他にも悪事働いてます感を強調し満載する。

 

国税局は「本来は工事が完了してから一括計上すべきで、完了を仮装した」と判断、重加算税の対象にしたとみられる。

「みられる」という語尾が悪質で伝聞の推測だけに重加算税にした理由がこれとは言っていない、という逃げ道が用意されている。しかし伝聞であるが故に本当味が増すのである。

 

同社は「一部に国税当局との見解の相違があったが指導に従った」としている。

「としている」がまた悪質な語尾で、「している」とは建前ではそう言っているが、実際は観念しているという雰囲気が強い。つまりは本音は脱税したんだろう?と読書は読み取るのである。

 

本当に脱税を意図したなら強く非難すべきであるし、もし税務署の主張に間違いがあるなら、そこに疑問を挟むべきである。また互いに相いれない主張があり、様々な妥協として起きたなら、これらの問題についてきちんと整理すべきである。それが健全な社会のための監視役を担う新聞の役割であろう。

 

【牧野宏美】

 

しかし実際は日々のニュースで真っ白な紙面を文字数を埋めるだけで精一杯である。起きた事件を面白おかしく書いて売り上げに貢献するように鍛えられてきた記者である。どう書けばどう読まれるか、骨の髄まで沁み込んでいるのである。ゴシップで鍛えられきた文章術をどう思うべきだろうか。

 

毎日の落書き、こんな記者を生む。