The following story is fictional and does not depict any actual person or event.
正恩はふぅと息をついた。さいは投げられた。もう後戻りは出来ない。張成沢をああも無残に殺しかつ放送したのである。このメッセージは少なくとも分かる人には分かるはずだ。それはこれから敵となる勢力、味方になる勢力の双方への。全てが年末までに決着する。そう感じていた。
おじは確かに経済通であった。しかしその経済とは中国の事である。我が北朝鮮の地勢的価値を最も知っているのは中国である。これがなき父、正日の言葉であった。
その意味を彼は十分に知っていた。たった二年。その間に権力闘争とこの国の未来の両方を背負わなければならなかった。海外の人は知らぬであろうが、彼らの知る数十倍を私は殺している。権力闘争とはそういうものだ、と彼は嘯いた。民主主義を無邪気に信じる人たちには到底わからぬ。そう感じていた。
だから、私は決断をしたのである。我々は決断した。そうしなければもうこの国は立ち行かぬ。我々は核を持った。これが大きい。アメリカと交渉するための切り札としての核、それでいい。これは我々の活動が上手く行っている証拠である。
幸いにミサイルを撃てば平和ボケした隣国が大騒ぎしてくれる。隣りの同胞たちは、そのお人好しを十分に発揮してくれる。ただ騒ぎを起こして約束を反故にしてゆけばそれで我々は良いのだ。
それで国際世論が形成される。それは深く深く、反撃の足場を築く。我々の敵はどこか。これだけは決して気付かれてならない。喉首を掻く直前まで。なぜ張成沢を残酷にも処刑したか。それを放送までしたのか。彼の正体を知る者たちは、このメッセージを正しく理解したはずである。
核は正確にやつらの首都を狙っている。我が国の同胞の半数は死に絶えるであろう。私でさえ生き残るまい。しかしここで中国と決別しなければこの国に未来はない。我々はアメリカと同盟する。政治体制も軍部も解体しようととも、この決断以外に生き残る術はない。
さぁ約束の時間は近い。一気に一斉にこの国をくるりとする時が来たのだ。
コンコン・・・
ノックの音がする。だれだ、この大事な時に。
ああ、雪主か、どうしたんだね、こんな時間に・・・!
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アメリカ
大統領、北朝鮮でクーデターが発生したようです。正恩は消息不明。
そうか、成功したか。この時期にアメリカを頼られても困るんだ。あと数年は静かにしていてくれなくては。
我々と中国との対立は恐らく2020年以降には激化します。それまでは北朝鮮には今の状態を維持してもらう必要があります。彼は若すぎたのでしょう。国民の悲惨さな状況に耐えきれなかったのではないでしょうか。
それは人としては尊敬に値する価値観だ。だらか人しては私は彼に同情するよ。だがね、為政者として彼を軽蔑する。
中国
アメリカと手を組もうとの考えは良い。が慎重さが足りぬ。あれだけのデモンストレーションをすれば脱中国を宣言したようなものだ。脱中国の振りをして国内の親米派を炙り出そうとする計画を進言してきた時から怪しかった。
アメリカがこの地域に手を出してくるのは10年後だ。今じゃない。それが読めぬとはな・・・
日本
クーデターかね?これは拉致問題を解決するチャンスではないか。アメリカはどう言っているのかね、君たち。至急確認してくれたまへ。
トボトボ...アメリカと中国がつるんでクーデターを起こしたのは明白じゃないか。うちの総理はそれさえ見抜けないのか。
ブランデーを傾けつつ夜景を見ている。
総理、いいんですか、あんな馬鹿な振りをして・・・
いいんです。これでいいんですよ。どうせ拉致被害者は取り戻せません。本当に取り戻したければ国交を結べばいいのです。それだけを考えるなら簡単なんです。そうしない理由は何か。そんな難しい話を説明するよりもバカな振りするのが一番いいんです。
トゥルルルル- 。
はい。正男ですが・・・
将軍、あなたの番です。
そうか・・・分かった。
カチャ。
これで俺も中国の傀儡か。
ピーピー。スマートフォンが震える。
テキストメールの文言が表示される。
(奴らに気付かれるな、2030年に会おう)