トランプ氏「扇動」批判強まる 支持者が議会乱入・占拠

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お茶会事件だってこんな風に始まったのかと思わざるを得ない。南北戦争だって大統領選の結果が切っ掛けだ。どうしても譲れない戦いがあるという訳だろう。

 

このアメリカの人たちのコロナなんぞ恐れるに足りない、アメリカという国家の大問題であるという認識は、どちらの立場であれ正しいように思われる。アメリカの多数派である白人はそのルーツから二種類いると書かれている記事を読んだ。

 

ひとつは政治的迫害から逃れてきた人、Pilgrim Fathers であって彼/彼女らは政治的な自由を求めた。もうひとつは経済的に立ち行かなくなって新天地を目指した人たちで、貧困からの脱却、政治的には経済的な平等を求めている。らしい。

 

らしいと言うのは、当然人口比では既にアフリカ系アメリカ人もいれば、南米系の人もいる。半分は白人以外だし、白人だって様々なルーツの複合体だ。300年前のひひひじいさんたちの心意気がそのまま残っているなど信じない。そんな馬鹿な話があってたまるかである。

 

しかし、アメリカという国は人々の幻想で成り立っている。これもまた真である。アメリカという国家を治めるのは合衆国憲法に記載された人間の理想にある。だからここで難しくなるのは誰を人間に含まるかであって、例えば共和党は白人をそれに含めている、例えば、民主党は富裕層をそれに含めている、それから漏れた人たちにトランプは呼びかけた。

 

トランプは元凶ではなく象徴である。誰も見向きもしなかった人たちを鼓舞した人であり、それらの人々はトランプが登場したらかこの世に誕生したのではない。最初からアメリカに住んでいた。このトランプの慧眼を馬鹿にする人には見えない風景だ。

 

トランプがこれらの人々に目を向けたのは大きな功績である。彼にそういう自覚があろうがなかろうが関係ない。時代を見事に打ち抜いたのである。アメリカの問題をここまで自覚的に人々に知らしめた実績は決して無視してはいけない。

 

今のアメリカの構図はそういうものだと理解すれば、トランプが悪者とか最悪の大統領と呼ぶ人にはアメリカの姿は見えまい、またはどこかの一角に立っているに過ぎないと思われる。どの立場の人にも言い分があり、それは歴史的に見て古いと言われようが、堂々として正統なのである。それをポリティカルコレクトなどという詭弁で説得されてたまるかという考えは十分に理解できるのである。

 

同様に古い時代にあった偏見は世界の隅々までを支配しており、あのヒラリーでさえガラスの天井という言葉を吐かざる得なかった、このアメリカで、あの憲法をいだくアメリカという国で。その態度は誠実であり、アメリカの人々を勇者と呼ぶのは、そういうものを真っ直ぐに見つめようとする瞳を持っているからである。

 

日本で行われてきた社会運動はアメリカから学び勇気づけられ導入されたものが多い。バスに乗ったあの女性を驚愕を持ってみた内の何人かはその勇気にまずひるんだはずである。

 

いずれにせよ、アメリカの民主主義の敵は現代資本主義である。アメリカの戦後とは世界の復興を支えた重工業の発展と、やがて日本やドイツなどの前で競争力を失う歴史であった。資本主義の定義を重工業を中心とする経済体制とするなら、ここでアメリカは資本主義から脱却しなければならなくなったのである。

 

レーガノミクスは恐らくそういう修正だったはずで、基軸通貨という背景もあってアメリカは世界に君臨してきた。その結果として、重工業が必要とする中間層には見向きもせず、金融で活力をためようとしたのである。もし資本主義の定義を資産を持つ者が更に有利になる経済体制という意味ならば、格差の拡大がアメリカという国を蝕む事は自明であった。

 

その同じ頃、ひとつの新しい産業が起きる。ITである。自動計算機という発想はギリシャ時代からあったもので決して新しいものではない。だが、蒸気機関で動かそうとしたバベッジの機械式計算機などの工学的探求、シャノンやチューリングノイマンらのとてもたくさんの論理的追求、そして戦争という追い風から芽吹いた電子計算機の世界。

 

ざくざくとエンジニアが参加して、今や世界を席捲している。もっとも世界を変えた技術はインターネットであるはずだ。この変える力を生み出したアメリカの理想と理念は、しかし、今や試練を前にして足踏みを続けている。

 

インターネットが小国でも世界と渡り合える事を可能とするなら、AIの発展は、小国でも世界を凌駕できる事を意味する。この技術的到達点、シンギュラリティの発現が、世界をどう変えるか分からない。

 

これはアメリカさえも古臭く感じさせる時代が到来するという予感である。アメリカが古いならどこが新しいのか、と目を凝らしてみても何も見えないが、さて遠くの大陸のどこかで、誰かがいま何かを磨いているはずだとしか言えず、それが何であるかは皆目見当もつかない。

 

しかし、アメリカで起きているトランプへの希求が、間違いなく過去の栄光に依存し、失われた時代への渇望となって、その喪失がアノミーを生み出すとするなら、あの国が信じている共同体そのものが消えかかっているのではないか。それはとても重大な転換点だと思うのである。それとも、これは新しいアメリカに向かう以上の当然の軋轢なのか。

 

どう変わってゆくのかは分からない、しかし確実に未来は変わるはずである。この予感と最も真剣に対峙しているのが今のアメリカであろうと思う訳である。この変化や軋轢と比べると中国の野心も野望も色かすむ。経済力を背景とした古い形にしか見えないからである。

 

しかし中国に住む多くのエンジニアが開発している技術のスパイラル的な展開力には新しいものが生まれる予感が潜む。そのスピードも発想力も実現力も大きな活力に溢れている。それが共産党といつまでも共存できるのか、それとも凌駕してしまうのか、アリババでさえ支配しようとする闘争から距離を置き続ける事は不可能だと思う。

 

この星がどこに行こうとしているのか?それはただ銀河系をぐるぐる回っているだけである。今の時代が何かの強大な変化の過渡期とみる理由は、従来の資本主義が変化しつつある事。巨大な富裕層による支配という形で先が続くとは思いたくないから、それに代わる仕組みが登場しなければならない。

 

従来の民主主義の変化、中国の台頭を初めてとして民主主義の選択が絶対的な価値観ではなくなりつつある。では何が台頭しているのかと言えば、新しい階級社会の到来であり、人々は自由と平等よりもより多くの富を求めるだろうという事である。22世紀には新しい王国が誕生するかも知れない。例えばGoogleという名の。

 

民主主義の敵は銀河帝国ではなく資本主義なのである。これは資本主義が IT によって変化しつつある事の証拠でもあろうし、もう古い方法では抑え込めないまでに何かが膨張しつつある事の証明にもなろう。

 

さて、バイデンという立派な人のこれからに注目する。彼で無理なら他の誰がやっても出来るとは思えない。我々はヒットラーを掲げる訳にはいかない。