「あなたを採用したら当社にどんなメリットがありますか?」 配属先も未定なのに何を答えろというのか

ケネディに有名な演説がある。就任演説の一説である。アメリカという国は、あんなに暴力ありきでありながら、その国家観は演説の積み重ねである点が面白い。


「And so, my fellow Americans: ask not what your country can do for you—ask what you can do for your country.
My fellow citizens of the world: ask not what America will do for you, but what together we can do for the freedom of man.」

アメリカがあなたに何をするかではなく、あなたがアメリカに何ができるかを聞きたい。全世界のみなさん、アメリカがあなたに何をするかではなく、わたしたちを一緒に人間の自由に対して何ができるだろうかと問いたいのです。

これをパクッて片山さつきはこう語った。

@katayama_s
国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論をとるのは止めよう、というのが私たちの基本的考え方です。国があなたに何をしてくれるか、ではなくて国を維持するには自分に何ができるか、を皆が考えるような前文にしました!

ではケネディは何のためにアメリカ国民のみならず、世界中の人々に呼びかけたのか。

Since this country was founded, each generation of Americans has been summoned to give testimony to its national loyalty.The graves of young Americans who answered the call to service surround the globe.

この国が設立されて以来、それぞれのアメリカの世代が、国への忠誠を証明するために召喚に応じてきました。それに応じた若いアメリカ人の墓標が世界中にあります。

どの世代も国への忠誠を示した。だから今も国のために、と訴えている。ではケネディは何のために市民にそこまでの要求をするのか。当然ながら、彼が相手にしようとしている敵が強靭だからである。彼一人の力では、彼政府だけの力ではとても対応できない相手と敵対しようとしている。

それは共産主義なのか。ここからがケネディの偉大さ(ペテンとも言うか?)であろう。

彼の演説は、様々な立場の人に対している。
・ To those old allies (古い自由陣営の友人たち)
・ To those new States(新しい自由陣営の友人たち)
・ To those peoples to break the bonds of mass misery,(悲惨さにいる人々)
・ To our sister republics south of our border(アメリカ大陸の友人たち)
・ To that world assembly of sovereign states(国際連合の方々)
・ To those nations who would make themselves our adversary(敵対する共産主義国

多くの立場の人に向かって訴えている。それは敵を打ち砕くという宣言ではない。彼は、敵に対してもこう訴えている。

before the dark powers of destruction unleashed by science engulf all humanity in planned or accidental self-destruction.

科学の暗黒面の力による破壊が全人類の前で解き放たれる前に、計画的であれ、偶発的であれ、我々自信を滅ぼす前に。

つまり、世界を破壊するのは決して共産主義者であるとは語っていないわけである。どちらかと言えば、人類の敵は人類である。ゆえに、全員でこれと対峙したいと主張しているわけである。

自由であったり、貧困、不平等を嫌う価値観がまずあって、そのうえに、人類を滅ぼしかねない核兵器への危惧がある。これと立ち向かうために、短絡的でない呼びかけを行っているのである。

片山さつきがよくもまぁ恥ずかしげもなく、改めて思う。まぁ、何も見えていない人間だから、自分とケネディを重ねてしまえるのだろう。そして、その何も見えていない人間に一票を託し、自分の未来をともに作ろうとする人の多さに愕然としたりする。まぁ、選挙区が違うからどーでもいいけど。


当然だが、「あなたを採用したら、当社にどんなメリットがありますか?」だってケネディのパロディである。

ケネディの言葉を続けるならば、

Finally, whether you are citizens of America or citizens of the world, ask of us the same high standards of strength and sacrifice which we ask of you.

最後に、アメリカの人であれ、そうでない人であれ、私たちに問いかけてください。私がともに戦おうとあなた方に呼びかけたのと同じ高く強靭な規範と犠牲を、私たちも払っているかということを。

この世界は交換で成り立っている。それは量子力学が教える所である。すべての粒子は交換によって成り立っている。それは会社と労働も同様であろう。

御社は、私に何ができるかと問う。しかし、私は御社に問いたい。私が御社に何かをしたならば、御社はわたしのために何をするのですか、私が御社で就労するメリットは何でしょうか。人生の一部であるとはいえ、その期間において私の全てを捧げ、様々な犠牲も厭わないだけのものを私は提供しましょう。それに対して、御社は何ができるのですか。人間としての成長や、人生をより豊かにするために、御社は私に対してどれだけのことができるのでしょうか。