しんかい12000

深海潜水艇こそが、船のロマンなんである。自分が一番ワクワクする船である。が、実際に潜水艇に乗れと言われれば断固拒否する。あんな狭い球の中に12時間以上も閉じ込められて空気が亡くなったらどうしようかという妄想だけで発狂に至れる。

 

人間には大地が必要である。民主主義でなくとも閉所恐怖症には自由が必要なのである。

 

深海潜水艇の歴史に欠かせない一人の人がいる。FNSR-1、FNSR-2という二つの乗り物を作った。この二つは同じ発想、同じ機構で出来ていたが、その目的とする場所は大きく異なっている。

 

その一つは1931年に+16000mへ達した。そこは人類が初めて訪れた成層圏であった。もう一つは1950年に-4000mに達した。人類が訪れた初めての深海であった。

 

この二つは共にObservation Gondolaに強力な耐圧球を持ち、その中に人間を隔離する仕組みで、過酷な条件の世界へと人間を連れてゆく。

 

彼は成層圏に行ける乗り物ならば、深海へも行けるはずだという信念で世界を切り拓いた。FNSR-2は、厚さ12.7 センチの耐圧球を持つ新しい潜水艇へとつながりこのトリエステ号により10916mの深海にまで達する。

 

これが深海への本格的な探索の始まりである。バチスカーフ、これら潜水艇の総称である。これを生み出したのが物理学者、気象学者、そして冒険家でもあるオーギュスト・ピカール、その人である。

ja.wikipedia.org

 

しんかい6500もまた、この系譜にある。彼は過去の潜水球としんかいとを結んだ人でもある。

 

日本の潜水艇には
・しんかい(600)
・しんかい2000
とあるが、それ以外に

・わだつみ
がある。

 

トリエステとディープシー・チャレンジャー

deepseachallenge.com

 

どれも魅力的な船である。

 

この度の地震がその探査への必要性に強く拍車をかけた事は間違いない。しかし深海潜水艇が好きな人にとってはそんな事はどうでもいいのである。

 

その造形美、その能力、その不自由さ、全てが愛おしい、美しい。その中でも、バチスカーフが最も美しい。

 

私を深海へ連れて行って、バチスカーフ!