航空自衛隊改め、「航空宇宙自衛隊」へ 政府、宇宙重視で名称変更へ

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航空自衛隊の防衛範囲は当然だが、航空機が飛べる範囲である。ほぼ成層圏(F15で30km)と言ってもよく、それ以外のエリアはやる気になっても装備がない。航空自衛隊の行動範囲は、本質的には地球の全範囲の担当である。

 

しかしそのための能力(予算、人材、装備、計画、目標)を持たないので実質的には航空機の航続距離と機数が自衛隊の行動範囲である。弾薬数、ミサイル数、燃料等の資材が活動限界の時間を制限する。弾薬を持たない戦闘機はただのセスナである。燃料がない、整備ができなく空を飛べない戦闘機はただの実物大のプラモデルである。

 

航空自衛隊の基本性能は武力による敵勢力への打撃群である。実際には陸、海と連携しながら行動する。統合とはそういう意味である。戦争では所詮は補給を続ける事が最終的な達成目標であるから、最小の運動で最大の効果を得るためには統合が必要なのである。

 

で統合はするが、それぞれが独立する理由は、当然ながら過去からの踏襲もあるが、基本的には余りにも専門性が異なるからであろう。求められる装備も能力も異なる。戦車を走らせる事と、駆逐艦を動かす事と、戦闘機を飛ばす事に必要な要件は違うのである。まして戦闘時の作戦や運用は更に異なる。

 

故に目的は政府が決める、軍の運用は部隊に任せるという棲み分けが発生する。互いに口出し無用。ただし、政府は時に無理難題を課す場合がある。そういう時に実働部隊がどこまで面倒をみなければならないのか。この辺りにその国の能力の限界が如実に現れる。

 

もともとの統帥権はこのような考え方で構成されたものであるし、軍部大臣現役武官制も政府の無理難題から軍が牽制の意味合いで発想されたものであった。しかし、この関係性は簡単に崩れた。その時、陸軍の暴走を止める手段がなくなった。いや、なくなったというのには少し語弊がある。実際に終戦間近には暴走を抑え込んだからである。

 

当時の陸軍はすべて合法的に行動した。違法行為をした意識を持つ軍人は少ないはずである。ただし合法の中で好き勝手に活動する関東軍に止めるには梅津美治郎が乗りこむ必要があった。軍を止めるのに銃などいらぬ、人事にサインすればいい。これがペンは剣よりも強しの意味である。ただしクーデターさえ起きなければね、というのが日本陸軍の主要なテーマであった。

 

ロシアではプーチンは全て合法的に戦争を始め民衆を戦場に送り戦場でミンチにしている。ロシアの法ではプーチンに一切の責任は発生していないはずである。また合法的に大統領の職にあるのである。それを止めさせる手続きもない。合法的に警察が取り締まり、合法的に軍が兵士を動員している。

 

合法である限り裁く手段がない。だからロシア人は黙って従っているのか、という話が結論になる。ロシア人の大勢は恐らく従っている。何故か知らないが、日本で同様の事が起きたら恐らく同様の事になろう。その辺りはアメリカ(米議会襲撃)とも中国(ゼロコロナデモ)ともイラン(ヒジャブデモ)とも違うようである。

 

で宇宙と航空の共通点はどこにあるかという話である、宇宙軍といっても銃を持って宇宙空間に展開する訳ではない。そういう構想はまだ早い。大陸弾道弾を打ち落とす計画はあるだろうし、秘密裡に装備も打ち上げているだろうが、それはアメリカやロシアや中国での話である。日本はお呼びではない。

 

よって宇宙軍という場合は、主に情報収集が主な業務となるはずである。近郊の軍事基地の情報を収集する、動向を探る。アメリカならドラマでさえ既に描かれているような日常茶飯事的な業務である。

 

恐らく、それを成すのに航空機の知識は一切必要ない。装備は全く違うし、必要な物理学さえ異なる。求める人材も異なる。重要なのは情報処理能力である。そこで得られた情報は全軍が適切な時期に適切な内容で共有されなければならない。陸海空とは全く異なるカテゴリに存在し、情報部は別格として扱われるべきであろう。武田信玄三ツ者を恐らく直属としていたと思われるのと全く同じ理由である。

 

つまり航空自衛隊と宇宙隊を統合する理由に軍事的理由が何も見つからない。空と宙が同じ読み方だからか?だから統合するのか?つまり、これは財務省からの要請であって、少しでも予算を縮小するための統廃合であろうと思われる。

 

戦争をするのに軍は欠かせない。軍を維持するのに金は欠かせない。金なら経済は欠かせない。そして経済に民が欠かせない。もし政府が舵取りに失敗すれば当然ながら国内の活力は失われてゆく。しかしその失政の責任は民主主義では誰の責任でもないのである。滅びるのに一切の口出しをしないのが民主主義の長所だ。

 

この組織がアメリカ国家偵察局を参考に考察されたであろうことは明らかと思うが、見て欲しがって真似てるようでは軍は立たずであろう。何のために、どのような、を突き詰める時、とてもではないが、空軍と宇宙軍の統合は有り得ない。仮に近未来のSFであっても、この両者は絶対的に異なる組織のはずである。空軍大佐と宇宙軍大佐ではどう考えても求められるものが違う過ぎるのである。

 

その頃に宇宙領域で何を争っているかは別にしても軌道上の防御が中心となるであろう。そして宇宙軍は拠点として小惑星や月、スペースコロニーを持つ。それらの防衛は宇宙軍が責任を負う。

 

宇宙軍は宇宙から地上を監視し時に攻撃する任務を負う。上から直接攻撃できる自由度を宇宙船が持つようになれば、ICBMと同等、またはそれ以上の脅威となり、それを互いに牽制するための宇宙船が必要となるだろう。当然ICBMは以前と脅威であるから、それを排除する必要もある。

 

そういう時代に空軍はどういう任務を行うのだろうか。地上と宇宙の間の防衛が任務に追加されるのは間違いない。ロケットの打ち上げを防衛する事、その軌道に侵入する可能性のある地上からの攻撃を防ぐ事、それぞれの装備の限界点までを互いに守備範囲として、統合作戦を実行する。

 

宇宙と大気圏の両方で航行可能な宇宙船というのは恐らく相当な幻想であろう。現在の物理学の延長にはそのような能力の船は開発困難だし、科学技術はそういう方向には進まないと考えられる。ガンダムが実際には地上では行動できないゆえ。