劇場版マジンガーZ

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永井豪の最高傑作はデビルマンだと思う。特に5巻の圧巻さというものは、漫画史上屈指という言い方でもぜんぜん足りない。古事記以来の日本史上、全作品中でも屈指の出来栄えと思うのである。

 

デビルマンの前段階に魔王ダンテである。ふたつの世界の対立、そして正義と悪魔の反転、カオスというものが永井豪を支える大きな一柱だと思うものである。クトゥルフ神話の世界とも相性が良さそうだ。それは手天童子も同じだ。

 

マジンガーZは日本アニメの行く末を決定付けた作品である。第一話の「神にも悪魔にもなれる」というセリフはシリアル路線の始まりのようでもあった。富野由悠季はザンボット3で被害者を描いたが、マジンガーZの初期に既にその萌芽は見られる。

 

漫画版のマジンガーZは作者の都合によりコミカル路線を走ることになった。その中でもドナウα1との戦闘は屈指の出来栄えであろう。デビルマンのジンメンのエピソードを彷彿とさせる。永井豪の二大悲劇といっても嘘ではあるまい。

 

マジンガーZは幾つもの基本形を最初に提供した作品であって、革命的という点で、これを超える作品はそんなに多くはない。これに匹敵する革命を起こした作品は宇宙戦艦ヤマトくらいのものではなかろうか。

 

その革命性は、もちろん、おもちゃという形に凝縮する。本体のロボットだけではなく、パイルダーという乗り物、オートバイの独自性、幾つものトイが揃うわけで、途中でジェットスクランダーが出てきて更に購買意欲を刺激する。スポンサーはこの類型を何度も何度も繰り返す。これが日本アニメーションを支える資本となった。

 

マジンガーZの価値を最大限に高めたのは、当然だが、最終話だ。ミケーネ文明との戦闘でボロボロになってゆく様が脳裏に焼き付いた人は決して少ないと思う。

 

やられる美学、破壊される美しさ。あれだけ結実した作品は他にはあるまい。その完成度の高さの前では、グレートマジンガーは強すぎて詰まらない。

 

マジンガーのこの45年間の歴史は、超合金の発展と言っても過言ではない。45年前の製品と、現代の製品の表現力は、値段も破格であるが、完成度も破格である。ガンプラの完成度も空恐ろしいものがあるが、コンバトラーVが本気で完全再現した工夫の前ではやや劣る。

 

新作がどのようなものになるにせよ、物語は陳腐でも構わないから、造形だけは素敵にしてくれよと願う。今までにないマジンガーが見たい。

 

そして、可能な限りおもいっきり動かして欲しい。ガンダムオリジンを見て思うのは、やはりCGは詰まらない。

 

大きな戦艦が入港するとか、宇宙をゆらゆら流すように飛ぶシーンではCGはとても向いていると思うけれど、圧倒的な画力のある人が描いたセルと比べるとCGは所詮はきれいな爆発に尽きるのである。ゆっくりとした動きでは物足りないのか、CGはどれも早いし暗い。

 

マジンガーは現在のクリエーターなら誰もが飛びつきそうな素材である。庵野秀明でもいいし、今川泰宏もいい。ジャイアントロボくらいしか評価していないが、ラストに真っ黒なゲッターロボが出てくれればなぁ。

 

MARVEL COMICS のようなスターシステムもいいし、圧倒的な画力を全面に出すのか。あの時に描けなかったシリアスなマジンガーを再構築するのか。

 

これだけの作品のリメークである。これを受ける人は相当の覚悟は入るが、これだけの楽しみを味わえる事は人生でも滅多にないはずだ。その魔人力には抗えまい。