習氏「台湾への武力行使の放棄、決して約束しない」党大会会場は拍手

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習近平は中国大陸に生まれた新しい帝王であろう。年齢(69)からいって終身となる事はほぼ間違いない。5年後も神経疾患を患わないとは限らないが、周囲の人は織り込み済みで準備していると思われる。幸いにブレジネフという前例もあるし、プーチンは良いサンプルとなるであろう。

 

しかし、従来の2期を更に延長した事実は、可なりの強権を敷くのみならず政敵の排除にも成功した証拠である。そのような中央集権 Of 中央集権である共産主義が、全体主義と変わらなくなる事はソビエト連邦が証明したと思うし、ナチスも正式名称は国民社会主義ドイツ労働者党である。

 

全てのオプションを放棄しないという言い方は最近の政治家の流行りなのか、それともマスコミの流行なのか、好き勝手にやるよという宣言であって、何かを言っているようで何も言っていないに等しい。

 

祖国の完全統一は当然だが、歴史的には1949年の台湾遷都以降の話題である。ではこの統一をなぜ至上命題として掲げるのか、当然だが、領土ではなく、アメリカとの対立だからである。

 

中国はアメリカの包囲網が最大の懸念である。そして日本が既にアメリカ側にいる事から、太平洋におけるプレゼンスを得るには東シナ側の確保は外せない。南沙諸島で後退する事は海上兵力を全て放棄するに等しい。日本の懐柔などその後の話である。

 

もし南沙諸島周辺の制海権を完全に把握すれば、台湾はどうせ立ち枯れㇽ。これが中国の最も完全なシナリオだろう。ASEANを含む東南アジアが経済的に中国の脅威となる可能性は小さい。そしてアメリカも日本もこの周辺を中国以上の経済圏にする気はない。

 

一帯一路が最大の対立国となるであろうインドを包囲する戦略である事、その周辺に軍事港、軍事空港を配置するラインを確保する。これはアメリカが世界展開しているのと全く同じ戦術である。地域に影響力を持つ事で世界展開を目指す。世界の富を中国に持って帰る為に。

 

アメリカがヨーロッパと中東に展開しているので、中国は経済途上国を中心に同様の展開を目論む。特にアフリカに注力している点に注意する。

 

新興国に経済的投資をするリスクは小さい、しかし成功した時のリターンは大きい。その地域には22世紀の中心地となる可能性さえある。アメリカ中心から別の地域へ世界の中心が変わってもおかしくはない。それが仮に中国でないとしても、そこにいち早くコミットメントしておく期待値は大きい。

 

中国の経済発展は他の国々の全く同じ理由で限界を迎えつつある。エネルギー問題、資源の枯渇、投機的経済の過剰とバブル崩壊

 

一方でIT開発はアメリカと張り合える唯一の勢力となりつつある。豊富な資金を研究につぎ込んでおり、その成果は10年後には顕在化しよう。米中の対立は結局は人材の争いであると考えて間違いない。

 

アメリカの絶対的優位さはドルが基軸通貨である点だ。それを覆す手段はデジタル通貨となるだろう。ただしデジタル通貨が世界基準となった時に、どこか一国だけのアドバンテージとなる可能性は小さいと考える。

 

それでもアメリカ経済が転換を求められるのは確かな利益である。相対的に米中の格差は縮まると考えるのが妥当だ。

 

その頃にはどちらの陣営につくかという人口の問題は国を超えているだろうから、恐らく、中国の12億人はそんなに強い利点ではなくなる。逆に同じような考え方しかしないのなら数の多さは欠点になる。多民族国家と連邦制の人材を巡る対立が始まる。

 

対立の決定的な帰趨は、最終的には政治体制に帰結するだろう。共産主義自由主義の対立。どちらが優れているかの答え合わせでは決してないのが肝要である。

 

その帰結は今回はどちらが有利であったかの証明にしかならない。現在の人材がより使えるのはどちらか、人間の最大能力を発揮させられたのはどちらか、それらを有機的に結合して集合力に生かせたのはどちらかという結論でしかない。

 

つまり勝利した側が優れているから人類の幸福に貢献するという話ではないのである。習近平康熙帝になるか紂王になるかは不明瞭だ。大統領が黒人にとってのリンカーンとなるか、ネイティブアメリカンにとってのリンカーンになるかも不明だ。

 

民衆の安寧は政治の最大目的と思われるが、ベンサムの最大多数の最大幸福を目指すのか、菅直人の語る最小不幸を理想とするのか、しかし多くは身内の最大幸福のために働く世界である。

 

その帰結としてアメリカであれ、中国であれ、対抗する勢力がなくなっては、恐らく健全な発展は期待できない。最低でもふたつの対抗する勢力を必要とする。20世紀のアメリカが健全に発達したのは(もちろん国内には様々な問題があったが)、ソビエト連邦があったからでもある。

 

冷戦の終了とともにアメリカは中産階級を失い、格差が拡大した。経済的ダメージで先にギブアップしたのはゴルバチョフソビエトであったが、レーガンアメリカだって無傷であったわけではない。

 

いずれにしろ、ひとりの強権はあらゆる面で危険性が高い。プーチンがもっか自分の命と引き換えに証明中である。心の問題から、判断力の低下、臣民の無気力や人材の追放など、安全装置が弱体化する。進言する者が去る。その去った者が組織を支えている要だったかも知れないのに。

 

一方で後世からも名君と評価される可能性はある。現在中国では既に習近平は特別中の特別な間違いなく名君なのである。だから三期目を託したのだ。彼の三期目が始まる。多くの点で彼の方法論には経験がある。未知ではない点で我々が有利だ。

 

今は力を貯め込んでいる時期で、経済好況を背景に色んな研究が世界のトップクラスに匹敵しつつある。分かっていても対応できない場合もあるが分かっている方が対応はしやすい。

 

その計算通りの世界が来るとは限らない。どれだけの人材を集めようが、AIなら凌駕する。人間の不幸も幸福もAI次第という世界が来ても不思議はない。そうなった時に、今さら人間による人間の人間のための政治体制に重きがあるとは思えない。

 

政治的構造から中国とアメリカ、他、世界中で進みつつあるAIこそが未来を帰趨する決定打となるとも思われる。

 

僕たちの未来は大丈夫だろうか?