モーニング2011年27号 天才 柳沢教授の生活

6月2日発売のモーニング、天才 柳沢教授の生活(山下和美

 

この漫画がいつ書かれたものであるかは知らない。

「教授の弟、次郎。幼いころ柳沢家に引き取られ、いまでも父が建てた家を守っている。」

 

養子となった弟が合ったことのない異母兄弟の兄に会いにゆくだけの話し。そこで交わされる会話が

「わかりませんね。」

「そうですよね。」

と笑いあうだけなのだ。

 

だが、この漫画は最近の中ではもっとも意味があるように思われる。作者がどう考えて書いたかは関係ない。分からないものを笑いあうというメッセージが、まるで今の世相への作者なりの答えであるかのようで、そこに感嘆している。

 

まるで、今の時代をとらえ、そこに自分の思いを乗せ、それを直接的ではなく、一つの物語の形にして作品として仕上げる。この作品の背景に、津波をテレビで見て、その後のマスコミ報道を見続けて、原発事故、放射線汚染の混乱を見つめている間に作者の心にテーマが浮かんだ。

 

わからないものはある、それをどうすればいいのか、互いに非難するのが正しいあり方なのか。

 

そういう作家の心のストーリーを勝手に思い浮かべてしまう。例えば古典から今に通ずる言葉を受け取っても構わないようにこの作品から何をどう受け取ろうと、これは作者には全然関係のない話し。

 

それでも、誰もが分からない事があるという事を目の前で見ておきながら、隠れている、誤魔化している、嘘をついていると連呼するマスコミや政治家、世論、それに対するこれは一つの想いなのだと、思った。

 

そう受け取ったのは僕。今の時期にこれを送り出したのはモーニングのスタッフがいる。たった10分の中に。