整体の技

マッサージ歴も5年なら、少しは上手に評論家面もできようと言うものだ。

 

マッサージを受けて5分もすれば施術士の力量なんてだいたい分かる。最初は体全体をなぜる所から始まる。この時、表面から筋肉の強張りを観察する。

 

併せてどこに実際のコリがあるかを探す、次に軽く押し込む。これでコリの深さを探索する。ここまでは軍隊で言えば、偵察活動と言える。

 

次に取る行動は、敵拠点への攻撃になる。攻撃には主に二つがある。遠距離と近接、広範囲と点。ピンポイント爆撃と絨毯爆撃。整体で言えば、ツボ押しとほぐしになる。

 

ツボ押しは、ある点、ツボの上をどんぴしゃで押す施術で、これを好む人はツボ派になる。勿論、どんな人にとってもこれは気持ちいいのである。

 

ツボ押しは、ツボと呼ばれる部分に刺激を与える事で神経を刺激し筋肉への信号を無くし緊張を取り除く戦略である。より深部への攻略には、指が使えないので、肘や器具、鍼を使う事になる。

 

浪越徳治郎も恐らくこの系統である。ただし、これくらい道を究めた人はこちらの見立ても通じない自在さがある筈で、なんとも言えない。

 

一方のほぐしは、凝り固まった筋肉全体を全体的にもみほぐす。これはコリが非常に硬い場合に有効な方法であって、筋肉全体を揺らしたり動かす事で全体の密状態を剥がしてゆく事に通じる。

 

癌の治療で病変の周辺の血管を塞いで癌細胞を兵糧攻めするのとは逆で、血行を良くする方向に向かう。コリの周辺をほぐす事で血流を良くし血液の循環によってコリを改善する戦略である。

 

この応用にストレッチ(タイ式)がある。ストレッチはコリの部分を延ばすのが主体で伸縮により血液を送り込む事、筋肉の緊張(縮まる方向にしか収縮しない)を解消する事、そして、ストレッチする時に支点とする位置に指を入れ込む事でツボ押しも兼ねている、そういう高等複合戦術もある。

 

マッサージでは、全体をほぐした後のツボ押しのコンビネーションがオメガでありシグマの王道である。

 

押しは基本的には上方から深部に向かって点を指で押し込む、ほぐしは、コリを左右上下に揺らす行為で筋肉を伸ばしたり、潰したりする。その中に以下の6つの外しがある。

 

  1. ツボ外し(つぼはずし)
    押しをしているにも係らず、つぼに当たっていない場合を言う。これでは足りないのでひとこと位置の変更をお願いする。
  2. 方向違い(ほうこうちがい)
    押し、ほぐしともに力のかける方向が違う場合を言う。方向の適切さが的確だとツボに良く当たるのだが、違う場合は当たりが弱くなる。
  3. 力不足(ちからぶそく)
    押す力強さが足りないくて、届かない場合を言う。どのような技量でも力足らずだと物足りなさを感じる。ただし一般的には器具を使うなどで解消できる。ただし力を掛け過ぎるのは医療的に危険な場合があるので注意を要する。
  4. 刻足らず(ときたらず)
    時間が短いため十分な効果が得られない、充足感が足りない場合を言う。これは追加金で解決する。
  5. 飛び抜け(とびぬけ)
    押し、ほぐしをする場所が飛び飛びになって、その中間ももやって欲しい場合を言う。流れの中で、筋肉全体や周辺全体をやって欲しい時を言う。
  6. 技なし(わざなし)
    施術者はそれぞれ自分なりの必殺技を持っている。しかしそれを味わえない場合はとても残念に思う。

 

千歳空港ラフィネには凄い人がいた。