総裁派閥の没落、新麻生派「志公会」が発足、加計や女性宮家めぐって官邸と火種も

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7月2日の大敗戦を最も強く受け止めたのは民主党蓮舫代表であった。たった5議席、いくら劣勢とはいえ、この数字には深刻な意味があった。共産党と比べても半分。自民党の1/4。ランチェスター2乗則に従うなら全滅といってもよい。解党。その2文字が彼女の頭をよぎった。

 

かつて政権まで取った党がたったの数年で消滅する。まるで楠木正成のようだ。彼女にはなぜかしらバンディットという言葉が浮かぶ。

 

同時刻、同じく悩むものがいた。安倍晋三。この日が試金石になるという感覚を持ちながら、彼の視線の先には自民党だけがあった。これが内紛の始まりであろう。これが彼の脳髄を占めている考えだ。だが、彼は知っていた。自分以外の駒などこの党に存在しないことを。

 

「いずれにしても、小駒ばかりが生き残ったものだ。」彼は呟いた。さて、この敗戦は反乱軍(と彼は内心で呼称している)を炙り出す。そんな彼には最後の秘密兵器があった。これがある限り、彼の立場は安泰である。アルテミスの首飾り、安倍は彼女のことをそう呼んでいた。

 

同時刻、ほくそ笑んでいるものがいた。恐らく、この日、この人ほど笑みをたたえたものはこの世界には存在しなかったであろう。関ケ原のようにたった一日で雌雄は決した。ゆっくりとシャンパンを口に含み、自ら手繰り寄せた勝利を舌の先で転がす。

 

この勝利は、等しく彼らの敗北である。明日がどちらに向かうかは私の手中にある。小池百合子は、都民ファーストの代表を退くことを決めた。これは規定戦略であった。ではその次は?

 

彼女が目指すものに気づいた人はごく僅かしかいなかったであろう。橋下徹の失敗は大阪で挙兵したからである。ただこの一点が彼女の慧眼であった。あれを東京ですれば、必ず勝てる。明治維新の決着が江戸であったように、この政変の決着は東京で決まる。

 

彼女は電話を取った。呼び出し音がする。出ない、出ない、出ない、コール音を聞きながら、彼女は夜の街明かりを見ていた。カチと音がする。

 

「あら、遅かったじゃないの。」

 

「ああ。」

 

「でわ、わたしから質問です。私を満足させるには何が必要でしょう?」

 

「なんの話だ。」

 

「いい、私の復党を認めるの、あなたの方から来て私の前で跪くの。自民党に復党してくださいって。」

 

「わかった。」

 

「あと、あなたの子飼いを私のものにしたい。それだけでいいわ、あなたが座ってらっしゃるその席はもうしばらくあなたのものにしておいて良いわよ。」

 

「それなら異存はない。」

 

「どちらが勝っても私たちに敗北はない。それだけの話だったでしょう?」

 

がちゃりと切れた。

 

多くの都民や国民が速報を見ていた。ある人はこの結果を喜び、ある人は落胆している。その多くの中にひとりの人がいた。その人が今後の行く末に大きく関わるであろうことは当人どころか、この国の未来さえも知らなかった。