アメリカ大統領選挙 ヘイリー氏が“初勝利”報道 首都ワシントンでトランプ氏をくだす

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アメリカの大統領が老人同士の戦いである事に誰もが不思議を感じている。どうしてアメリカでこれ程までの人材の枯渇が起きたのか。なぜ後継者は育たないのか。

 

ITの世界では今も世界を牽引する人材を輩出し続けていると言うのに。アメリカの政治は没落しつつあるのか、新しい人を呼び込む魅力を失ったのか。経済中心のアメリカは自分たちの憲法さえ無価値と決断したのか。これはひとつの時代の終わりのようにも感じられる。

 

バイデンとトランプのどちらが大統領となっても大統領就任中に亡くなる可能性が高いのではないか、寿命を全うしても何ら不思議はない。そうなれば副大統領が次の大統領となる。二人のうちバイデンの方がまだ良識があると思われている。其れと比べればトランプの不確定要素は大きい。アメリカの衰退の始まりかも知れないし世界の権勢が大きく変わるタイミングとなるかも知れない。

 

トランプによるモンロードクトリンによってアメリカは世界の利権を失うかも知れない。200年前と相当に時代は変わっている。トランプは自国の安全保障をサービスとしてサブスクリプション化したいと考えているように見える。これは経済構造の変化への新しい対応とも思われる。

 

The Warでアメリカは戦った。工業化を推し進める北部と農業を推し進める南部での労働力の奪い合いである。もちろん、人々は黒人奴隷の扱いに対する人道的な戦いであると思っていた筈だ。しかし、リンカーンからあと50年も待てばモータリゼーションの発達によりトラクターが出現し黒人奴隷はどちらにしろ解放された。

 

だが北部の人は50年も待てないと言った。工業化に向かう人々は無意識ではあってもそれでは遅いと思った。その結果としてアメリカの重工業化がひとつの成果を出すのが1945年である。

 

アメリカはドイツと戦い、日本と戦い、イギリス、ロシアにレンドリースした。一週間に一隻の空母を建造し、次々と新型の戦闘機を戦場に送り出した。戦車でこそドイツに性能では負けたが数で押し切った。最終的にはドイツの戦車をすべて時代遅れにした。それでアメリカの戦死者の数は南北戦争より遥かに少ない。

 

日本は工業で敗北した。だから戦後は工業に邁進する事で経済発展を達成する。少なくとも自動車のエンジンでは今も世界で最高の製品を送り出し続けている。それはあたかも敗戦の復讐かのように。

 

アメリカの工業化は、戦後の冷戦にも勝利したが、その終盤の頃に、工業製品で日本やドイツに敗北する。そのため金融など他の産業に移行しようとした。ここで謂わば工業中心の経済体制はひとつのピークを迎えた訳である。つまり、衰退期に入った。

 

工業化は日本やドイツなどの次に中國、韓国と中心国を変えながら世界を巡っている。工業が世界から消える事はないが、経済の中心となる事はもうないだろう。コストに見合うベネフィットが得られない経済圏(国)は産業構造の転換を強いられる。

 

そこで日本が取った改革が、労働者からの搾取による富裕層の生成であった。多くの人を非正規雇用にする事で、社会保障、健康保険、老後保険などを削減し、来るべき少子化の中で搾取する事に全振りする、それが小泉改革の正体であった。この改革を今も日本人は支持している。

 

その結果として、日本の産業構造は既に海外と渡り合う能力を失っている。国内で搾取と税金だけで生きながらえている企業である。それがこの国のメイン産業である。この構造にどっぷりつかりこの国の産業は緩やかな衰退期に入った。幾つかの自主独立で世界を相手に戦っている企業以外に既に期待できる戦闘力は失われた。

 

1977 Apple II, 1981 MS-DOS, 1984 mac os, 1985 Windows などから始まったPersonal Computerが世界を変える。Computerが世界中に広がった、Internet と組み合わされる事で世界に広がった。およそコンピュータだけでは駄目だった。Internet だけでも駄目だったろう。1994 Netscape  Navigatorの出現がこの動きを象徴している。

 

ITの始まりが新しい産業を生みだす。今や全ての産業がこの基盤の上に成り立っている。工業の代表的製品である車でさえ、コンピュータを搭載した車ではなく、駆動装置を制御するコンピュータ(自動運転)なのである。

 

つまり The War IIが起きる。そうなる理由は産業構造が変わりつつあるからだ。工業からITへの産業基盤の変遷が原因となって新しい社会構造が必要とされている。この場合、バイデンが古い世界の代表で、トランプが新しい世界の代表である。バイデンはこれまでの方法でやろうとする、トランプは新しい方法でがらりと変えようとする。

 

バイデンを支持する人たちは富裕層たちで、トランプを支持する人たちは工業から押し出された労働者たちである。IT産業を支えている労働者の中心は富裕層の側だ。

 

産業構造が変わる時に溢れた労働者をどうしたいかは政治の問題である。しかし、今回の産業革命はAIを中心とするため、労働者の流動を必要としない。新しい産業の主要な労働力はコンピュータが担う。故に溢れた労働者たちが新しい職を得る可能性は小さい。この延長戦には現在の富裕層たちも産業から追い出される未来がある。

 

このような状況においてトランプの考え方の方がまだ人間の雇用が守られる、または、雇用に対する意識が鋭敏である。およそ市場の自由にしておけば、たった一人の富裕層とそれ以外の80億人の貧困層という構図以外ありえない。その一人さえよく発達したAIが必ず追い出すであろう。

 

産業の中心がコンピュータになる時、人間の社会はどのように雇用、または賃金、または社会保障を維持するのか、また人は金のみで生きるにあらずという古い預言者の言葉の通り、仕事に変わる人間の余暇を如何に過ごさせるか、太古のギリシャ人は、AIの変わりに奴隷を労働させる事で、様々な学問に邁進してきた。

 

しかし、今回は学問をするのもAIの方が遥かに上である。人間は退屈さを如何に消費するのだろうか、それは生物的な終焉にはならないだろうか。いつか戦争のある時代を懐かしみ、発展し過ぎた生物学的脳は情報処理装置として主役の座をコンピュータにあけ渡す。

 

その結果で種としての自殺の走るのか、それとも宇宙への進出に生物的興奮を賭けるのか。今回の経済構造の大転換は人類がこれまで経験した事のないものになるはずである。その過程で起きたプーチン・ロシアの愚かさも大きくはこの流れの中にある。ネタニヤフの愚かさも同様である。ある意味ではこれは軍事とも宗教とも決別する時なのかも知れない。

 

アメリカで起きているトランプ現象は必ず世界に波及する。だがそれは単純なネトウヨ化ではない。そのような基礎学力の足りない人たちでさえ不安を感じる程の大きな余震が起きている証左である。

 

トランプの勝利をロシアもイスラエルも待っている。恐らく中國も。彼の出方次第で世界は好き勝手に大きく動き始める。アメリカが世界から撤退するのだ。

 

ではバイデンの愚直なまでの誠実さが勝利した時に世界はどうなるのだろうか。こちらの方が余程に読み切れない気がしてくる。

 

そういう中で共和党のヘイリーが抗うように倒れるまで戦いを挑むのは、そのタフネスさがアメリカ人が好む未来を感じる。これはアメリカにとって明るいニュースだと思う。