キリン、成田悠輔氏起用の「氷結」広告を取り下げ 「高齢者は集団自決」の過去発言に強まる批判 「過度な表現あった」と説明

maidonanews.jp

 

成田氏は2021年、インターネット番組「ABEMA Prime」に出演した際、少子高齢化問題などをめぐり次のように発言した。

「唯一の解決策ははっきりしていると思っていて、結局、高齢者の集団自決、集団切腹みたいなことしかない。(私は)けっこう大真面目で、やっぱり人間って引き際が重要だと思う」「別に物理的な切腹だけでなくてもよくて、社会的な切腹でもよくて、過去の功績を使って居座り続ける人がいろいろなレイヤー(階層)で多すぎるのがこの国の明らかな問題で、まったくろれつが回っていなかったり、まったく会話にならなかったりするような人たちが社会の重要なポジションをごくごく自然に占めていて」「消えるべき人に消えてほしいと言い続けられるような状況をもっとつくらないといけないんじゃないか」

 

もう遅い。以下のふたつの理由からキリンの商品は、信用できない。

 

成田悠輔への批判はずっとSNSでくすぶっていた。それをまさか知らなかったとは言わせない。その程度の情報収集能力でビジネスをしようなどあり得ない。撤退不可避である。

 

さて、日本の高齢化問題には決定的な解決策がなく、高負担に関しては高齢者が減少に転じるまで待つしかない。

 

少子高齢化に伴う社会保障の負担増は五十年前から分かっていた事でおよそ普通のやり方では予算不足に陥る事も分かっていた。この長大な準備期間を使っても制度設計は完璧とは言えず、その結果として、妙案もなく、天才が出現する事もなく、ここまで来た。

 

高齢化問題は、年金と介護と医療費の増大である。社会保障の三大要素が国家予算を直撃する。しかし、これも何十年か経過すれば減少に転ずるであろう。つまり介護労働がどの頃までどの程度の規模の産業になるかは見積り可能である。

 

この国は必要な時に必要な場所に人材を集中させ、事象が終わったらさっさと解散させると言う方法論が苦手である。太平洋戦争でさえ指揮官の選定に大学の成績が最優先された国である。のうりょく?何それ戦争で役に立つの?が当時の軍官僚の方法論であった。そうしなければならなかった理由?嫉妬って怖いんだぞ。

 

人口動態で産業規模が変わる介護については、巨大になりすぎると規模縮小が難しい。既得権益は日本では強力だから無駄に維持する事になる。すると、最初から入口を絞る、産業規模を規制し、縮小しなくて済むようにする。

 

これが日本が本気で得意とする方法論である。乃ち、維持可能なぎりぎりの人数と設備で問題を乗り切る。しかし、これは明らかに短期決戦型の思想であって、何十年も続く想定には対処できない事を意味する。だから土木事業では数十年前の干拓事業を減反政策に切り替えても止められないでいるのである。

 

もしコロナパンデミックで500万人くらいの高齢者が病死すれば問題は好転しただろうか。保険負担は減るだろう。しかし、それだけの産業も失われる、市場も縮小する、縮小が急激に起きれば不況に陥る。この失われた需要は戻らない。

 

需要が縮小した不況はどうやって復活させればいいのか、緩やかな人口減を日本不況の真因とする主張さえある。どうしても経済を立て直せていない国家を急激な市場縮小が襲う。果たして乗り切れるであろうか。

 

もちろん負荷がなくなれば、一時的には不況に陥っても復活する可能性はある。それは予算の配置換えが可能だからであり、別の場所に資本を注入できた場合の話だ。それが出来るくらいなら既得権益の打破に苦労はしない。かつ、この考えに従うならば介護事業は経済活力を上昇させないビジネスという事になるのか。どうもそうとは考えられない。

 

老人を減らせという主張は人口ピラミッドで人口の終端となる崖が若い方向に移動するのと同じである。よって、全体の形は相似のままである。絶対量の問題ならそれでも効果はあるだろう。しかし経済構造が相同でただ縮小するだけなら問題の解決となるとは思えない。

 

そうは言っても、短絡的で思慮の浅い人間は、老人の数を人為的に減らすのが解決策であると主張するのは無理からぬ事である。最も目立つものにしかフォーカスできないからだ。もちろんホロコーストすればいいとは言えないから自殺を推奨する訳であるが、その本心はホロコーストに決まっている。安楽死の合法化を訴える人もいるが、全て、短絡な解決法である。ナチスでさえジェノサイドには失敗したのだぞ。

 

まだ老齢の政治家が未だ権力にしがみついている醜い様を揶揄すれば良かったのであろう。その上で、老人たちの既得権益を若い世代、つまり俺に明け渡せと主張すれば問題はなかった。しかし発言の真意を見れば既得権益ではなくジェノサイドをしたい方が主に見える。そういう過激さで名前を浸透させたかったように見える。

 

問題の本質はいびつな人口構成でも高齢化の負担増でもない。経済から活力が失われている点だと思う。活力の有無が人口構成の筈がない。そうではない何処かに何かの足枷がある。それは何なのか。

 

人口は常に増減を繰り返している。増えたり減ったりする。それが生物の在り方というもので、日本も同様である。そこでどう日本経済と取り組めばいいのか、今も模範となる答えはない。果たして老人が巨悪の根源なのか、そうかも知れないし、そうではないかも知れない。なぜなら老人という主語では大きすぎるし、そうでないなら、主語は老人ではないからだ。

 

そういう中で老人虐殺を訴えて、SNSでも非難されている人をCMに採用する。前もって調査する能力がキリンからは欠落している。不買運動が展開されて初めて「過度な表現があると判断」する遅さ。しかも「過度な表現」ではない。人権無視のジェノサイド推奨である。

 

この企業には基本的人権に対する確固たる信念がなく、かつ、情報収集能力も低い。どうやって自社の製品の品質を確保しているのか、人権を無視する事、老人を殺してもいいという主張に賛同している以上、顧客の健康に留意するとは思えない。

 

小売向け商品の販売である。市場を構成する人に直接商品を届ける企業である(事業拡大しているので協和などそうでない部門や研究もある)。それでこの情報処理能力の低さ、人権を軽視する態度、この企業理念が収益以外の何を目指しているのか。工場の不祥事がないのか、懸念している。

 

もうひとつ看過できないのは、麒麟ミャンマーで軍事クーデーター(2021/02)が起きてから撤退を決断する(2022/02)までの遅さがある。しかもその時のコメントが「欧米(の投資家)などは人権問題に非常に敏感だ。残念ではあるがミャンマー事業をやめようと決めた」である。軍事政権もクーデターも否定も非難もしていない。独裁制について暗黙的には支持する態度である。民主主義に価値を置いていない証拠だ。

 

基本的人権も民主主義も事業とは関係ないという企業の価値観。収益のためならプーチンロシアとの契約も厭わないであろう。ロシアでの事業をどうしているかは見つからなかったが、基本的人権の軽視、民主主義の不支持より、虐殺者への追従も平気そうに見える。そういう企業がこの星の将来について、我々の社会の未来について何らかのビジョンを持っているとは思えない。

 

乃ち、そういう企業の商品をどう考えるべきか。市場の信頼を失って企業経営が成り立つんだろうか。ロシアやミャンマーで売ればいいのである。今はまだ不買運動で済んでいるが、この態度は市場からの拒絶を生み出しはしないか。そのような体質で危機感もないと感じられる。だから商品の安全性には疑問が残る。だから好きでも買えない。