「京」がTop 500のトップに、7年ぶりスパコン世界1位の座を奪還

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京         8.162ペタFLOPS
天河1A号    2.566ペタFLOPS
Jaguar      1.759ペタFLOPS
星雲       1.271ペタFLOPS
TSUBAME 2.0 1.192ペタFLOPS

 

この数値を見る限り、京は他と比べて世代が違うと考えるのが妥当と思える。天河までを例えば第三世代とすれば、京は第四世代のコンピュータである。とすれば京は第四世代として一番乗りをしたからトップに立ったわけで続々と次世代の第四世代のスパコンが出れば一番ではなくなるのは間違いない。

 

つまり、世界一だと喜んでもそんなに嬉しい筈がない、という事になる。F1カーであれば世界一になれば目標を達成したことになるがコンピュータには目的がある。

 

その目的は断じて世界一ではない。コンピュータの目的はアプリケーションを動かすであり、アプリケーションの側、つまり、実験屋からの要望や、提示された研究課題からの要件に対して、スピード良く応答する事である。

 

アプリケーションの目的は動く事ではない。その結果を人間に返す事である。人間が知りたい事を手に入れて初めて一つの目標を達成した事になる。

 

今回の世界一とは、コンピュータとしてのハードウェアの性能の事であろうから、次に来るべきはソフトウェアとしてのスピード競争力という事になる。そして、このハードウェア、ソフトウェアをコミコミとした総合力のスピード競争で結果を出さなければならない。

 

そこでは世界一である必要性はこれっぽちもない。研究者や利用者から要求された性能を達成し、それらの研究がぐんと前に進めば価値がある。期待した研究だけでなく、そこから派生した実験やシミュレーションが簡単に出来たり、使い勝手が良いのが望ましい。

 

縁の下の力持ちをやっていたエンジニアが、表で褒められるのは嬉しい事だが、それが目的ではない。どうも、始まりに立ったという危機感がなくて困る。

 

囲碁棋士でプロ初段になった人におめでとうと言っているのと同じで、やっとスタート地点に立っただけという話だ。そういう意味では、これは次世代スパコン初段の免状が貰えた、に過ぎない。何がめでたいものか。


おめでとうには違いないが、酒を飲んで宴会するような類いでもない。この国が技術が評価されるのを否定する訳ではないが、世界一が嬉しいと言っているようでは、どうも技術への見識が足りない感じがする。

 

Oracleも言っている、Hardware, Software, Complete.

 

世界一速いコンピュータがあってもソフトが使いづらかったり、効率が悪ければ、他にベストチョイスがあるかもしれない。

 

例え世界二位の速度でも、そちらの方が結果としては有益かもしれない。四分の一の性能しかなくても四台買えば間に合う場合もある。

 

これほどの性能を追求する世界で、汎用という考えはありえない。F1を見れば分かる事だ、市販品でなんとかなるような世界ではない(市販品でなんとかする世界になりつつもある)。

 

研究する課題、問題の性向、特徴に合わせたカスタマイズ、それらは特注すべき話であって、そこには得意、不得意も入り込む。当たり前の話しだと思う。なんにでも使えるという場合は、どれもこれもほぼ平均という事である。

 

この京というコンピュータは、これからの製品である。とかく、世界一位とか二位とか余計なエピソードを持った不幸というか、話題の多いスーパーコンピュータである。それら外野の話しは、この子には何も関係ない話である。

 

完成したのなら動け。この子はこれから、モクモクとモクモクモクモクと計算を続け、多くのエンジニアや研究者に小突かれながらもモクモク、モクモク計算する。

 

是非とも、これからも良いエンジニア、研究者の元でモクモク働け。こいつの一つの性能だけではなく、総合力で判断してあげよう。トータルの力でこいつの鍛え方というものを見せてあげよう。

 

それが技術力ってもんじゃないか。