“進化”も可能、人工DNAを合成

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DNAを構成する塩基A,G,C,T (RNAはA,G,C,U)を人工の合成高分子化合物(ポリマー)で置き換えてDNAと同様の働きを持たせる。これを新しくXNAと名付けた。

 

遺伝子は面白い仕組みである。ヒトの価値観を変えた発見でもある。

 

ヒトをヒトたらしめているのは、神ではなく、蛋白質である、という発見と、それを更に推し進めて個体としてのヒトは、遺伝子を次の世代に受け継ぐための入れ物に過ぎない、という考え方は20世紀の代表的なものの考え方だろう。

 

生物は40億年前に発生し、それから長く35億年は単細胞生物として活動してきた。約五億年前までは大きな変化をする事はなかった。その頃の生命も既にDNAを採用している。

 

発生当初においてはRNAが先でそれがDNAという構造まで変化したと思われるが、ではRNA型以前の形質伝達機構を持つ生物は既に消えてしまったようだ。現在のRNA/DNA以外の機構の生命体がかつて地球に居なかったとは言えない。

 

だが、何通りものやり方にトライした結果、一つの機構が採用された。これは面白い話で、複数の仕組みが並行して残っていてもおかしくなかったはずである。


だが、そうならなかった。

 

単細胞から多細胞へ変化するには、ひとまず、大絶滅が必要であった、というのが今の所の定説である。これを全球凍結、スノーボール・アースと呼ぶ。

「スノーボール・アース | ガブリエル・ウォーカー」

 

この大氷河の時代が終わる事で初めて多細胞の生命体が地球に出現するようになった。これがなければ、今でも単細胞の生命体の楽園であったろうかも知れない。

 

なぜ、多細胞生物には全球凍結が必要であったか。それは恐らく酸素濃度が関係している。酸素濃度はコラーゲンの生成と関係する、と説明されている。


しかし単細胞生物から多細胞生物へと遍歴する経過を上手に説明できる科学者はこの地球にはまだいない。

 

そして生命大爆発が起きる、カンブリア大爆発。

「ワンダフル・ライフ - バージェス頁岩と生物進化の物語 | スティーヴン・ジェイ・グールド」

 

ここでも面白い現象が起きる。この地上での初めての多細胞生命の出現において現在地上に生きる殆どの生命の基本構造が出来あがってしまったと言う事だ。

 

つまり、今いる生物の種の起源を求めれば、カンブリア期までさかのぼれる。少なくとも、門の分類はこの時代にすべて出たと言ってもよい(らしい)。しかもその後の5億年は、生命の多様化はあるとも言えるが変化が無かったとも言える。

 

マイナーチェンジは激しく繰り返したが、メジャーチェンジは行われていない。車の発展を思い浮かべれば分かり易い、今は知っている数々の起源は辿ればFord Model Tに行き着く。基本骨格はこの時代から何も変わっていない。

 

遺伝子というのは、小さな変化を多様に生み出す仕組みである。それは人の顔が一人一人が違うことを見ても分かる。不幸な遺伝疾患も起こすが。

 

と同時に遺伝子は大きな変化を阻む。人の顔はしょせんは人の顔の範疇を出る事はない。それどころか、魚類の基本設計と何も変わらない。犬や熊やトカゲの顔の子供が生まれる事はない。でも似ている顔はある。

 

遺伝子は大きな変化を拒否する。別の言い方をすれば、基本コンセプトは絶滅しようとも変えない。大きく違うと見えるのは、見た目だけの問題になる。


例えば、クジラと人の骨格を丁寧に比較すれば、ほとんど対応する。魚と比較してもほぼ一致する。エビやタコとの比較は難しいが、骨を抜き取れば一致点も多い。

 

この不思議な機構が人を惹きつけてやまない。