バイデン米大統領、中国の「一帯一路」に対抗 新経済圏構想を提案

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中国の潜在力は経済発展にリンクした世界戦略を明確に持っている事、それを強力に実行している事であって、それを推進する源泉がどこにあるかは不明だが、共産党政権を維持するために必要と見做しているのは間違いない。

 

そのような戦略を日本はついぞ持ちえなかった。それが戦争からの反省によるものではなく、敗戦によってそういう発想を捨て去ったからだ。しかし戦前に日本のそれでさえ、それは外交ではなく内政の延長に過ぎなかった。

 

もっと言えば、軍人が勲章をもらうために行動していた側面さえある。秀吉が思い描いた世界像さえも持っていない。日本には一度として世界戦略はなかったのである。結局、この国は今も心理的には鎖国状態にあって、外交的革新は極めて寡少だ。

 

中国の一帯一路はアフリカ大陸への経済経路の確立であって、地球に残された最後の未開拓市場であるアフリカへの強力な橋頭保である。もうひとつはインドを陸海の両面から挟み込んで封鎖する事である。インドの人口は潜在的な脅威と考えている。

 

このアフリカに東から向かう経路を制圧するために中国が取った行動が資本の投入と契約による正統性であって、欲するのは土地と資源である。併せて背後としての太平洋を確保する。そのために東から来る勢力を太平洋上に押し戻すために東シナ海を欲す。

 

もちろん、中国は乱暴国ではないから、最初から自分たちの領海を自分たちが開発していると主張する。相手には相手の言い分があるのは理解するが、それは言いがかりである。

 

アメリカがこれに対抗するには、アフリカを西から攻めるルートしか残っていない。北米大陸南米大陸ユーラシア大陸、アフリカ大陸西側を巡る巨大な海洋経済圏を構築する必要がある。TPPの大西洋版である。それはかつての奴隷貿易のルート、これを21世紀型に作り替える、なんとも皮肉でもある。

 

この争いの帰結は、アフリカのどこにどのような資源が埋まっているかに非常に左右される。しかし資源の争奪は結局はアフリカ大陸の人々にとっては良い結果はもたらすまい。

 

2020に起きたパンデミックは、両国の動きを封じ込めている。これはアフリカに対抗策を取る余裕があるという意味であるが、それに向けて動かないと奪われるだけ奪われて終わってしまう可能性さえある。

 

ではアフリカはどのような経済圏を構築すべきなのか。それは南米でも同様に考えられる。なぜ南米には麻薬が今も力が持っているのか。その理由はどこにあるのか。

 

「新しい世界 世界の賢人16人が語る未来 (講談社現代新書)」で読んだ範囲では南米がスペイン型政治システムの影響を受けている事が経済発展の足枷になっているのではないかという仮説は興味深かった。世界的にもイギリス型の統治システムから始まった地域の方が経済状況は良いらしい。

 

だが、それはどの国というよりもどのような構図を引き継いだ事が原因かという方が重要であろうから、過去の影響のせいばかりにする訳にもいかない。パンデミックがこれまでにない新しい経済システムを生み出す可能性がある。それは数百年に一度訪れる次の300年を決定するような時代ではないのかと想像してみる。

 

その台頭がアフリカで起きるのではないか。インターネットとAIによって社会は大きく変化する。それに古い国々は対応できない可能性がある。古い考え方から脱却できないのみならず、まるで拒絶するかのように廃れてゆく地域も生まれるだろう。

 

どのような人間の精神的活性が、新しい時代を切り開くか、それをブーストする最初の資本、資金は蓄積されているか。発展の再生産はどこまで続くか、それを続けるために必須となるのは、技術革新の更新であり、それを可能とするには、教育による基礎学力の充実、発明発見を促進する自由な発想を許容する社会風土、新しい物事を直ぐに実行に移せるだけの資本の余裕と法的障害、社会的障壁の低さが求められる。

 

一般に古い社会は古い慣習が貯まる故に、安定を維持する変わりに、変化への反応が遅延する。遅延の連続が、反応速度の遅さとして観察される。そのような慣習がない事が重要になる。その為には、もともと慣習に鈍感な民族であるか、破壊されている方が有利になる。

 

アフリカ諸国は西洋に既に破壊されたが、それ故に民族、部族というものと国家が一致せず、また資源の争奪も起き、つまり、政治的な不安定の全ての原因は西洋にある。そのような地域で、経済発展と軍事的優位を両立し、かつ政治的にアフリカ大陸に安定をもたらす強力な国家が成立するか。それを米中は許すか。

 

この地域の発展は南米にも飛び火するはずで、いずれにしろ、地球は狭くなっている。アフリカから最も遠い国家である日本がこれらの動きに、どう参加するかは重要な課題だ。パンデミックでアジアはどう変わるのか。太平洋はどう変わるか、大西洋はどう変わるか。果たしてどの地域が中心にシフトするのか。