北野武監督、宝塚歌劇団パワハラ問題について聞かれ「日本は新しいエンタメ世界への入れ替え時」

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芸能の世界であろうが、スポーツの世界であろうが、恐らくビジネスであっても、競争の発生する部分、人間の才覚が試される分野では、年齢は関係ない。学歴も血縁も人格や性格、DNAさえも関係ない。バックグランドは何の足しにもならない。結果が全ての世界は冷酷である。誰の目にもそれは明らかになるから。

 

もちろん総合力である。使えるものは縁故であれ金であれ投入する。究極ではフェイクも運も実力に含まれる世界、戦争に等しい。

 

人間は集団を作る動物種であるから、数が力な部分がある。そういう中で、武道であれ、将棋であれ、囲碁であれ、結果で個人が評価される世界がある。結果で階層が生まれ、力関係がはっきりする世界がある。一般にボス猿には逆らえない。そういう世界では年齢は関係ない。戦ってみれば勝敗ははっきりする。老兵は追い出される。

 

故に、観客は戦いを世代闘争を戦法の違いを緊張感をもって面白がる事ができる。演劇においても、誰が人気であるかは圧倒する。同じに見えるのに、そんなに違いがなく見えるのに、人気は冷酷である。

 

そういう世界で勝利する者は、必ず先行者を追い抜く。当然だが、追い抜く側と追い抜かれる側が生まれる。両者の立場が逆転するのだ。横柄になるのは自然として止む負えない。特に、子供は尚更である。子役が成人しても屑の見本になるのは悲惨な不幸として言えない。それもまたエンターテイメント。

 

人間の世界は平家物語だから、自分の才覚だけで人生を切り開ける訳ではない。幾ら才能に溢れていてもいつかは尽きる。追う側から追われる側になる。後から始めるほど有利。追い抜かれるのが自然だ。時間は残酷だ。永遠はない。

 

だから世阿弥は一生できる能という考えを風姿花伝に書いた。ジャイアント馬場は自らの姿を使ってプロセス人生と魅せた。

 

結果で優劣が決まる世界において、よって、暴君や独裁者が誕生するのは当然だ。そこには組織が発生するのでそれを円滑にする事が礼儀の理由だろう。それがなければうらみねたみそねみが重なって寝首を掻かれる。それも実力とは言え、それでは惜しい。

 

競技の場に遠慮はいらない。しかし舞台を降りた後は別だ。先輩を立てる。これが組織を円滑に意地する秘訣であった。切り替え、気持ちのOnOffは必要なコストだ。

 

勝利者には賞賛がある。本当にケアが必要なのは敗者である。追い抜かれる側をケアする事が必要である。上に立つものが偉いという構造はどうしても拭えない。そこに自由を許せば組織は崩壊する。競技とは何も関係ないものが持ち込まれ、足を引っ張り合う新しい闘争が始まる。

 

先に生まれたから優遇するのでもない。追い抜かれるから優遇する。そうしなければ嫉妬と羨望に飲み込まれてしまう。もし後輩が無礼を働くのを許せば、組織は立たない。それを自然にまかせられないというのが人間が見出した真理であったとも言える。感情をそのままにしておくと組織は弱体化する。昔の人が人徳を基礎としたのにもその慧眼があったはずである。逆恨みで貴重な人材を失うのは得策ではない。それを律するのに先に生まれたを基礎とするだけで出来るなら払うべきコストだ。

 

このメカニズムには目的がある。実力最優先の世界では、互いに礼を以って接する。互いに先生と呼び合う。だから20歳の俊英に50を超えた棋士が打ち砕かれても納得するしかない。自分は衰えたなぁと嘆けれる者は幸いである。かつてはトップにいた証だから。

 

追い抜かれるための壁となるという役割に徹すると自覚した人がいる。その気持ちになるまでどれほど悔しい思いをしたか。そういう人達の総合力でひとつの業界に成り立っているのである。世界に貢献するのはトップだけではない。下から支えると覚悟した人たちがいる。その人達も一度は勝利を目指したはずである。互いに礼をもつ理由はここにある。

 

力で序列が作られる世界では暴力の理由しか生まれない。力で奪い取れ、力で守り抜けという世界像では、本当の集団には勝利できない。自然にまかせた野生状態では、可なり早い段階で負けたはずである。集団の力を侮らない。力の発揮も崩壊も。秩序を作るには互いの礼しかない、そう孔子は見た。

 

先に生まれた事を基準とし、そこに敬意を持ち込む、この関係を軸としておくから追い抜く事が可能となる。

 

この原理原則を知らないで先輩が後輩の暴君となっても意味がない。その暴君の由来は追い抜かれる事になる。先に生まれたから偉いなどあり得ないのである。年下に抜かれる可能性のある世界に飛び込んだ、その覚悟が偉いのである。

 

暴君が伝統の名のもと敬意を失い奴隷システムと化した。システムは崩落するだろう。組織をなぜ維持しなければならないか。放置すれば勝手に分解するからだ。それは遂に金さえ生まなくなる。