所得税の最高税率上げを検討

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世の中の経済学者も評論家も政治家も話はしてくれるが、真逆の意見が真っ向から対決していて、しかもどっちも一理ある、反論にも一理ある。素人にも分かりやすく説明できないという事は、言ってる本人も分かっていない筈なのである。

 

それでも、自分で考えてみれば基礎くらいは分かるかも知れない。

 

【税金について】

税金は少ない方がいいに決まっている。サウジアラビアなどは無税だという。石油という資源があるから。

 

しかし、税金が減少するという事は対価として何かも減るはずである。それは行政サービスに決まっているから、この行政サービスと税収の均衡点を探る必要がある。それが大きく乖離する場合は、水道で言う所の水漏れがどこかにある。

 

税とサービスは需要と供給のモデルとも類似している。増税する場合は、その対価を示す必要がある。減税する場合も、カットするサービスの説明が必須である。


いずれにせよ、税金は社会保障とリンクしているから、社会制度の設計と切り離しては議論できない。消費税は、とかく話題になっているが、民主党はこれを実施する前に総選挙で信を問うと言っている。重要なのは選挙ではなく制度の説明、その強靭性、将来性、維持コストの方にある筈だ。

 

その場限りの誤魔化すような延命策で投票など出来るはずがない。増税社会保障の制度改造と一体の改革だから、実施するのは少し先になるはずだ。制度改革の説明なく選挙は不可能だ。

 

今回の選挙は、消費税を上げるかどうかの選挙ではなく、話し合いを始めるかどうかの選挙である、とも聞く。話し合いが選挙の争点は少し理解できない。それはもう税金の話でもない。

 

財政再建

で、消費税は財政再建が目途とも聞く。ギリシャ財政危機をヘッジファンドがターゲットとしたためユーロ安に傾き過ぎているらしい。これは、ヘッジファンドによって資金の集中が起きたためと思える。我々は金融というリバイアサンを制御はできていない。

 

ギリシャという飛行機が200kmというおだやかな速度で着陸しようとしている所に、ヘッジファンドが圧力をかけて500kmの速度になっている、という感じだろうか。

 

ヘッジファンドは全人類の合理的なお金の動き、集合知だから批判はできない。自然に任せれば時に人は濁流となって堤防を破壊する。


社会基盤を混乱する要因となった場合、政府が懸念するのは当然である。ギリシャ財政危機を見て、早かれ遅かれ日本もターゲットにされるという危機感を持てば、消費税論議により世界へメッセージを発信する事、そして早急な危険回避の模索も真っ当と思える。

 

しかし、スウェーデンの消費税は25%だから日本も、と言う話はナンセンスだろう。余りに前提条件が違い過ぎる。これは根拠ではなく詐欺の説得術だろう。

 

税制度も社会保障も異なる社会の1点だけを比較しても無意味である。ホンダは3点取ったがメッシは0点。だからメッシの方がサッカーが下手という議論と同じだ。

 

消費税は高くするが、それは国債ヘッジファンドが群がるのを防ぐためです、こんな理由で、選挙民の同意を得られるかは分からない。

 

一方で所得税を上げられない理由に有能な人が国外に出てゆくからと言う議論がある。そんな奴は資産没収してスワンボードで太平洋に送り出せ、が結論だと思うが、お金だけが目的なら出ていってもらった方がいいとも思うし(国外追放)、日本に居たいと思わせるのにお金以外の何があるだろうかも考えないといけない。

 

法人税率も同様の議論でタックスヘブンに移転されるくらいなら、という話がある。企業が日本から出てゆけば雇用が消失するという話も聞く。では日本企業が国外に出ていった所でどういう人を雇用するのか、社員ごと移転する気なら別だが。

 

結局、企業がその場所から動かないのは、そこにおける雇用人材が望ましいから、以外に理由はないと思えるのだが。

 

【経済成長】

財政再建にお金を使うと経済が冷え込む。それは市場にお金が出ないから。そのお金で買うのは借金と書かれた紙だからそれは燃やす以外の何の経済的活動も起こさない。だが借金が消えれば晴れ晴れとした気分にはなれるはずである。この効果はあまり顧みられない。

 

経済成長による税収で再建すべきだ、という話もよく聞く。この場合は、卵が先か鶏が先かの議論はなくて、経済成長が先という結論になる。

 

昔から不思議ではあるが、経済成長率は2%とかよく言う。しかし、永年に成長を続けれられる根拠はない。すると何年間なら経済成長が可能かというセットでなければこの議論は続けられない筈である。

 

この成長が1万年後まで続いた時の物価はどうなっているか?その場合は、今の借金は物価高によって解消するという方針になる。しかし人口が減り、その比率で労働人口が減少する将来予測で経済成長する為には、一人当たりの生産性が高くなるという主張に等しい。

 

しかし、生産性の向上はそんな簡単な話ではない。上がれといって上がるのはトトロの苗木くらいなものである。


経済成長する為には生産性を前年比でどの程度にすべきかという話も聞かない。一万年後の成長率がどうなっているかの見積もり、およびそれを可能とする技術的特異点は何回くらい乗り越える必要があるのか。

 

生産性を高くする方法は、安い労働をやめて高い労働に移るという意味だろうか。なるほど、それが科学立国って標語である。肉体労働はいらない社会の始まりであろうか。

 

それを実現するのに一人二人程度のノーベル賞ではお話にならない筈である。というう事はこの計画を実現するには最低でもどれくらいのノーベル賞級の研究成果を出さないといけないかもマイルストーンとして建てておくべきだろう。

 

と言っても、限られた人口で優秀な人を育てるのにも限界がある。その通りに人が育つかも未定。人口を増やすには、移民しかなく、多民族国家への変遷を視野に入れなければ難しいとも思える。

 

何故、成長に依存しない社会制度は考えられないのか?生きていて、確かに昔より生活するのにお金がかかりだしている気はする。その原因は何だろうかと思うが、コンビニを使っているからだよとは思う。でもそれでは答えにならない。

 

生活するのに必要なお金が多くなっているという事は、決して褒められたものとは思えない。貧乏がいいと言う話でもなく、燃費が悪くなっただけと危惧する。

 

この先を普通に見れば、経済成長はしない、下がるはずだ、という想定のもと、それにどう対応するかを考える必要がある。一億人の社会から7000万人の社会への脱皮は考慮しなければならない。

 

しかも日本の成長戦略は外需頼りで砂上の楼閣同然である。植民地制度が新しい植民地となる場所がこの世界からなくなって終焉したように、外需もそのうち成長を止める。その時、どこに外需を求めるのか?先の大戦同然に僅かな植民地を求めて外征するのか。


成長する地域がローテーションでずっと続くというモデルはどこにあるのだろうか?


【雇用と経済】
結局、財政再建にしろ経済成長にしろ、選挙民の多くにとっては、雇用か年金かの話に行き着く。このふたつに変換して考える事になる。もっと言えば、家か飯だ。

 

この二つを守るために国家をあげて四苦八苦しているんだろう?

 

解雇規制を緩和して正規雇用を解雇しやすくするという話がある。そうすれば雇用流動性が高くなる事で、仕事が得やすくなる、という論調だ。企業はクビにしやすくなるので雇用調整が楽になる。

 

つまり、クビにしやすいから、雇用に躊躇がなくなると言う話になる。躊躇がなくなれば、気安く雇用し気安く解雇する。労働者にとってもチャンスは増えるはずだ。企業からすれば、色々な人材と出会える機会が増える魅力もある。

 

だが、多分、これは労働者が苦労する不利な契約だ。何故なら経営側は解雇されないからだ。契約そのものが一方向である。どのような雇用システムであっても好景気なら問題はない。


不況になった時、基本的にはどうやっても問題になる。解雇するほど手早く簡単な乗り切り方はない。賃金については更に破滅的となるのではないか?

 

雇用確保の議題に賃金の話は出てこない。つまり、一か月7万で働く現状が多々あるこの国で、どの辺りが雇用と賃金の均衡点か誰も把握していない。

 

【結論】

政策は生きた社会に対して実施するものだから、上手くいく事もあれば、失敗する場合もある。だから失敗には寛大である方がいい。本当に許されざる失敗はそう多くはない。それよりも故意の方が余程に許されない事が多い。

 

いずれにしろ、ここまでつらつらと書いても経済の分からない。とりあえず枝野幸男を信頼しているのであと4年間はお任せする。

 

民主主義の殿様は我々である。

「そうせい、そうせい」